卑劣な者の戦い
カイトとライアは自身に迫ってくるアオテンジョウを見て、自分たちに挑む度胸があり、勝つ自信があるのだと察した。
「一人で二人を相手にするつもりか」
「その通りですよ」
アオテンジョウは変わった形の剣を手にし、カイトに斬りかかった。カイトは刀を使ってアオテンジョウの攻撃を防御し、後ろに下がった。それに合わせる形でライアが前に出て、アオテンジョウに攻撃を仕掛けた。
「フッ! ハッ! これで!」
ライアは激しい動きでナイフを振っていた。その動きは隙がなく、かなり早かったため、反撃を行う余裕もなかった。
「これは……」
アオテンジョウはライアの攻撃を目の当たりにし、冷や汗をかいた。その後、後ろに下がったアオテンジョウは剣の握り手にあるスイッチを押した。すると、剣は音を立てながら銃のような形に変形した。
「んなっ! それ、形が変わるのかよ!」
カイトは変形した剣を見て、驚きながらこう言った。アオテンジョウはため息を吐き、カイトにこう言った。
「そうですよ。こういう武器なので」
と言って、アオテンジョウはカイトに向かって発砲した。カイトは飛んでくる弾丸に対し、刀を振るって弾き落としたが、魔力を解放したアオテンジョウは左手に火を発し、刃のような形に形成してカイトに向かって投げた。
「グッ!」
カイトは火の刃をジャンプしてかわしたが、その動きを予測したアオテンジョウはカイトに銃口を合わせていた。
「じゃあ死んでください」
「あんたの予想通りにはさせないよ!」
アオテンジョウの攻撃を邪魔するため、ライアがアオテンジョウに接近してナイフを振るった。だが、アオテンジョウの足元から炎の棘が現れ、ライアの脇腹を貫いた。
「ウグアッ!」
「バカですねぇ、邪魔されるってことを予測していますよ、こっちは」
攻撃を受けて苦痛の顔をするライアを見下した後、アオテンジョウはカイトに向かって銃を撃った。放たれた弾丸はカイトの足に命中し、上空にいるカイトは攻撃を受けて後ろに吹き飛んだ。
「グアッ!」
床の上に落下したカイトは、痛そうな声を上げてその場を転がった。アオテンジョウはその隙にカイトに接近し、武器を剣の形に変えてカイトに突き刺そうとした。
「じゃあ死んでください」
「死んでたまるかっつーの!」
カイトは魔力を解放し、風の刃を発した。アオテンジョウは顔を少し動かして風の刃をかわしたが、完全にはかわし切れず、風の刃はアオテンジョウの頬をかすった。
「かすり傷ができてしまったじゃないか。酷いなぁ」
「ライアを刺した奴が何を言うか!」
カイトは刀を持ち、アオテンジョウに斬りかかった。カイトの攻撃をかわすアオテンジョウは、カイトに気付かれないように魔力を微妙に開放し、カイトの足元に向かって火の玉を放った。
「うわっ!」
攻撃に気付いたカイトは、少しだけ動きを止めてしまった。次の瞬間、床にめり込んだ火の玉はカイトに向かって伸び、脇腹を貫いた。
「グアッ……」
「こっちも終わり。強いと思いましたが……雑魚ですね、ピラータ姉妹とその彼氏は」
攻撃を受け、片膝をつくカイトを見てアオテンジョウはこう言った。その時、ナイフを持ったライアが後ろから奇襲を仕掛けた。
「この卑怯者! そんな攻撃を一目で察するわけがないじゃないの!」
「後ろから攻撃を仕掛けてくるんだ、あんたも卑怯者ですよ」
アオテンジョウはライアの攻撃をかわしながらこう言った。攻撃をかわされたことを察したライアは、空中で態勢を整えてカイトに接近した。
「カイト、大丈夫?」
「ああ。ライアは?」
「すぐに治療したから大丈夫。それよりも、あいつ……結構ひねくれた性格だよね」
「ああ。卑怯な攻撃ばかり仕掛けてくる」
「態度もムカつくし、何が何でも一発攻撃を当てたいよ」
「俺もだ。だけど、あいつは冷静だ。何か、予想外の攻撃を仕掛けないと勝てないぞ」
二人が話をしていると、アオテンジョウは気付かれないように周囲に火の粉を放った。カイトとライアは、そのことに気付いていなかった。
「二人で同時に仕掛けるのはどうだ?」
「真正面から攻撃を仕掛けるの?」
