予想外の武器
ムイジはピンたちが倒されたのを察し、急いで周りを見ていた。カイトたちの戦闘能力が予想よりも高いと思い、この状況をどう打破するか考えていた。しかし、周りにいる慌てる部下たちの声がムイジの思考の邪魔をした。
「うわァァァァァ! このままだとやられっちまう!」
「ピラータ海賊団がこんなに強いなんて思わなかったよ!」
「どうすりゃーいいんだ? マジでどうすりゃーいいんだぁ!」
何もできず、騒ぎ立てる部下たちの声を聞いたムイジは苛立ち、手にしていた銃で天井を撃った。発砲音を聞いた部下たちは驚き、動きを止めた。
「静かにしろ。この状況をどう打破するか考えているんだ。テメーら、何もできずギャーギャー騒ぐんだったら、戦ってこい」
「船長、お言葉ですが、我らの力じゃああっという間に倒されます!」
「そんなのやってみないと分からないだろうが。さっさと行ってこい! 騒ぐ元気があるなら、戦うこともできるだろうが!」
と言って、ムイジは無理矢理部下たちを部屋から追い出した。静かになった部屋の中で、ムイジは懐からイコルパワーを取り出した。
こいつを使うしかないか? こいつを使えば、俺は死ぬかもしれないが、仲間は助かるのか?
イコルパワーを見ながらムイジはこう思った。イコルパワーの恐怖をムイジは知っている。今、手元にあるのは売るためであり、使うためではない。どうしようかと思いながら、ムイジはため息を吐いた。
ケアノスは迫りくるクラッチハートの船員を倒しながら周囲を見ていた。カイト、セアンは強敵との戦いを終えて援護に入り、コスタも援護射撃を再開していた。
この様子だと、しばらくすれば戦いが終わるわね。
そう思ったケアノスは攻撃を再開した。そんな中、さっきを感じたケアノスはレイピアを構えた。次の瞬間、布のようなものがケアノスを襲った。ケアノスはレイピアで布のようなものを攻撃したが、レイピアの刃が当たる寸前に布は戻った。
「一体何なの?」
「チッ、攻撃を予測しやがったか。勘がいい奴だな」
そう言いながら三十代くらいの男がケアノスの前に現れた。男は右手に持っている布を振り回し、ケアノスを睨んだ。今の攻撃はこの男だと察したケアノスは、レイピアの刃を男の方に向けてこう言った。
「あんたの攻撃ね。私をやるつもり?」
「そのつもりだ」
男はそう言うと、魔力を解放した。すると、男が手にしていた布に火が付いた。
「そんなことをしたらその布が灰になるわよ」
「特殊な素材でできている。灰にはならない。灰になるのはお前だ!」
男は叫びながらケアノスに攻撃を仕掛けた。ケアノスは飛んでくる布を見て、レイピアを振るった。レイピアの刃は布に当たったが、そのまま意志を持ったかのようにレイピアの刃に付着した。
「魔力で布を操っているわね」
「その通り。この俺、セロハンにとって最高の相棒だ。これでお前を殺すことができる!」
セロハンは布を引っ張り、ケアノスを引き寄せた。引き寄せたケアノスを攻撃するため、セロハンは左手に魔力を込めていたのだが、ケアノスは引っ張られた衝撃を利用し、勢いを付けてセロハンを殴った。
「グオッ!」
「悪いけど、私の武器はレイピアだけじゃないわ」
殴り飛ばされたセロハンを見て、ケアノスはこう言った。セロハンはすぐに立ち上がり、布を振り回してケアノスに接近した。
「この女! これでも喰らいやがれ!」
セロハンは火が付着した布でケアノスに攻撃を仕掛けた。まるで鞭のような動きだとケアノスは思いながら、攻撃をかわしていた。だが、この攻撃の隙がないことを察し、どうしようか考え始めた。
「俺の攻撃に隙はない! 今のお前に、俺に勝つことはできない!」
と言って、セロハンは更に魔力を込めた。すると、付着している火が強くなった。ケアノスは攻撃範囲がでかくなったと察し、後ろに下がった。
「そーらそらそら! これで俺の攻撃を避けることはできなくなったなぁ!」
