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怒りの一撃


 ラージュはカイトとライアとは別の所でネクラレンの船員と戦っていた。大剣を使うラージュの動きを見て、ネクラレンの船員は徐々に恐怖を覚えていた。


「おい、あの化け物どうする?」


 船員の一人が、別の船員に話しかけた。話しかけられた船員はラージュの攻撃で次々と倒される仲間を見て、恐る恐るこう答えた。


「どうするって、俺たちじゃどうしようもないだろ。アオテンジョウさんもクセダセウさんもやられちまったし」


「だけど、あれをどうにかしないと俺たちに明日はないぞ。倒すしかないけど……」


「あんなのを簡単に倒せるんだったら教えてほしいよ」


 船員が話をしていると、ラージュが急接近してきた。


「おわっ! 近付いてきた!」


「クソッ! これを使うしかない!」


 船員の一人が煙玉を床の上に叩きつけ、煙を発した。


「キャッ! 何よこれ!」


 突如舞う煙に戸惑い、ラージュは悲鳴を上げながら煙を払った。


 今がチャンスだ。


 船員の一人はそう思い、剣を構えてラージュに向かって走り出した。


 勝った! あの化け物を仕留めたぞ!


 剣を構えた船員は勝利を確信し、こう思った。しかし、ラージュは大剣を大きく振り払い、周囲の煙を吹き飛ばしたのだ。


「これでよく見えるわ」


 その後、ラージュは剣を持った船員に向かって、力を込めて大剣を振り下ろした。


「あ……ああ……」


 目の前で仲間を斬られた光景を見た船員は、恐怖のあまり腰を抜かしてしまった。攻撃を終えたラージュは大剣を肩に担ぎ、腰を抜かした船員を睨んだ。


「ひぃ! 殺される!」


 命の危機を察した船員は、這いつくばって移動を始めた。しばらくして、別の所で待機している仲間の元へ到着した。


「あん? どうかしたか?」


「ば……ばけ……化け物が……」


 待機していた船員は、腰を抜かした船員の様子がおかしいことに気付き、異変が起きたと察した。


「おいおい、アオテンジョウさんとクセダセウさんがピラータ姉妹を始末したんじゃないのか?」


「バカ野郎! お前らはずっとここにいたから周囲の状況を理解できていないんだ! アオテンジョウさんもクセダセウさんもやられちまった!」


 この言葉を聞いた船員たちは、にやりと笑ってこう言った。


「ほう。なら、俺たちが化け物を仕留めれば、俺たちがネクラレンの幹部クラスってわけか」


「バカなこと言ってんじゃねーよ! そんなに強気なら、あの化け物を倒してくれよ!」


「ハッハッハ! じゃあ倒してくるわ!」


 と言って、待機場所にいた船員たちは各々の武器を持って外に出た。




 大剣を持ったラージュは、怒りを爆発させながら周りを見回していた。ラージュの怒りの原因は卑劣なネクラレンの行動を見たからだ。そのせいでカイトとライアがそれなりにダメージを受け、セアンとケアノスが戦うことになってしまった。


 卑怯で根暗なあいつらを許すわけにはいかないわ。必ず私の手で全員一人残らず半殺しにしてやるわ!


 ラージュは心の中でこう叫びながら、逃げた船員の後を追っていた。すると、突如針が飛んできた。


「ツッ!」


 針の存在に気付いたラージュは、すぐに後ろに下がって針をかわした。だが、その動きに合わせるかのように弾丸が放たれた。


「今度は銃?」


 ラージュは下にしゃがみ、飛んでくる弾丸をかわした。その直後、上から剣を持った三人の船員が襲い掛かった。


「見つけたぞ!」


「このまま斬り殺せ!」


「こいつを殺して、俺たちが幹部になるんだ!」


 三人の船員は叫び声を上げながら、ラージュに襲い掛かった。ラージュはしゃがんだまま大剣を上に上げ、船員たちの攻撃を防いだ。その時、再び針がラージュに向かって飛んできた。


