残るメダルを探しに
マジハンド島の港。サマリオとメリスはシーポリスの船に乗っていた。
「では、私たちも忙しくなるからしばらく会えなくなるが、また元気で会おう」
「また一緒に行動できる日を楽しみに待っています!」
サマリオとメリスはそう言って、カイトたちに向かって手を振った。カイトも笑顔で手を振り返し、セアンは両手で手を振っていた。しばらくして、サマリオとメリスを乗せたシーポリスの船は出港した。
「さて、私たちも支度をして出港しますか」
「そうだな」
「ええ。早くしましょう。あいつらも動くかもしれないし」
カイトたちはそう話をして、宿へ戻った。
翌日、支度を終えたカイトたちはヴィーナスハンドに戻り、出港した。カイトは船の外で空を見上げながらため息を吐いた。
「考えれば、もう二年か……」
カイトの姿を見たライアがカイトの様子に気付き、近付いた。
「どうしたの、カイト?」
「ああ。ウイークが殺されて二年が経ったんだなって」
カイトの言葉を聞き、ライアははっとした表情になって、すぐにしんみりとした表情になった。
次の目的地はメダルがあるドンパチ島なのだが、マジハンド島とドンパチ島の間にウイークの故郷があるため、そこでウイークの墓参りをすることになったのだ。
「あの前に俺はロスの野郎に倒されたから状況が分からなかったけど……ソンウクから話を聞いて、かなり動揺したよ」
「え? ソンウクもウイークが殺されたことを知っているの?」
「ああ。魔力を感じたらしい」
「二人で何の話をしてるのー?」
ここでセアンとラージュがやってきた。ライアはウイークの話をしていたと言い、ラージュは小さく返事をした。
「そうだったのね。ウイークの故郷……どんな感じなのかしらね」
「え? 行ったことがないのか?」
「ないない。前にウイークから誘われたけど、行く暇なかったから」
「で、始めて行く理由が……はぁ」
セアンは深いため息を吐いた。そのため息を見て、カイトも少し切なくなった。
数時間後、カイトたちはウイークの故郷の島に到着した。船に降りたカイトは周囲を見回し、何かないか調べた。すると、見覚えのある女性がいた。
「え? あれって……」
その女性はカイトたちの存在に気付き、駆け寄った。その女性の顔を見て、カイトはその女性がサディであることに気付いた。
「皆、久しぶり!」
「サディ! 元気だった?」
「うわー、久しぶりー!」
セアンたちもサディに気付き、歓喜の声を上げた。サディはカイトたちを見回し、驚いた表情をした。
「皆、たくましくなってるね。この二年で修行したの?」
「うん。そんな感じね」
ケアノスがそう答えると、サディはすぐに口を開いた。
「今日はあいつの墓参りにきたのね」
「そう。で、ウイークのお墓ってどこ?」
「案内するわ。港から少し歩いた場所にあるから」
その後、サディと共にウイークの墓へ向かった。港から歩いてニ十分。カイトたちは小さな村に到着した。
「ここが私たちの故郷」
「ほへー、静かでいい所だねー」
ライアは村を見回してこう言った。その中で、一回り大きい建物を見つけた。
「結構大きい建物があるけど」
「私たちがいた孤児院。ウイークが今まで捕らえた海賊の賞金や宝で大きくなったの」
この言葉を聞き、カイトはウイークが孤児院のために義賊海賊をやっていたことを思い出した。
「なぁ、孤児院って今どうなってるんだ? ウイークが援助をしていたんだけど、今は……」
「大丈夫。今は私たちが代わりにやってるわ。今、私たちはシーポリスで働いているから、お金に関しては問題ないわ」
サディの言葉を聞き、カイトは納得した。
カイトたちは村の外れの墓場にいた。セアンたちはどこにウイークの墓があるか調べたが、サディがセアンの肩を叩いてこう言った。
「あいつはあそこにいるわ」