「挟み撃ちだ。俺が囮になるから、ライアはその隙を見計らって攻撃を仕掛けてくれ」
「気を付けてね、カイト」
「あのーお二人さん、何を話しているのか私にはさっぱり分かりませんが……何をしても無駄ですよ」
アオテンジョウはこう言った後、指を鳴らした。その直後、周囲に放たれた火の粉が一斉にカイトとライアに向かって襲い掛かった。
ネクラレン船員と戦っているセアンは、強い魔力を感じた。
「今の魔力は……」
「おーおー、アオテンジョウが派手にやってるみたいだね」
と、クセダセウがあくびをしながらこう言った。セアンはクセダセウを見て、カトラスを向けた。
「それってどういう意味?」
「アオテンジョウは相手に気付かれないように魔力を使うことができる。あいつらは、気付くことができないまま、アオテンジョウの魔力の攻撃を受けてあの世逝きってこと」
この言葉を聞いたセアンは、舌打ちをしてこう言った。
「卑劣ね、あんたら」
「卑劣上等卑怯上等、それがこっちのやり方なんでね。それに、あんたらも長年海賊家業をやっていれば分かっているはずだ。戦いに卑劣も卑怯もない。ルールは存在しないって」
「ええ。知ってるわよ」
セアンがそう言うと、コスタとケアノスが現れた。現れた二人を見て、クセダセウはにやりと笑った。
「一対三ってわけかい。あんたらも卑怯だね」
「あんたに言われたくないわ」
笑みを浮かべるクセダセウを見て、セアンは睨みながらこう言った。
攻撃を受けたカイトとライアは、傷を負ったが命に別状はなかった。
「大丈夫か……ライア?」
「うん……カイトも無事みたいだね」
二人は体中から血を流しながら、アオテンジョウを睨んだ。
「どうしよう……あいつ、結構強いよ」
「確かにな。だが、こっちも攻撃を仕掛けないと……」
「どうするの?」
「大丈夫だ、手は打ってある」
カイトの言葉を聞き、ライアはすでに攻撃の支度をしているのだと察した。それに気付いていないアオテンジョウは、武器を手にして傷を負って片膝をついている二人に近付いた。
「これでもう動けないはずだ。二人一緒にあの世へ送ってあげますので」
「それで勝ったつもりか卑劣野郎? 調子に乗っていると、後で酷い目に合うぜ」
余裕の笑みを浮かべるカイトを見て、アオテンジョウは不審に思った。その時、小さな音が聞こえた。
「まさかお前は……」
アオテンジョウが振り返った直後、突如アオテンジョウの体から血が流れた。その光景を見たライアは、目を丸くして驚いた。
「え……え? えええええ! どうしていきなり傷が……」
状況を理解できないライアは、カイトの方を振り返った。ライアの視線を察したカイトは、ウインクをしてこう言った。
「あいつの攻撃を受ける時、目に見えない風の刃を作っていたんだよ。それで、気付かれないように動かして、近付いた時に風の刃を動かした」
「罠を作ったわけね。すごいわカイト。そんな技ができるなんて」
「相手が卑劣なことをするんだったら、こっちも手段を択ばないってわけだ」
カイトは笑いながらこう言った。深手を負ったアオテンジョウはカイトを睨み、魔力を解放した。
「君も卑劣なことをするね……でも……必ず君を殺す!」
「そうはさせないわよ!」
ライアはナイフを構え、アオテンジョウに近付いた。そして、魔力を解放して攻撃を始めた。
「うっ! グッ! グワァァァァァ!」
魔力を解放したため、ライアの動き、そして攻撃力はかなり上がっていた。
「まだまだ攻撃は終わらないわよ!」
ライアの攻撃は長く続いた。大きなダメージを負ったアオテンジョウは苦痛の声を上げたが、それでもライアは攻撃を止めなかった。
「これで……おしまい!」
と言って、ライアは攻撃の締めとして、アオテンジョウを蹴り上げた。空高く舞い上がったアオテンジョウはゆっくりと空を動き、そのまま海へ落ちて行った。
「卑怯なことをするから、そうなるのよ!」
海に落ちたアオテンジョウに向かって、ライアはこう叫んだ。
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