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水の二刀流


 水の魔力と二刀の剣を使うメケラーモを見て、セアンはウイークのことを思い出していた。セアンの視線に気付いたメケラーモは、にやりと笑ってこう聞いた。


「確か、ウイークって言う二刀流の海賊が二年前にいたな。君たちと仲が良かったって言っていたけど」


「あいつのことをバカにしたらあんたを半殺しにするわよ」


 と、セアンは殺意がこもった目でメケラーモにこう言った。その目を見て、メケラーモの背筋に悪寒が走った。


「恐ろしい殺意だ。睨みだけで殺されてしまうよ」


「殺さないわよ。で、ウイークがどうしたの?」


「俺と同じ二刀流って聞いていたからね。強かったの?」


「強いわよ」


「殺されたけど?」


 この言葉を聞いたセアンは、いきなり姿を消した。セアンを見失ったメケラーモはすぐに身構えたのだが、その前にセアンの飛び蹴りがメケラーモの鼻に命中していた。


「うがっ!」


 転倒しながらメケラーモは態勢を整えた。だが、その時にセアンはハンドガンで発砲を始めた。


「ウグッ!」


 セアンが放つ弾丸は、メケラーモの足に命中した。


 恐ろしい奴を怒らせてしまったかもな。


 そう思いながら、メケラーモは瞬時に魔力で撃たれた足を治療し、立ち上がった。


「撃たれた傷をすぐに治すほどの魔力があるのね。でも、私より弱いね」


「ふん、褒めていただき光栄です」


 メケラーモは接近したセアンにこう言うと、セアンのカトラスによる攻撃を右手の剣で受け止めた。防御されたその瞬間、セアンは瞬時に左手のハンドガンでメケラーモの腹を狙って発砲したが、攻撃を予測していたメケラーモは左手の剣で放たれた弾丸を天井に向かって跳ね返した。その後、セアンは一瞬だけ魔力を解放してメケラーモの防御を崩し、カトラスを振り下ろした。


「こりゃまずい」


 防御する時間がないと判断したメケラーモは、魔力の衝撃波を発してセアンを吹き飛ばした。セアンは空中で態勢を整えて地面に着地し、メケラーモに向かって発砲した。


「また銃で攻撃するのかい?」


 飛んでくる弾丸を見て、メケラーモは二刀の剣を振り回して弾丸を斬り落とした。だが、飛んでくる弾丸の一部が魔力で作られた特殊な弾丸であった。それを斬った直後、周囲に煙が発した。


「うわっぷ!」


 突如発した煙に驚き、メケラーモは何もできなかった。その結果、煙はメケラーモの目や鼻、口を襲った。メケラーモは咳き込みながらも魔力の探知を行い、セアンがいつ接近してくるか構えた。しばらくして、背後からセアンの魔力を感じた。


「後ろか!」


 メケラーモは振り向きながら、勢いを付けて左手の剣を振るった。すると、金属同士がぶつかり合う激しい音が響いた。


 防御されたか。


 メケラーモは後ろに下がろうとしたのだが、突如左足に激痛を感じた。煙のせいで視界が悪いのだが、何とか左足の様子を見ることができた。メケラーモの左足の甲は、魔力で作られた槍のようなものが突き刺さっていた。


