サビナが狙われた理由
サビナの市役所でピラータ姉妹とカイトは偉い人の部屋に案内された。そこで復興のことやカイトのことの話をした。カイトが異世界からやってきたことを聞いた偉い人は最初、カイトのことを見て不審な表情をしていたが、セアンの説明を受けて納得した表情となった。
「そうですか。まぁいろいろあったわけですが、無事にこうやって話ができれば私は嬉しいです」
偉い人はそう言うと、ブラッディークローの襲撃のことを思い出すかのようにこう言った。
「あの時は酷かった。ですが、また前みたいに平和にしてやるという気持ちもありました。それは今も同じです」
「そうですね。だけど、あの時よりもサビナは復活しました。まだ、完全に復活したわけではありませんが」
「気落ちしないでください。これでも皆無事に生活できています。これも皆様のおかげです」
「ううん。私たちだけの力じゃないよ」
と、セアンは笑顔で偉い人に返事をした。それからまたサビナに関しての話が続いたが、カイトは話についていけなかったため、部屋の中を見回していた。そんな中、海の写真を見つけた。その写真にはサビナの海と崖が映っていた。波の動きや夕日の落ち具合のおかげで芸術品のような美しさになっていた。写真に見とれたカイトはじっくり見ようと近付いた時、何かに気付いた。崖の下の方に洞窟のような穴があったのだ。
「何だ、この穴? サンライト島の洞窟みたいだな」
「どうしたの、カイト?」
ライアが近付いてこう聞くと、カイトは崖の下の洞窟のことを話した。話を聞いたライアは写真に近付いた。
「本当だ。夕日と波に目が行って気が付かなかったけど、こんな所に穴がある」
「変な穴? どれどれ? どこにあるのー?」
話を聞いたセアンやコスタも写真を見始めた。洞窟の話を聞き、偉い人は何かを思い出したかのような表情をした。
「思い出しました。昔、この島には創造の力という宝石が眠っていると聞いたことがあります。昔の話なので、本当にあるのかどうか分かりませんが」
「創造の力? 何それ? 聞いたことがないけど」
「皆様が生まれた時にはそんな話はもう誰も忘れてしまったので……私も今、思い出したんですよ」
創造の力という宝石の話を聞き、ケアノスは少し考えて口を開いた。
「もしかして……ブラッディークローの奴らはそれを目当てに……」
ケアノスの言葉を聞き、偉い人は何かに気付いた。
「何らかの噂を聞いて、それを探しにこの島に……そして、あんなことを……」
話を聞いたカイトは、ある仮説を立てた。ブラッディークローの目的は創造の力。だが、いくら暴れても探しても見つからず、あきらめて帰った。誰もがその答えにたどり着いた。きっとそうだろうとカイトが思っていると、セアンが偉い人にこう聞いた。
「ねぇ、この写真をどこで撮ったか分かる?」
「しばらくお待ちください。他に何か目印になる物があれば思い出すかもしれません」
偉い人は写真を手にし、目を見開いて調べた。そして、場所を思い出した偉い人は急いでセアンたちにこう告げた。
「ここはセラーノ自然公園ですよ! 分かりますか? 海が近く、夕日の絶景として知られているあそこですよ!」
「ああ、あそこか! あんな所に洞窟があったなんて分からなかったなー」
「危険だから崖付近は立ち入り禁止にしていたのです。それよりも……皆様、後日そこへ向かうのですか?」
偉い人の質問を聞き、凛々しい表情のセアンはすぐに答えを告げた。
「うん。洞窟があってお宝があるとすれば、海賊として黙っていられない!」
セアンの言葉を聞き、コスタたちも頷いた。偉い人は写真を壁にかけ直しながら、セアンたちにこう言った。
「洞窟の存在は我々も把握していませんでした。内部がどうなっているのか分かりません。どうか、どうか無事に戻って来てください。そして、無理だと思ったら戻ることも選択の一つとして、入れておいてください」
