表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
333/430

怒りの一撃


 攻撃手段を失ったピンセを遠くから見ていたクラッチハートの船員の一人、リーノは二本の剣を構えながら唾を吐き、こう言った。


「ケッ、役に立たねー女だな。武器を失って降参するんだったら、捨て身で突っ込めっての」


「それじゃーあんたはそうするってわけ?」


 空から聞こえる声を聞き、リーノは上を見上げた。そして、大剣を振り下ろしながら落下してきたラージュを睨んだ。


「危ない子だねぇ。ま、ピンセの奴より若いからいいってことにしてやんよ」


「おじさんが上から目線で偉そうにほざくんじゃないわよ」


 ラージュは大剣を構え直し、大剣を横に振るった。自身に迫る大剣を見て、リーノは二本の剣で攻撃を受け止めた。金属のぶつかり合う音を響かせながら、リーノは高く飛び上がった。


「あっぶねー、下手したら俺の上半身と下半身が離れ離れになっちまうところだったぜ」


「そこまでしないけど……あんたの場合はその位しないと気が済まないわね」


 攻撃を終えたラージュは大剣を構え、後ろに下がったリーノを睨んだ。


 さてと、こちらも攻撃を仕掛けないと。


 そう思ったリーノは魔力を解放し、周囲に風を発した。これでラージュが近付いても、周りに発生している風の刃でラージュを斬り刻むことができる。リーノはそう思いつつ、ラージュをどう倒そうか考え始めた。そんな中、ラージュも魔力を解放し、大剣を持ってリーノに向かって走っていた。


「おいおい、俺に近付いたらズタズタになっちまうってのによぉ!」


 周りにある風の刃を見せびらかすようにリーノはこう言ったが、ラージュの大剣はリーノが放つ風の刃をかき消し、剣先がリーノの腹に命中した。


「グフッ!」


 このまま攻撃を受けると致命傷を負うと察したリーノは、とっさに魔力を破裂させ、その勢いで自身の体を後ろへ吹き飛ばした。この行為のおかげで大きなダメージを負うことはなかったが、勢いをつけすぎて船から離れてしまった。


「ヤベッ、やりすぎた!」


 このままだと落ちると思ったリーノは、再び魔力を解放して船の上に戻った。ラージュはその隙を見計らい、船の上に着地したリーノに向かって大剣を振り下ろした。着地の隙に攻撃をされると考えていたリーノは左手に持つ剣に強い魔力を込め、迫る大剣を受け止めた。


「グウッ!」


 攻撃を受け止められたラージュは思わず苦しい声を漏らした。強い力、そして魔力を込めて攻撃を放ったが、たった一本の剣で攻撃を受け止められてしまったのを見て、悔しさを感じたのだ。その時のラージュの表情を見たリーノはにやりと笑い、こう言った。


「残念だったなぁ! 俺ぐらいに強くなると、一本の剣で大きな攻撃を受け止めることができるんだよ! 他の甘ちゃん剣士と一緒にすんなぁ!」


 叫びながらリーノは右手に持つ剣をラージュに向かって振るった。ラージュは大剣の向きを変えて右手の剣の攻撃を防いだが、リーノは動けるようになった左手の剣を動かし、ラージュに向かって突き刺した。


