カイトVSネクラレン
セアンたちを先に遺跡に向かわせたカイトは、多数いるネクラレンの方を向いて刀を構えた。一人この場に残って戦おうと考えているカイトを見て、ネクラレンの船員たちは笑い始めた。
「オイオイオイオイ。あいつ正気かよ!」
「一人で多数を相手にするつもりか? 勝てるわけがないだろうが!」
「あのイカレ小僧をとっととぶっ殺して、ピラータ姉妹を追いかけて襲おうぜ!」
「そうだな、それが一番いい選択だな!」
そう言いながら、船員たちは武器を構えてカイトに向かって歩き始めた。その瞬間、カイトの姿が消えた。
「あれ?」
「姿が見えない」
「逃げたのか?」
「いや、あの小僧は逃げていない」
と、一人の船員が小さくこう言った。他の船員が一斉に小言を呟いた船員の方を振り向いた瞬間、船員の四分の一が声を出さずに倒れた。
「え? ヒェッ! いつの間にか攻撃されてる!」
「す……姿を見たか?」
「いや、見えなかった。殺気も、魔力も何も感じなかった!」
「どこから襲われるか分からない、武器を構えろ!」
船員が恐れる中、カイトの攻撃は続いた。カイトは少しだけ本気を出しており、船員の目では追えないほどの速さで素早く攻撃を仕掛けているのだ。
敵は一発の攻撃で楽に倒せる。これならすぐにセアンたちと合流できそうだ。
カイトは攻撃を仕掛けながら、心の中でこう思っていた。すると、黄色のような何かが現れた。敵の攻撃かもしれないと思ったカイトは攻撃を止めて後ろに下がった。その時、悲鳴を上げていたネクラレンの船員がカイトの姿を見つけ、声を上げた。
「あ! あそこにいやがった!」
「このクソガキ! 俺たちの仲間をよくもやってくれたな!」
「今度はお前が痛い目に合う番だ!」
カイトに対し、怒りを爆発させていたネクラレンの船員たちは、同時にカイトに攻撃を仕掛けた。カイトはネクラレンの船員の攻撃をかわしつつ、刀で反撃を行った。
「んな……アホな……」
「数では勝っているのに……」
攻撃を受けたネクラレンの船員は、情けない声を上げて倒れて行った。攻撃を終えたカイトは、一人だけ残っている船員に刀を向けた。
「後はお前だけだ。お前だけ、俺の攻撃をかわしてただろ」
「ああ。ちょっと魔力を使ったけど……やはり、噂で聞いた通り凄腕だ」
残った船員は丸まった糸を取り出し、左手の指で掴んだ。その光景を見ていた倒れている船員は、にやりと笑ってこう言った。
「やっちまえ、ヌケーマ! 俺たちに変わってあのクソガキをぶっ殺せ!」
「はいはい。分かったから大人しくしてなさいよ。後は私がやるから」
ヌケーマはため息を吐きながら、倒れている船員にこう答えた。
刀を構えているカイトは、ヌケーマの動きを観察していた。攻撃の際に見た黄色の何かは、このヌケーマの仕業だと見抜いていた。だが、その何かの正体が分からない。攻撃を行うのは、ヌケーマの攻撃を見抜いた後でしようとカイトは考えた。
「さて、そろそろ始めよう。時間がないから、すぐに君を殺すよ」
ヌケーマはそう言うと、魔力を解放しながら糸を引っ張った。その瞬間、糸は黄色になった。それを見たカイトは、黄色の何かの正体は、魔力を纏った糸だと理解した。
「それで俺と戦うつもりかよ」
「その通りだよ。ま、私の攻撃を見抜いたところで、私を倒すことは不可能だけどね」
と言って、ヌケーマは糸をカイトに向かって投げた。カイトは糸をかわしたのだが、糸はカイトの後を追いかけた。
「やっぱり追いかけてくるのかよ!」
魔力が纏った糸をかわしても、追尾してくるだろうと考えていたカイトは、魔力を解放して糸に攻撃を仕掛けた。だが、刀の刃が当たる寸前に糸は大きく動き、刀をかわした。
「糸を切るつもりかい? ダメダメ。そんなことさせないよ」
ヌケーマは糸を持つ右手を動かした。すると、糸はカイトの体に巻き付き、動きを封じてしまった。
「クソッ!」
「とりあえず、一発!」
そう言って、ヌケーマは魔力を解放して糸に強力な電撃を流した。
「グワァァァァァァァァァァ!」
