ドンパチ島へ急げ!
ネクラレンの海賊船が完全に沈んだ後、セアンは頬を叩いてカイトたちにこう言った。
「足止めをされちゃったから、急いでドンパチ島に向かうよ! あいつらが先に到着しているかもしれない!」
「ああ。また戦いがあるかもしれないな」
「その時はその時で、手加減せずに戦おう。あいつらがあの島で何をやっているか分からないし」
カイトとコスタがこう言った後、ケアノスは急いで周りを見回した。
「何もいないわ。奴らがまた襲ってくる前に早く行くわよ!」
「オッケー! それじゃあ行こう!」
セアンの声の後、ヴィーナスハンドはドンパチ島に向かって動き出した。
ドンパチ島。島のあちこちで黒煙が舞い、爆音が鳴り響いている。島にある村では、一部の村人たちが血を流して倒れており、家屋も破壊されていた。
子供が泣く声が響く中、村の戦士は額から血を流しながら、目の前の男を睨んでいた。
「おーおー、そんな顔をしないでくださいよ。悪いのは口が堅いあなたたちなのですよ」
「うるさい……このクソ野郎が!」
村の戦士は手にしている槍で男に攻撃を仕掛けたが、男はにやりと笑った。その直後、槍の先端が斬り落とされた。
「な……に……」
「魔力も何も使えない雑魚が、私に敵うと思わないでくださいよ」
男はそう言って左手の中指を動かした。その瞬間、村の戦士の頭が吹き飛んだ。村の戦士が倒れたのを確認した男は、首を鳴らしながら周囲にいる男たちにこう言った。
「この村には用はありません。それと、他の地域で暴れている皆さんにこう伝えてください。拷問してもこいつらは口を割らない。そんな奴はさっさと殺してしまいなさいと」
「分かりました」
男の部下は敬礼しながらそう言うと、通信を始めた。男はあくびをし、近くのツボの裏に隠れている子供を見つけた。
「さっきから泣いているのはあなたですか? 正直言ってガキの泣く声は耳障りだから嫌いなんですよ。だから、さっさと死んでください」
男はそう言うと、泣いていた子供に向かって魔力を放ち、その子供を跡形もなく消滅させた。男の部下は唾を飲みながら、男に近付いた。
「マイダさん、子供を殺すのはさすがにどうかと思いますが……」
男、マイダの部下は恐る恐るこう言うと、マイダは咳ばらいをしてこう言った。
「目ざわりなゴミはさっさと処分するのが私の性格。たとえガキだろうが何だろうが、私がゴミと判断したらゴミなんですよ。何ですかあなたは? 私のやり方に文句でもあるんですか?」
マイダは魔力を解放しながら部下に近付いた。命の危機を察した部下は失礼しましたと頭を下げ、後ろに下がった。去って行く部下を見て、マイダは周囲を見回した。
「ゴミはまだいますが……ま、この程度の集落なら私の魔力で跡形もなく消滅できますね。皆さん、ここには用はありません。次の場所へ向かいましょう」
その後、マイダは部下を連れて別の村へ向かう支度をした。支度を終えたマイダは、半壊させた集落を見てこう言った。
「さて、これでおしまいです」
そう言うと、マイダは魔力を解放して襲っていた村を爆破した。そのせいで、倒れていた村の戦士や住人の死体は跡形もなく消滅し、半壊した建物も消滅した。何もかも消し飛んだ村を見て、部下は声を上げた。
「お見事です船長。これでこの島に住む連中も少しは話す気になったでしょう」
「だといいんですが。拷問をしても口を割らないのがこの島の連中。ま、別の方法で口を割ることができるのであれば、その方法を試しましょう。では、次の村へ行きましょう」
そう言うと、マイダたちを乗せた大型車は次の村に向かって走り出した。
別の村にて。子供たちを人質に取っているネクラレンの船員が、泣き叫ぶ母親たちを拷問していた。
「オラァ! さっさと遺跡について話しやがれ、クソビッチ共が!」
