サマリオの援軍
イコルパワーの力によって巨大化したムイジだったが、カイトたちの敵ではなかった。カイトたちは力を合わせてムイジに攻撃を仕掛け、大きな傷を与えていた。
「グウッ……うう……」
何度も攻撃を受け続けたせいか、ムイジは苦しそうな顔になっていた。それに対し、カイトたちはまだ戦える様子を見せていた。
ピラータ海賊団。こいつらの強さは予想以上だ。
そう思ったムイジは、もう一本イコルパワーを使おうとした。そのことを察したカイトたちは一斉攻撃を仕掛けたが、それより先にムイジは二本目のイコルパワーを注入した。
「こりゃーやばいことになりそうだね」
セアンは冷や汗をかきながら、ムイジの様子を見ていた。カイトは刀を持ち、動き始めた。カイトはムイジの体に異変が起こる前に戦いを終わらせようと考えたのだ。
「これで終わりにしてやる!」
カイトは渾身の力を込めて刀を振るったが、ムイジは左手でカイトが振り下ろす刀を受け止めた。
「んなっ!」
攻撃を受け止められたカイトは、ムイジを見て驚きの表情となった。そんな中、ムイジはカイトの方を見て、冷静な笑みをしながらこう言った。
「見えるぞ。お前の攻撃が!」
と言って、ムイジは左手を握り締め、カイトの刀を掴んだ。このままだと何かされると察したカイトは魔力を解放し、刀から手を放して後ろに下がった。
「相棒を捨てたか」
「捨ててねーさ」
冷めた目で言葉を放ったムイジに向かってカイトはこう言うと、刀の握り手に向かって水を放った。水が刀の握り手に命中したのを確認したカイトは、水を引っ張って刀を手元に戻した。勢い良く動く刀を見て、ムイジは驚いたが、すぐに表情を戻した。
「それなりに頭は動くようだな」
「力だけじゃこの世界で生きていられねーんでな」
カイトがこう言うと、後ろからセアンがハンドガンを使い、ムイジに攻撃を仕掛けた。ムイジは飛んでくる弾丸を両手で撃ち落としたが、セアンの攻撃に合わせてケアノスとライアが動いていた。
「これでも」
「喰らえェェェェェ!」
ケアノスはレイピアに魔力を込めてムイジの頭を攻撃し、ライアはムイジの体に向かってナイフを振るった。攻撃を終えたケアノスとライアはカイトの元まで後ろに下がった。
「きついわね。あいつの体、かなり固くなってるわ」
「イコルパワーがここまで強くなってるの、予想外だったね」
「俺たちが修行をしている間、あいつらもイコルパワーを改良していたようだな」
カイトとケアノスとライアは話をしている中、コスタがムイジに向かって発砲した。
「フン。そんな弾丸じゃあ俺の体を貫くことはできないぞ」
と言って、ムイジは飛んでくる弾丸を右手で払って落とそうとしたが、ラージュが大剣を構えて上から現れ、コスタが放った弾丸に向かって大剣を振るった。
「勢いを強くしたら、あんたの体を貫くことはできるかもね」
ラージュの言葉を聞いたムイジは、目を丸くして驚いた。その直後、ラージュの助けによって勢いを増した弾丸は、物凄い速さでムイジの体を貫いた。
「ウグオッ!」
弾丸を受けたムイジは苦しそうな顔をして片膝をついた。その直後、カイトが刀を使って攻撃を仕掛けたが、ムイジに傷を与えることはできなかった。
「グッ、相当な魔力を使わないとダメージを与えられないか」
「残念だったな、小僧!」
ムイジはそう言ってカイトに攻撃を仕掛けようとした。だがその直後、無数の発砲音が響き、無数の弾丸がムイジを襲った。
「やっときたわね」
発砲音を聞いたコスタは安堵の息を吐いた。周囲には、銃を持ったシーポリスの戦士たちが立っていた。
「援護は一度止めろ。あとは私とメリスで攻撃を仕掛ける!」
「行きましょう、サマリオさん!」
上にいたサマリオとメリスが武器を構え、ムイジに向かって高く飛び上がった。そして、ムイジに攻撃を仕掛けた。