強い電流が体中を駆け巡る。攻撃を受けたカイトは体中が焦げ、口から黒煙が発した。だが、まだカイトに意識はあり、魔力も減っていなかった。
「ま、この攻撃で死なないってことは分かってたけど。続いては……」
次の攻撃を行うため、ヌケーマは糸を引っ張った。次の瞬間、カイトを縛っている糸が更に食い込み、切り傷のような傷を作った。
「ウグアッ!」
カイトの悲鳴を聞き、ヌケーマはニヤリと笑った。
「さて、これで攻撃は終わりだよ」
そう言って、ヌケーマは糸を引っ張った。糸はカイトの体に食い込んだまま、ヌケーマの元へ戻って行った。糸から解放された直後、カイトの体から大量の血が流れた。それを見たネクラレンの船員は、歓声を上げていた。
「うおっしゃー! 流石ヌケーマ! 糸使い最強の男!」
「これであのクソガキはくたばった! 俺たちと戦った結果がこれなんだよバーカ!」
「ケケケケケ! 後は俺たちであのクソガキを仕留めようぜ!」
カイトが倒れたことを察したネクラレンの船員は、立ち上がってカイトを始末しようとした。だが、ヌケーマが船員たちを止めた。
「あん? どうして止めるんだよ?」
「バカだなー。この子からまだ魔力を感じるよ。ダメージは負ったけど、戦う気力は失ってないよ」
ヌケーマの返事を聞き、船員たちは動揺した。感電、そして深い切り傷を受けても戦おうとするカイトを見て、恐怖を感じたのだ。
攻撃を受けたカイトは嗚咽しながら立ち上がった。強い電流が体中に流れたため、まだ体の節々が痺れている。糸が食い込んだせいで、深い切り傷ができた。それでも、カイトはまだ戦えると思い、立ち上がったのだ。
「グッ……よくもやってくれたな。徹底的にぶっ潰してやろうか?」
「やっぱり立ち上がったか」
ヌケーマは船員たちに下がるように告げた後、糸を構えた。
「次の攻撃で君を仕留める。私に挑んだのが運の尽きだったみたいだね」
「運が尽きたのはお前らの方だ。後のためにと思ったけど、ここで使わないとまずいな」
と言って、カイトは強い魔力を解放した。その魔力を感じ、ヌケーマは目を丸くして驚いた。
「おいおい、今までは手を抜いて戦ってたってわけかい」
「少しだけ手を抜いていたんだよ。ま、今から少しだけ本気出すってことでよろしく」
カイトが刀を構えた直後、姿が消えた。ヌケーマは糸を周囲に伸ばし、カイトが糸に触れた瞬間に電流が流れるように罠を仕掛けた。しかし、カイトは現れた糸に向かって刀を振り下ろし、糸を切断していった。
糸が切断されている。魔力が解放されたから、太刀筋の質も上昇したのか?
驚きながらヌケーマは心の中でこう思った。その時、ヌケーマは背中に違和感を覚えた。後ろを見ると、刀を振り下ろしたカイトがヌケーマを見て、にやりと笑っていた。
「これで終わりだな」
カイトの言葉の直後、ヌケーマの口から血が流れた。この時、ヌケーマは察した。この戦い、自分が負けたのだと。
「あーあ……後で……叱られるな……こりゃ」
そう呟きながら、ヌケーマはその場に倒れた。ヌケーマが戦いに負けたことを察したネクラレンの船員は、カイトを見て悲鳴を上げて逃げて行った。
「逃がすかよ」
カイトは逃げたネクラレンの船員が、また村で悪さをするだろうと考え、すぐに追いかけて船員を捕まえた。
「ひーん! 助けてください!」
「俺たちが悪かった。何でも言うことを聞くから助けて!」
「殺さないで!」
カイトによって捕まった船員たちは、涙を流しながらこう懇願した。この言葉を聞き、カイトはため息を吐きながらこう言った。
「近くの村の人たちを殺しまくったのはどこのどいつだ? 村を崩壊させたクソ野郎はどこのどいつだ? そんな奴らの言うことを聞くわけがねーだろ。テメーらのような下種野郎は、シーポリスに突き出してやるからな」
カイトの言葉を聞き、ネクラレンの船員はため息を吐いた後、大声で泣き始めた。
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