「ツッ!」


 リーノの左手に持つ剣は、ラージュの右肩を突き刺した。だが、大きなダメージを与えることはできなかった。


「チッ、刺さった直後に魔力を解放して治癒速度を上げやがったか」


 ラージュの右肩から剣を抜いたリーノは、舌打ちをしながら呟いた。ラージュは左手に魔力を出し、傷を受けた右肩の治癒を行った。


「はっ! 相手を前にしてのんびり治療か? んなことさせねーっての!」


 剣を構え直したリーノは、ラージュに向かって走り出した。だが、ラージュはすぐに治癒を終えて、大剣を振るった。


「何!」


 予想外の行動を見て、リーノは思わず動きを止めてしまった。この隙に攻撃を受けてしまい、リーノは大きく吹き飛んだ。




 コスタはヴィーナスハンドで援護をする中、船内で電話が鳴り響いたのを察し、急いで受話器を手にした。


「もしもし?」


「コスタ? よかった、ようやくつながった」


 電話の相手はメリスだった。コスタは周りを見ながら、口を開いた。


「今、クラッチハートと戦闘中。まともに返事できない状況があると思うけど……」


「すぐに終わるわ。今、マジハンド島の近くにいるの。そっちに行くから」


「援護ね。分かった、ありがとう」


 電話はすぐに終わった。メリスたちが援護にくることを知ったコスタは嬉しそうな顔をしていた。




 ラージュの一撃によって吹き飛ばされたリーノは、壁にめり込んでいた。壁から動こうとしたリーノだったが、ラージュが追撃のためにリーノの近くに接近していた。


「グッ……クソッたれが……やるじゃねーか」


「上から目線で何を言っているのよ? あんたが弱すぎるだけよ」


「俺が弱い? ハッ、俺を弱いって言うんじゃねーよ。だったら、あいつはどうなんだよ? お前らのくたばった連れ……確か、ウイークって言ってたな?」


 ウイークの名を聞き、ラージュの動きを止めた。リーノはその隙にラージュに飛びかかって押し倒し、上乗りになった。


「はっはー! 隙だらけだぜ! 見つけたぜ、お前の弱点! ウイークって奴の名前を聞けば隙をさらすようだな! ロスさんにぶっ殺されたあんな雑魚野郎のことを気にしていたのか? 弱い奴が強い奴の手によって惨めにぶっ殺される! 当然のことだろうがぁ! まぁ、あんな奴より俺の方が強いんだけどなぁ!」


 この言葉を聞き、ラージュが発している雰囲気が変わった。悪寒を感じたリーノは、反射的に後ろに下がった。


「今の言葉、取り消しなさい。もし……取り消さないのなら、半殺しにするわよ」


 ラージュはそう言って、大剣を構えた。魔力を発していないが、リーノはラージュから恐ろしいものを感じた。


「は……はっ! そんな雰囲気を纏っても、俺には通用しねーよ!」


 リーノは動揺しつつも、ラージュに向かって走り出した。ラージュは素早く大剣を振り上げ、リーノに攻撃を仕掛けた。


「なっ……」


 今のラージュの攻撃を、リーノは見切ることはできなかった。ラージュの大剣の剣先は、リーノの左腕の筋を斬っていた。


「な……うがああああああああああ!」


 滝のように流れる血を見て、リーノは痛みと恐怖を感じながら悲鳴を上げた。流れる血を抑えようとリーノは左腕を抑えたが、流れる血の量は変わらなかった。


「なっ……ああ! あああああ!」


「今度は右腕も同じ目に合わせてあげるわ」


 と言って、ラージュはリーノの右腕に向かって剣を振るった。攻撃を受けたリーノは後ろに転がるように倒れ、左腕と同じように右腕から血が流れていることを知った。


「クソ……」


 リーノは立ち上がり、腕を動かそうとした。しかし、さっきまで感じていた痛みを感じず、腕も動かない。完全に両腕が使えなくなったとリーノは察した。


「マジかよ……腕が動かない……」


「筋を斬ったからね。あんたの腕はもう動かないわよ」


 大剣を持ったラージュは、リーノの前に歩いた。リーノは声を上げながら、ラージュの前で頭を下げた。


「すまない! 俺が悪かった! 降参する、これ以上お前と戦わない!」


 無様な姿で頭を下げるリーノを見て、ラージュはため息を吐いた。助かったと思ったリーノだったが、目の前の光景を見て言葉を失った。


「悪いけど、どれだけ頭を下げても……あんたのこと、許さないから」


 ラージュはそう言って、魔力を込めてリーノに向かって大剣を振り下ろした。




 激しい破裂音を聞いたムイジは、また一人仲間が倒れたことを察した。


「まずいな……このままだと全滅か……」


 危機感を持ったムイジは外を見て、この状況を察したブラッディークローとつながっている海賊が来ているのではないかと考えた。だが、船は見つからない。なら、援護を要請すればいいのではと思ったが、連絡をしてもいつ援護がくるか分からず、援護がくる前に耐えられるかどうか分からない。どう考えても、この状況を覆すことはできないのだ。


 仕方ないのか?


 そう思ったムイジは、イコルパワーを見つめた。


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