「あうっ!」


 針が刺さったラージュは、苦痛の表情になった。その時、大剣を持っている手の握力が弱まり、その一瞬の隙を突かれて三人の船員に押し倒されてしまった。


「ナイス援護! このままこいつをいたぶってやろうぜ!」


「おーし! お前ら出てこいよ! 集団でやってやろうぜ!」


「ゲヘヘヘヘヘ! お楽しみの時間の始まりだぜぇ!」


 三人の船員はラージュの上に乗り、身動きが取れないようにした。それから針や銃を使って攻撃をしていた船員たちが現れ、ラージュを取り囲んだ。


「残念だったなぁ! 一人で多数を相手に勝てると思っていたのかよ!」


「いくら強いと言っても、頭の中が空っぽじゃあ意味がないんだぜ!」


「このままお前の体で遊んでやるよ! 覚悟しろ!」


 下種な声や、笑い声がラージュの耳に入る。その言葉を聞いたラージュの怒りは、さらに燃え上がった。


「私と遊びたいのね。それじゃあ、あんたらを人形のようにして遊んでやるわよ!」


 と言って、ラージュは魔力を解放した。その時の衝撃で、ラージュの上に乗っていた船員たちは吹き飛ばされてしまった。


「んなっ! 何だよ、この魔力は!」


「ゲェッ! 俺、嫌な予感がする。先に逃げるぜ!」


 この後の展開を察した船員の一人が、先に逃げようとした。しかし、ラージュはその船員の襟を掴み、力を込めて床の上に叩きつけた。


「グッゲェ……」


 叩きつけられた船員は情けない声を上げ、その場で気を失った。船員たちが動揺する中、ラージュは大剣を手にして力を込めて振り回した。


「うわァァァァァ!」


「ギャァァァァァ!」


「やられちゃった」


 この攻撃で、ラージュを襲っていた船員の三分の一がやられてしまった。仲間がやられる光景を見た船員は、目を開いて鼻水を垂らし、恐怖で身動きが取れなかった。


「な……ななななな……何じゃこりゃ……」


「雑魚相手に本気は出したくないんだけど……私を怒らせた以上、痛い目を見てもらうわ」


 驚愕する船員たちに対し、ラージュは冷たい視線を送りながらこう言った。




 セアンとケアノスはヴィーナスハンドに戻り、コスタの治療を受けていた。


「酷い敵もいるもんね。まさか、二人を操って同士討ちを狙うなんて」


「ネクラレンの連中、卑劣な手を考えるのが上手らしいわね」


「卑怯な連中だよ。いくら海賊の戦いにルールはないって言っても、これはやりすぎだと思うよ」


 セアンは回転いすの上に乗り、回りながらこう言った。コスタはセアンに遊ばないのと言った後、外を見た。


「ラージュが暴れてる」


「え? 何かあったのかしら?」


「敵がラージュに対して何かやったのよ。ああなった以上、止めることは不可能に近いわね」


 コスタはため息を吐きながらこう言った。そんな中、カイトとライアが慌てながらヴィーナスハンドに戻った。


「ラージュが鬼のように暴れてるよ! どうしよう!」


 ライアが慌てながらこう言ったが、コスタはライアに近付いてこう言った。


「ああなった以上、ラージュの気が済むのを待つしかないわ」


「俺、ラージュが本気でブチ切れたの始めて見たかもしれない」


「相手もかわいそうだね。ラージュを怒らせるなんて」


 セアンはネクラレンの船の上で暴れているラージュを見ながらこう言った。その時、ラージュは高く飛び上がり、上空で大剣を構えた。そして、勢いを付けて落下し、その衝撃でネクラレンの船を破壊した。


「うわァァァァァ! 船が、船が沈む!」


「た……助けてくれェェェェェ!」


「死にたくない! 俺、泳げないんだよォォォォォ!」


 と、ネクラレンの船員の悲鳴が聞こえた。セアンはため息を吐き、ケアノスの方を振り向いてこう聞いた。


「どうする、あいつら助ける?」


「助けようにしても、まだラージュが暴れているわ。助けてもまたラージュにぶっ飛ばされるのがオチよ」


「そーだね。ほっとこ」


 セアンはそう言って、あくびをしながら沈んでいくネクラレンの船を見ていた。


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