サマリオの姿を見たカイトは、攻撃を終えたサマリオに近付いた。
「サマリオさん! 久しぶりです!」
「カイト君か。たくましくなったね。メリスから聞いたよ」
サマリオは笑みを浮かべながらカイトに近付いた。カイトは笑って返事を返すと、周囲を見回した。
「あれ? ツリーさんは?」
「船の中で引きこもってる。また、戦いが怖くて逃げてるんだろう」
「あの人は変わらないですね」
「ああ」
呆れたようにカイトとサマリオがこう言った直後、ムイジが立ち上がって魔力を解放した。
「戦いはまだ終わってないぞ! 油断しているな、このまま殺してやる!」
ムイジはサマリオに接近して攻撃を仕掛けたが、セアンとメリスがムイジの前に現れた。
「痛い目に合うのは」
「あんたの方よ!」
と言って、セアンとメリスは同時に攻撃を仕掛けた。二人の攻撃には魔力が使われているため、威力が上がっていた。
「グオッ!」
攻撃を受けたムイジは後ろに下がり、ゆっくりと倒れた。そのタイミングを狙っていたケアノスはムイジの腹に向かってレイピアを突き刺した。
「グファッ!」
「本当にこの一撃で終わってほしいわね」
攻撃を終えたケアノスはそう言って、ムイジから離れた。致命傷を突かれたと思ったライアは、戦いが終わったと思っていた。
「ふぃー、これで終わったね。サマリオ、メリス。それにシーポリスの皆。助けに来てくれてありがとう!」
ライアは笑って手を振った。シーポリスの戦士も戦いが終わったと思い、ライアに手を振り返していた。だが、倒れたはずのムイジがゆっくりと起き上がった。
「え? フゲェッ! あの一撃で倒れたと思ったのに!」
「この一撃で倒れるわけがないだろうが!」
ムイジはそう言ってライアに襲い掛かった。シーポリスの戦士たちがムイジに向かって銃で攻撃を始めたが、放たれた弾丸はムイジの体を貫くことはできなかった。
「そんな弾丸じゃあ俺の体を貫くことはできぬ! ピラータ姉妹を殺したら、お前たちを殺してやるからなァァァァァ!」
ムイジはそう言ってライアに攻撃を仕掛けた。大きな左手がライアに向かって振り下ろされる中、カイトがライアの前に立ち、刀でムイジの攻撃を受け止めた。
「ライア、今のうちに逃げろ!」
「うん!」
ライアはすぐに後ろに下がり、風を使ってムイジに攻撃を仕掛けた。ライアが放った風はムイジの顔に当たり、細かい傷を与えた。
「ウグオッ! ふざけたことを!」
「サンキュー、ライア!」
カイトはさっきの攻撃が自分を助けるためだと察し、すぐにムイジから離れた。その直後、魔力を解放したセアンとラージュがムイジに向かって飛び上がり、攻撃を仕掛けた。
「ングッ! ムオオオオオ!」
攻撃を受けたムイジは後ろに吹き飛んだ。巨体となった自分の体が簡単に吹き飛ぶなんてと、ムイジは思いながら後ろの壁に命中した。
「あの巨体を吹き飛ばしたか。かなり力を付けたな、セアン、ラージュ」
サマリオはセアンとラージュにこう言ったが、二人は表情を変えなかった。
「褒めてくれてうれしいけど、まだ戦いは終わってないよ」
「あのデカブツ、まだ動くわよ」
セアンとラージュがこう言った後、我に戻ったムイジは壁を強く蹴り、その反動でカイトたちの元へ戻った。
「俺を本気にさせたな。本気にさせたことを深く後悔させてやるぞ」
「なーに格下の海賊みたいなことを言っているのよあんたは? あんたみたいな奴が本気を出しても、私たちを倒すことはできないっての」
「いい加減私たちの言うことを聞いて大人しくしなさい。あんたは私たちに勝てない」
セアンとメリスがこう言ったが、ムイジはその言葉を聞き流し、三本目のイコルパワーを手にした。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