「話をしないと、テメーらが産んだクソガキを一匹ずつぶっ殺すぞ」
ネクラレンの船員は、人質の子供たちに向かって銃を向け、発砲した。
「キャァッ! 止めてください! どうか、どうか子供たちの命だけはお助けを!」
「ガキの命が助かるかどーかはテメーらの選択次第だ! さて言うか? 言わないか? さっさと決めろ、俺たちは気が短いんだ!」
その言葉を聞いた母親の一人は、意を決したかのような表情で口を開こうとした。だが、別の母親が慌ててこう言った。
「この島の掟を忘れたの? 何が何でもあの遺跡のことを他の人に話してはいけないって!」
「でも、あのことを話さないと子供たちの命が危ないわよ! 島の秘密を守るより、私はこの命を守ります!」
その言葉を聞いたネクラレンの船員は、にやにやと気味が悪い笑みをしながらその母親の元へ近づいた。
「あなたたちの言う通り、この島には遺跡があります。しかし、絶対に入るなと言われており、私たちは中に入ったことがありません」
「何だ、入ったことがないのか」
「入ったら絶対に死ぬと言われていますから……」
「そうかそうか。じゃあ、約束通りお前らのクソガキ共は助けてやろう。おい、ガキ共を開放してやれ」
その言葉を聞いたネクラレンの船員は、人質の子供たちを開放した。子供たちはそれぞれの母親たちに抱き着き、涙を流していた。秘密を喋った母親の元にも、子供が駆け寄った。
「おかーさーん!」
「ああっ、リューカ! 無事でよかった……」
秘密を喋った母親は、涙を流しながら我が子を抱きしめていた。そんな中、銃声が響いた。その後、目の前の光景を見ていた母親たちと子供たちは、言葉を失っていた。秘密を喋った母親の後頭部が粉々に砕け、その場で倒れていたのだ。
「ガキ共は殺さない。だが、テメーらを殺さないとは言ってねーからな。約束はちゃーんと守ってるぜ、俺たちは」
ネクラレンの船員たちは、高笑いをしながらこう言った。リューカと言われた子供は、死んだ母親に抱き着き、ひたすら泣き叫んでいた。他の親子は恐怖を感じ、走って逃げ出した。逃げたことを察したネクラレンの船員は、一斉に逃げる親子に向かって銃を向けた。
「さーてと、血祭の始まりだ!」
「ケヒャヒャヒャ! 誰がたくさん殺せるか競争だ!」
その後、無数の銃声が轟いた。
ヴィーナスハンドにいるカイトは、望遠鏡を使って辺りを見回していた。すると、少し離れた所で黒い煙が発しているのに気付いた。
「なぁ、何か黒い煙があるけど」
「そこが次の目的地のドンパチ島だけど……まずいわね」
ケアノスはそう言うと、無線機を手にして電源を入れた。
「皆、すでにドンパチ島がネクラレンの連中に襲われているわ。カイト、セアン、ライアは島に到着したらすぐに戦えるように支度をして。コスタはライフルの点検を終わらせて、援護ができるようにして。ラージュは島に住む人たちの救護を行って!」
連絡を聞いたカイトは、近くにある刀を手にして黒い煙が発生するドンパチ島を見つめた。
あそこで何かが起きている。嫌な予感がする……あいつらが暴れているに違いない。
そう思ったカイトは、すぐに戦える支度を始めた。そんな中、セアンとライアが近付いた。
「あいつら、かなり暴れているようだね」
「ああ。どんな風に暴れているか分からないが、非道なことをしているのは間違いない。絶対に許せない」
「私も同じ気持ち。奴らと遭遇したら、けちょんけちょんのぐっちゃぐちゃにしてやるんだから!」
ライアはナイフを振り回しながらこう言った。セアンがライアに向かって止めなさいと言うのを見る中、カイトは次に戦うネクラレンに対して怒りを募らせていた。
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