「分かったよ。でも、必ず創造の力って宝石は手に入れて戻って来るから!」
と言って、セアンはウインクをした。
その日の夜。ヴィーナスハンドに戻ったカイトたちは船の中で洞窟探検の準備をしていた。
「サンライト島の洞窟みたいに亡霊のバケモンがいなければいいなー。キャプテンセバールだっけ? あのバケモン強かったからなー」
ライアはキャプテンセバールとの戦いを思い出しながら呟いた。その呟きを聞き、カイトは苦笑いでそうだなと答えた。カイトもキャプテンセバールみたいな対処法を知らなければ倒せない化け物とはもう戦いたくないと思っていたのだ。
「しかし、あそこに洞窟があるなんて知らなかったわねー。子供の頃、時間さえあればあそこでずっと遊んでいたけれど、全然気が付かなかったわ」
「本当にそうね。子供の頃は危険だからあそこには近付くなって言われていたから」
ラージュとケアノスの会話を聞き、セラーノ自然公園を知らないカイトはそのことを聞こうとした。
「なぁ、セラーノ自然公園ってどんな所だ? 公園ってついているから、遊具とかあるのか?」
「森みたいな所よ。だけど、散歩をする人や子供たちが遊びやすそうにちょっと場所をいじくったのがセラーノ自然公園よ」
「ブラッディークローの連中はあそこまでは行かなかったみたい。戦いの中で傷を負ったのか分からないけど、そこまで行く余裕がなかったようね」
「それだけお父さんとお母さんとの戦いが激しかったかも」
話を聞いていたセアンが、準備を終えて戻って来た。
「私はオッケーだよ。先にお風呂行っているねー」
「分かったわ。明日は朝早いから、なるべく早くお風呂から出てね」
「了解」
ケアノスの言葉に返事をした後、セアンは風呂場に向かった。
風呂場でセアンはシャワーを浴びながら、創造の力のことを考えていた。ブラッディークローの目的が創造の力で、その情報を無理矢理聞きだすために戦いを始めたのではないか? そう考えると、セアンは苛立ってきた。あるかどうかも分からない、ましてや今日初めて聞いた宝石を狙ってやって来たブラッディークローや、創造の力に対してセアンの中で怒りと憎しみが溢れ出てきた。
「あんなのがあったから……島やお父さんとお母さんは……クソッ!」
そう呟き、セアンは軽く壁を殴った。外では、心配したケアノスとカイトが立っていた。ケアノスは荒れているセアンの態度を見て、ため息を吐いた。
「深刻な顔をしていたけど、やっぱりいろいろ考えていたみたいね」
「ああ。俺たちの前でそんな態度を見せなかっただけか。俺たちに心配させたくなかったんだな」
船長と言う立場だが、たまに無鉄砲でお宝に目もないが、明るい性格のセアンも深く考えることや、怒りを爆発させることがあるのだなとカイトは思っていた。そんな中、ケアノスはカイトにこう言った。
「ねぇ、セアンを慰めてきて。私たちが行っても、多分無駄だと思うから」
「へ? この状況で? セアンは今シャワー浴びているけど」
「二人の方がいいでしょ。ましてや、全裸の方がセアンも喜ぶだろうし」
「いやいや、無理矢理入ったら流石のセアンも驚くって」
「セアンがあの状態だったら、明日の探検がやりにくくなるわ。カイトお願い、セアンに話しかけてきて!」
ケアノスはそう言って無理矢理カイトの服を脱がし、無理矢理服を脱がされセアンがいる風呂場に入れられた。いきなりのことでカイトは動揺し、茫然としていた。それはセアンも同じことだった。ケアノスはカイトを無理矢理シャワー室に押し込んだ後、小さく呟いた。
「頼んだわよ、カイト」
サビナの話もいよいよラストスパートに入りました。次回からは洞窟探検が再び始まります。ブラッディークローが狙っていた財宝はあるのか? いろいろと気になることがありますが、その答えは後で分かります。
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