ドンパチ島の遺跡について
ネクラレンに襲われている島の人々を救ったカイトたちは、島の遺跡について話を聞いていた。話によると、ドンパチ島の遺跡はとても危険で、何が何でも絶対に中に入るなと言われているため、誰一人遺跡に入ったことはなかったのだ。
「それだけ危険な遺跡なのか」
話を聞いたカイトは、小さな声で呟いた。その時、ランドレディースでのソンウクたちがいた遺跡のことを思い出した。セアンもそのことを思い出したのか、声を出した。
「そうだ、ソンウクたちが守っていた遺跡も結構物騒な罠が多かったよね」
「それでブラッディークロー関連の海賊が全滅したわね」
コスタはあの時の光景を思い出し、あんな死に方はしたくないと小さく呟いた、そんな中、ケアノスが咳ばらいをしてカイトたちにこう言った。
「とりあえず、今日はもう遅いから休みましょう。この島にも危険な罠があるんだったら、敵もそう簡単にメダルを取ることはできないと思うわ」
「珍しくケアノスが楽観的だねー。いつもは敵が先にメダルを手に入れるかもしれないって言って焦らせるのに」
楽観的なことを話したケアノスを見て、ライアは珍しそうにこう言った。ラージュは小さく笑い、ライアにこう言った。
「ソンウクの遺跡を思い出して。そう簡単にメダルを手に入れないと考えたのよ。私もケアノスと同じ意見」
「うーん。そうだね。本当は、派手に暴れたから少し休みたいんだよね」
ライアはあくびをしながらこう言った。それから、カイトたちは一度ヴィーナスハンドに戻り、休むことにした。
カイトたちが休む中、ネクラレンのマイダたちは遺跡へ向かって移動していた。
「かなり距離がありますね。皆さん、もう少し踏ん張ってください」
そう言って、マイダは笑いながら歩いていた。だが、船員たちは疲れのせいで歩くスピードが落ちていた。
「船長すげぇや。あれだけ暴れたのに、まだ体力があるのかよ。俺なんてへとへとだぜ」
「ガーティブさんに鍛えてもらったらしいぞ。だから滅茶苦茶強いんだよ」
「え? あのガーティブさんに? あの人のことは一応知ってるけど、まさか技を教えたりするのは初耳だぜ」
「お喋りですか? 口ばっかり動かしていると、足は動きませんよ」
と、マイダは話をしている船員に近付いてこう言った。殺気を感じた船員はすぐに返事をし、口を閉じた。それからマイダたちは一言も喋らずに遺跡へ向かって歩いていた。その時、マイダがいきなり口を開いた。
「そうだ。誰でもいいので、足止めで待機してください」
足止めと聞き、船員たちは話を始めた。
「俺が残る。ピラータ海賊団には恨みがある。知り合いがあいつらに倒されたって聞いたし」
「俺は遺跡へ行くぜ。マイダさんと一緒に、行動する」
「俺は残る。ピラータ姉妹は美人姉妹だ。痛めつけてその後はお楽しみってわけだ」
「彼氏のカイトはどうするんだ?」
「ぶっ殺すに決まってんじゃねーか」
船員たちは各々の意見を言い、誰が先に進むか、誰がこの場に残るか話を続けた。しばらくして、先に進む組と足止めで残る組が決まった。
「話はまとまりましたね。では、私と共に進む者は一緒に遺跡へ行きましょう」
「それじゃあ行ってくる。後で合流しよう」
「ああ。絶対に戻ってこいよ」
待機組は、マイダが率いる進む組を見送りながら手を振った。マイダたちの姿が見えなくなった後、待機組は一休みするため、寝られる場所へ移動した。
翌朝、カイトたちは支度を終えて村の出入り口に立っていた。
「ここからまっすぐ歩けば、遺跡だって」
「奴らが先に向かっているから、早く行かないとな」
「そうね。もしかしたら、メダルを手に入れた可能性もあるわ」
「あいつらがメダルと手にしているのなら、奪いましょう」
「うーん……そっちの方が楽かな?」
「バカなこと言ってんじゃないわよ。あいつらが遺跡の中で命を落とすことも考えて。そう簡単に話は進まないわよ」
