二年後のブラッディクロー
ガーティブは会議室に到着し、パソコンの電源を入れ、ビデオの電源を入れて会議の支度を始めた。パソコンのモニターには、不機嫌な表情のリラゴが映った。
「リラゴさん。どうしてそんな顔をしているんですか?」
ガーティブはおどおどとしながらリラゴにこう聞いた。リラゴが机を強く叩く音がスピーカーから聞こえた。
「あんたらが遅いからだよ! 会議するっつったら秒で支度しな!」
「いきなり会議って言われても、すぐに支度はできません。それより、ロスさんは?」
「あんにゃろーから連絡がこないんだよ。あんたより先に連絡したんだけどねぇ」
リラゴがため息をすると、もう一つのモニターが現れ、ロスの顔が映った。
「ういーっす。こんな時間から会議なんて何かあったのか?」
ロスはこんなことを言っていたが、モニターからは見知らぬ女性の喘ぎ声が聞こえた。リラゴはイラつき、大声で怒鳴った。
「このバカ野郎! 風俗店で会議するな!」
「大丈夫大丈夫。この子は俺の部下の海賊船の子だから」
「じゃあ早くことを済ませろ! こんな状態で会議するな!」
「いいじゃないか」
「よくねーよ! 耳障りなんだよ!」
リラゴの叫びを聞き、ロスは一度モニターを消した。それから数分後、再びモニターが現れロスの顔が映った。
「終わったよーい。それじゃ、会議を始めますか」
「このクソ野郎、テメーのせいで時間が長引いたっつーのに」
遅れたくせに笑っているロスを見て、リラゴは腹が立った。そんな中、ガーティブが寝ていることを知ってリラゴはわざと大声を出し、ガーティブを起こした。
その後、ブラッディークローの幹部たちは会議を始めた。リラゴは特殊なメールを使い、ガーティブとロスに資料を渡した。
「今、あんたらのパソコンに資料を渡した。まず最初にそれを見な」
ガーティブとロスはメールを見て、小さな声で驚いた。
「ピラータ姉妹が動き出したんですか……」
ガーティブはカイトとセアンの顔を思い出しながら呟いた。ロスはコーヒーを飲み、口を開いた。
「俺がコテンパンにやっつけたっつーのに、復活したのか」
「ガーティブ、あんたのところの配下の……クラッチハートだっけ? そいつらを倒したようだよ」
リラゴの話を聞き、ガーティブは声を出した。
「会議前にクラッチハートから連絡がないことを聞きました。彼らがやったんですね。でも、クラッチハートの船員もかなり強い部類なんですが……」
「あいつらは修行をしていたんだよ。メールに添付されている写真を確認したか?」
リラゴの口から写真の存在を聞かされ、ガーティブは写真を確認した。写真には鍛え直した武器で戦うセアンたちと、多少体に筋肉が付いたカイトの姿があった。
「今確認しました。どこかで武器を直して、鍛えたんでしょう」
「この二年間、あいつらは態勢を立て直したってわけだ。どこかのスケベ野郎がしっかりとあいつらを殺していればこんなことにならなかったのに」
この言葉を聞き、ロスは目をそらした。
「ロスさん、僕はあなたを責めませんよ」
「すまないガーティブ……」
ロスはガーティブの方を見て、頭を下げた。リラゴは舌打ちをした後、話を始めた。
「今後について話すよ。これから私たちが行いたいのは全知の剣のメダルを手に入れ、全知の剣を粉砕する。そして、ピラータ姉妹とシーポリスを潰すことだ」
「そうですね。あの子たちは僕たちのボスを探し出すため、全知の剣を探しています。先にメダルを集めて全知の剣をどうにかしないと、ボスも不安でしょう」
「そうか? 俺は一度あの人に会ったが、不安そうには見えなかったな」
ロスの言葉を聞き、リラゴは少し驚いた。
「何? 一度ボスにあったのかい? 私とガーティブが最後にボスと話したのは数年前だってのに」
「偶然にね。ま、相変わらず元気そうだったよ」
ロスはそう言って笑うと、咳ばらいをして口を開いた。
「メダルのことについては地道にやろうぜ。確か、こっちが持っているメダルは五枚だっけ?」