セアンはサディが指を指す方向を見て、目を開いて驚いた。ウイークの墓はかなり大きく、目立っていたのだ。
「あ……ありゃま。大きいな」
「あれじゃあ目立つわねー」
「なんであんなに大きいの?」
「孤児院だけじゃなく、村にもお金を入れていたからね。村の恩人、ヒーローとして目立って大きい墓にしようって話になったのよ」
「にしても大きすぎだろ」
カイトはウイークの墓に近付き、お線香を立てようとした。だが、墓にはいろいろと文字が書かれていた。なんて書いてあるかカイトは読むと、目を丸くした。
「これ、誰が書いたんだ?」
「村の人や、子供たち。皆、なんだかんだであいつを慕っていたし」
ウイークの墓に書かれていたのは、村の人からのメッセージだった。だが、中には罵倒する文章があった。
「おいおい、バカ野郎とか浮気クソヤロウとか書かれてるんだけど」
「罵倒分は私たちウイークファミリーが書いたのよ。私たちを残して死んだバカ野郎に文章を送るとしたら、罵倒で十分だって」
サディは小さく笑いながらこう言った。この笑みを見て、カイトはウイークの扱いは死んでも変わらないと思った。そんな中、セアンがマジックペンを取り出して文章を書いた。
「ちょっとセアン! 何やってんのよ!」
「私たちもウイークにメッセージを残そうよ。あいつも喜ぶと思うし」
「それもそうね。セアン、次私に貸して」
コスタがこう言った後、ライアやラージュもセアンに近付いた。呆れてため息を吐くカイトとケアノスだったが、サディは二人にペンを渡した。
「二人もどうぞ。好き勝手に罵倒文を書いていいから」
「よくねーだろ、そんなことをしたらウイークに祟られるよ」
「あいつが祟ってきたら、塩水ぶっかけて成仏させてやるわ」
サディは笑いながらこう言った。そして、無理矢理カイトとケアノスをウイークの墓に移動させた。
「はぁ、仕方ないわね」
ケアノスはそう言って、安らかに眠ってね。と、文章を書いた。カイトは仕方ないと思いつつ、ペンを手にして文章を書いた。
「なんて書いたの?」
サディにこう聞かれ、カイトはこう答えた。
「俺たちを見守ってくれ。まぁ、俺は皆みたいな変なことを書く気にはならないから」
「フフッ、カイトらしいわね」
サディはいろいろと書かれたウイークの墓を見て、小さく笑いながら墓に手を触れた。
「よかったわね、バカ船長。今でも皆があんたのことを思ってくれるなんてね」
「よくねーよ。こんなこと書かれたら、化けて出るだろうが」
突如、サディの耳にこんな言葉が聞こえた。サディははっとした表情になり、後ろを振り向いた。だが、そこには何もいなかった。
「サディ、どうかしたの?」
セアンがこう聞いたが、サディは顔を振ってこう言った。
「ううん。何も。空耳だったみたい」
ガーティブはパソコンを使って作業をしていた。耳にしているヘッドホンからは、部下の声が聞こえた。
「では、我々はドンパチ島へ向かえばいいのですね?」
「そうです。そこに全知の剣の封印を解くメダルの一つがあるようです」
「そうなんですか。我々はメダルを手にし、ガーティブさんに渡せばいいんですね?」
「その通りです。ただ、ドンパチ島に住む人はそれなりに強いと聞いています。もし、戦いになったら殺しても構いません」
「分かりました。殺しがいいのなら、部下もやる気を出すでしょう」
「そうですね。では、仕事の方をお願いします」
「了解です。いい返事を待っていてください、ガーティブさん」
と言って、部下は電話を切った。話を終えた後、ガーティブは深く息を吐き、リラックスしていた。
「いよいよメダル争奪戦が始まるのか……変なことが起こらなければいいんだけどな」
ガーティブは小さく呟き、大きなあくびをした。
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