ただ避けるだけのケアノスを見て、セロハンは笑いながらこう言った。笑うセロハンを見たケアノスは呆れたようにため息を吐き、こう言った。
「まるで自分が勝ったかのように笑っているわね」
「そりゃーそうだ。お前は俺の攻撃に対して何もできない。避けるだけじゃないか」
「勝つためには何でもするわ。それに、そんなあっつい炎を受けたら火傷するじゃない。火傷したくないわよ」
ケアノスはそう言って、魔力を少しだけ解放した。セロハンはケアノスの魔力を感じ、再び笑った。
「その程度の魔力しかないのか?」
「この程度の魔力であんたを倒すわ。あんたみたいな雑魚、本気を出して戦う価値もないわ」
この言葉を聞いたセロハンは怒りを覚えた。避けることしかできないケアノスが、自分のことを雑魚と言ったからだ。
「雑魚に雑魚って言われたくねーなぁ」
「本当のことを言うと人は怒ると言うけれど、本当のようね。とりあえずぶっ飛ばされる覚悟を決めなさい」
ケアノスはセロハンに向かってこう言うと、挑発をするように手を動かした。セロハンは布を振り回し、ケアノスに向かって放った。
「そのふざけたことを言う口を永遠に動かなくしてやる! 俺の技を喰らって死ねェェェェェ!」
怒りのセロハンが振り回す布は、ケアノスに向かって飛んで行った。それを見たケアノスは、ため息を吐いてこう言った。
「最初は驚いたけど、分かってくると大した動きじゃないわね。布を振り回すことしかできないなんて、ただの道化ね」
ケアノスはそう言うと、素早くレイピアを振るった。その動きを見たセロハンは驚きのあまり、動きを止めてしまった。
「早い……早すぎる」
ケアノスの動きは目で追えないほどの早さだった。我に戻ったセロハンは布を見て、さらに驚いた。
「そんな、特殊な素材でできているのに、穴が開いている!」
穴だらけになった布を見て、セロハンは驚いた。そんな中、ケアノスがゆっくりと歩きながらセロハンの元へ近づいて行った。
「クソッ! これでもまだ戦えるぞ! 今度こそ、俺の攻撃を受けて死ね!」
セロハンはそう言って再び攻撃を始めた。
「そんなもんで私を倒せると思わないでよ」
ケアノスはレイピアを構えてこう言った。そして、再び飛んでくる布に向かってレイピアを振るった。この攻撃で、セロハンが持つ布はズタズタになり、使い物にならなくなってしまった。
「そんな……そんな……」
「ま、こんなもんよ。どんな攻撃を仕掛けても、強さに差があれば敵いっこないってわけ」
ケアノスはセロハンに近付いてこう言った。攻撃されると察したセロハンは左手に魔力を発し、地面を叩いて軽い爆発を起こした。しかし、ケアノスはレイピアを振るって発した煙を切り払い、セロハンの姿を確認した。
「悪あがきはしない方がいいわよ」
そう言った後、ケアノスはセロハンへ攻撃を始めた。素早く振り回されるレイピアの刃は、確実にセロハンに命中した。
「グワァァァァァァァァァァ!」
攻撃を受けるセロハンは痛みに耐えきれず悲鳴を上げた。ケアノスは一瞬だけ動きを止めて、次の攻撃を行うための動作を行った。この間にセロハンは逃げようとしたのだが、ケアノスは魔力を使って風を発し、逃げようとしたセロハンを自分の元へ吹き飛ばした。
「逃がさないわよ」
そう言って、ケアノスは二回目の攻撃を行った。
「クッ……クソがァァァァァ!」
攻撃を受け続けるセロハンは、悲鳴と共に悔しそうに叫んだ。しばらくして、ケアノスはレイピアに魔力を注ぎ込み、攻撃を受け続けてふらついているセロハンを睨んだ。
「これでぶっ飛びなさい!」
とどめの一撃として、ケアノスは魔力がこもったレイピアでセロハンを斬り飛ばした。攻撃を受けたセロハンは大きく上に吹き飛び、弧を描いて海へ落ちて行った。
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