「隙ありだね」


 煙の合間から、カトラスを構えたセアンの姿が映った。攻撃されると思い、メケラーモは構えようとしたのだが、左足が動けないため、構えることができなかった。


「しまっ……」


 メケラーモが悔しそうな表情をしたその直後、強烈なカトラスの一閃がメケラーモを襲った。


「ガハッ!」


 メケラーモの腹から、血が流れた。その後、メケラーモは地面に倒れたのだが、すぐに立ち上がった。


「へぇ、まだやるんだ。根性あるね」


 セアンはカトラスを構えてこう言った。メケラーモは魔力を使って受けた傷の治癒を行い、二刀の剣を構えた。


「今度は……こっちの番だ!」


 メケラーモはそう言うと、魔力を解放して水の槍を発し、左右からセアンに襲わせた。


「水の槍か。威力なさそうだね」


「油断したら死んじまうぞ」


 にやりと笑いながらメケラーモがこう言った。水の槍は途中で固まり、セアンの両肩を貫いた。


「グッ!」


「油断したら死んじまうぞ。俺はさっきそう言ったんだけどなぁ」


 氷の槍のせいで、セアンは動きを封じられてしまった。セアンは体を動かして氷の槍を抜き取ろうとしたのだが、氷の槍はなかなか抜けなかった。


「まずい……」


「こりゃー絶体絶命って奴だね。それじゃ、お前をいたぶって弄んで、ぶっ殺してやるよ」


 メケラーモは下種な笑みを浮かべながらセアンに近付いた。右手の剣でセアンの服を斬り裂こうとしたのだが、セアンはメケラーモの股間に向かって蹴りを放った。


「あっふぅ!」


「両肩の動きを封じても、足を封じてないからそうなるんだよね」


「ぐっ……がぁ……」


 強烈な痛みがメケラーモを襲う。痛みのせいで、開放していた魔力が消えてしまった。動きの自由が戻ったセアンは魔力で両肩の傷を治し、うずくまるメケラーモに近付いた。


「さっきはよくもやってくれたわねー。今度は回復しきれないほどの攻撃をやってやるから、覚悟しなさい!」


 セアンはそう叫ぶと、魔力を解放してカトラスに注ぎ込んだ。すると、カトラスの刃が緑色に強く輝いた。


「な……あ……」


「こりゃー一撃受けたら相当痛そうだね。でもま、あんたらがどうなろうとも、私はかわいそうだとは思わないけどね!」


 そう言って、セアンは力を込めてカトラスを振るった。攻撃力が上がったカトラスによる一閃は、メケラーモの体に深い傷を作った。


「そん……な……」


 メケラーモは負けたと察し、悔しそうに呟いた。その直後、メケラーモはその場に倒れた。




 ふぅ、終わった。


 セアンはそう思いながらメケラーモの動きを封じようとした。倒れたメケラーモからは、魔力を感じなかった。完全に気を失ったと判断したセアンは縄でメケラーモの体を縛ろうとしたのだが、メケラーモの右手が動いた。


「んなっ!」


「グフッ……俺はまだ……戦えるぞ」


 と言って、メケラーモは苦しそうに立ち上がった。セアンは動揺したのだが、メケラーモの体からは血が流れている。魔力を使って治癒するほどの余裕はないと判断したセアンは、メケラーモはまともに戦えないと判断した。


「動かない方がいいよ。下手したら死ぬわよ」


「俺は死なないよ。お前を殺して生きる」


「なーに言ってんのよ。その傷で動けるはずがないじゃない。強がりを言わない方がいいわよ」


「強がりじゃないさ……フッ!」


 メケラーモは魔力を解放し、傷の手当てをした。


「まだ魔力を使えるのは驚いたけど、完全に傷は治っていないわね」


「だとしても、お前を殺す余裕はある!」


 セアンの足を掴んだまま、メケラーモは立ち上がった。周囲を見回したメケラーモは、近くの通路に壁がないことを察し、あることを思いついた。


「お前も役立たずの雑魚と同じように奈落の底へ落してやる」


「そんなことできないと思うけど」


 と言って、セアンは魔力を解放してメケラーモの手から逃れた。


「なっ! クソッ!」


 メケラーモは慌ててセアンを追いかけようとしたのだが、走る途中で自身が発した水で足を滑らせてしまった。


「おわっ!」


 転倒したメケラーモの体は、水のせいで滑り出した。そして、壁がない通路の方まで動いてしまった。


「し……しまった……」


「あっ!」


 セアンは急いでメケラーモの手を掴もうとしたのだが、メケラーモの手を掴むことはできなかった。


「そんな……」


 メケラーモはこれから奈落の底へ落ちることを察し、その顔は恐怖と絶望の色に染まっていた。その後、メケラーモは悲鳴を上げながら奈落の底へ落ちてしまった。


「はぁ……」


 落ちて行くメケラーモを見て、セアンは助けられなかったと後悔していた。その後、立ち上がったセアンはライアかラージュの元へ行こうと思い、歩き始めた。


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