「そうだよ。残りのメダルについては分からないが」
「もしかしたら、ピラータ姉妹かシーポリスが持ってるかもしれないぜ」
この言葉を聞いたリラゴの表情が少しだけ変わった。ガーティブは紅茶を飲み、リラゴにこう言った。
「ピラータ姉妹は全知の剣の存在を知って、動いています。そのことをシーポリスにも伝えた可能性もあります」
「そうかい……面倒なことになりそうだねぇ」
「面倒? 俺はそうは思わないぜ。取られたら奪う。それが海賊のやり方じゃないか」
笑いながらロスはこう言った。リラゴはその言葉を聞いてにやりと笑った。
「確かにね」
その後、リラゴの後ろからリラゴの部下が現れ、敬礼をしながら叫んだ。
「会議中申し訳ありません! 敵対する海賊組織が襲ってきました!」
「分かった。それじゃ、会議はこれで終わり。私は今から戦いに行くから」
と言って、リラゴのモニターが消えた。ロスはあくびをしながらガーティブにこう言った。
「会議は終わりだね。ガーティブ、今後お前さんはどうするんだい?」
「僕はメダル集めを行います。配下を使っていますが、すぐに集まるかどうかは分かりません」
「そうかい。それじゃ、俺は今まで通り自由にしますかっと」
「リラゴさんに見つからないようにお願いしますね。会議になったら、僕の方にも被害が及びますので」
「そんなこと言うなよ。ガーティブ、また会おうぜ」
ロスは手を振りながらそう言ってモニターを消した。ガーティブはパソコンをシャットダウンし、船の上に出た。ガーティブの部下がガーティブの姿を見て、急いで駆け付けた。
「ガーティブさん。捕らえられたクラッチハートの処分はどうしますか?」
「近くにいるディスターソースに任せるよ。いざとなったら、あの人たちを運んでいる船を沈めてもいいから」
「分かりました!」
部下は返事をした後、ディスターソースに連絡するために去って行った。ガーティブは自分の椅子に座り、空を見ながら呟いた。
「ピラータ姉妹……再び動いても何もいいことはないのに」
マジハンド島にて、クラッチハートとの戦いを終えたカイトたちが島の宿にいた。
「はぁ……疲れた」
カイトは治療を受けながらこう呟いた。そんな中、包帯が背中に触れ、痛みが走った。
「ツッ!」
「あっ、すみません! 大丈夫ですか!」
「ああ……大丈夫です」
カイトは治療するシーポリスの戦士にこう言った。ムイジによって岩盤に叩きつけられたせいで、背中に大きなダメージを負ってしまったのだ。
「結構大きなダメージですね。背中が変色しています」
「強く岩盤に叩きつけられたんで」
カイトは笑いながらこう言った。すると、隣の部屋からセアンが出てきた。
「カイト、背中が酷いことになってるって聞いたけど」
この言葉を聞いたカイトは、セアンが自分を庇ったせいで傷を負ったと思っていると察した。
「俺は背中が見えないからどうなっているか分からないけど」
「ちょっと待って」
セアンはカイトの後ろに回り、背中の傷を見た。
「酷い傷……あの時、私を守ってくれたから……」
「鍛えたからそこまで痛くないよ。心配しないでくれ」
カイトはセアンを安心させるため、笑顔でこう言った。だが、セアンは魔力を発し、カイトに抱き着いた。
「せ……セアン?」
「新しい魔力の治癒を使ってみるね。こうやって魔力を解放しながら治したい人に抱き着くと傷が治るんだよ」
セアンの言う通り、背中の痛みは徐々に治まった。
「すげぇ」
カイトは驚きながらこう言ったが、痛みが治った状態でもセアンはカイトに抱き着いていた。しかも、胸を押し当てていた。
「なぁ、傷は治ったんだが」
「ぐひひー、お兄さんいい背中しているねー」
セアンは笑いながらこんなことを言っていた。カイトが呆れる中、隣の部屋からケアノスが現れ、セアンに拳骨を放った。
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