カイトたちが話をしていると、村の子供たちが近付いた。セアンは子供に近付き、しゃがんで話をした。
「ねぇ、どうかしたの?」
「僕たち……あの変な海賊のせいで親を失ったんだ」
「お姉ちゃん、あいつらと戦うんでしょ? 絶対に勝って!」
子供たちの声を聞き、セアンは笑顔で子供の手を握った。
「うん。絶対に倒すよ。あんな奴ら、私がぶっ飛ばしてすりつぶしてけちょんけちょんのぐっちょぐちょにしてやるから」
この言葉を聞いたカイトは、セアンはまだネクラレンに怒りを覚えていることを察知した。だが、カイト自身もネクラレンに対して怒りを爆発させている。もし、ネクラレンと遭遇したら完膚なきまでに叩きのめそうと思った。
「それじゃあ行ってくるね!」
セアンは子供たちに手を振りながら、カイトたちと共に遺跡へ向かった。
村から出たカイトたちは、ひたすら遺跡へ向かって歩いていた。カイトたちの手には各々の武器が握られており、ネクラレンの奇襲があってもすぐに対応できるようになっていた。
「あいつら、どこかに潜んでいるかもな」
カイトの言葉を聞き、ケアノスは短い返事を返した。周りには木や茂みがあり、人一人余裕で隠れることができる大きさだった。近くを通り過ぎたら襲ってくるだろうとケアノスは考えていた。カイトとケアノスが気を張る中、ラージュが二人の肩を叩いた。
「とりあえず、あいつらの魔力は感じないわ。武器を持っているんだし、少し気を楽にしましょうよ」
「ああ……そうだな」
「気を張りすぎてもダメだしね」
カイトとラージュはそう言って肩の力を抜いた。それからしばらく歩くと、カイトは突如誰かの魔力を感じた。
「誰かいるな」
「うん」
カイトの言葉を聞いたセアンは、その場に立ち止まって周囲を見回した。コスタはスナイパーライフルを構え、近くの木に向かって発砲した。
「うわっ!」
コスタが放った弾丸が木に当たった直後、近くから男の声がした。
「誰だ! そこにいるのは分かってんだよ!」
カイトがこう言うと、木の裏や茂みの中からネクラレンの船員が現れた。
「ばれちまったらしょうがねぇ!」
「野郎は殺せ! 女は身ぐるみはがしてお楽しみだ!」
ネクラレン船員の下種な言葉を聞いたカイトは、魔力を解放して攻撃を仕掛けた。
「悪いけど、セアンたちに手を出させないし、お前らじゃ俺を殺すことはできねーよ!」
そう言いながら、カイトは攻撃を続けた。セアンはコスタたちを見て、こう言った。
「私たちも加勢するよ!」
「うん!」
会話後、セアンたちもネクラレン待機組と戦い始めた。待機組はそれなりにいたのだが、一人一人の戦闘力は低かったため、カイトたちの敵ではなかった。戦いが始まって約二分、立っている待機組は最初の半分にも満たなかった。
「おいおい……なんつー強さだよ」
「俺たちじゃ敵わない……」
「強すぎる。あれじゃあ倒してお楽しみなんてできねーよ」
カイトたちの強さを知った待機組は、恐怖を感じた。戦いの中、カイトはあることを考えてセアンたちにこう言った。
「皆は先に行ってくれ。あいつらがメダルを手に入れたかもしれない」
「カイトを残して先に進むってわけ?」
ケアノスは心配そうにこう言ったが、セアンは頷いてこう言った。
「分かった。それじゃあ先に行ってるね」
セアンの言葉を聞いたケアノスは驚いた表情をした。そんなケアノスに対し、セアンはこう言った。
「ケアノスも知っているでしょ? カイトがあんな雑魚に倒されるわけがないって」
「それはそうだけど……」
「だったら、心配いらないよ。カイトは後で合流するし、私たちは先に行こう」
この言葉を聞いたケアノスは、頷いて返事をした。その後、一人で戦うカイトにこう言った。
「カイト! 必ず後で合流してね!」
「おう、分かった!」
カイトはケアノスの方を振り返り、こう答えた。
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