表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
327/430

クラッチハートを追いかけて


 翌朝、カイトは異様な体の重さを感じて目を開けた。ゆっくりとした動きで周囲を見回し、体の重さの原因をすぐに理解した。


「やっぱりな……」


 カイトは小さく呟きながらため息を吐いた。カイトの体の上には下着姿のセアンたちが眠っていたのだ。セアンはカイトを抱き着くようにして寝ており、コスタもその横でカイトを抱いて寝ていた。ケアノスはカイトが寝やすいようにと考えてくれたのか、同じベッドだがカイトから少し離れた所で寝ていた。しかし、寝相の悪さからかケアノスの左足がカイトの額の上にあった。で、ラージュはカイトの足を抱きしめて寝ていた。


「んが……あり? どうしてここで?」


 と、ベッドの下からライアの声が聞こえた。ライアはすぐに起き上がり、周りを見回して声を上げた。


「あー! 皆ずるい! カイトの近くで寝てる!」


 ライアの声を聞き、セアンたちが目を覚ました。


「ん……ええ! また変な寝相で寝てたのかしら? ごめん、カイト!」


 ケアノスは謝りながら左足をカイトからどかした。ラージュはあくびをしながら起き上がり、カイトたちを見た。


「おはよう。とても気持ちのいい朝ね」


「気持ちよくないよ。誰かにベッドから蹴落とされたんだからさー」


「でも、爆睡してたじゃない」


 文句を言うライアに対し、ラージュは小さく笑いながらこう言った。目を覚ましたケアノス、ライア、ラージュはすぐに気が絵を始めたが、セアンとコスタだけは動かなかった。


「セアン、コスタ。もう朝よ。早く起きなさい。あんたらが起きないと、カイトが起き上がれないじゃないの」


 ケアノスはこう言ったが、セアンとコスタは動く気配を見せなかった。カイトはセアンとコスタの顔を見て、目をつぶっているのでまだ寝ているのだろうと思った。だが、ケアノスはそうは思わなかった。


「二人とも、今すぐに目を覚ましなさい。でないと、ハチの巣になるわよ」


 ケアノスはそう言ってレイピアを持ち、魔力を解放した。その魔力を感じたセアンとコスタは慌てて起き上がった。


「あはは……おはよー」


「何だか気持ちのいい朝ね」


「寝たふりをしてカイトに抱き着くのは止めなさい。今日はクラッチハートを追いかけるから、大変よ」


「はーい。それじゃ、サクッと準備しますかー」


 セアンはそう言って背伸びをしながらベッドから降り、コスタも首を回しながら起き上がった。それに続いてカイトも起き上がり、軽く腰のストレッチを始めた。




 朝食を食べ、チェックアウトを済ませたカイトたちは、いらない荷物をヴィーナスハンドへ置いて再び外へ出た。


「さてと、あいつらがどこにいるのか調べないとね」


「洞窟にいるかもしれないって話だし、そこんところを重点的に探そうよ」


 ライアがケアノスにこう言うと、ケアノスは返事をした。カイトは腕のストレッチをし、周囲を見回した。


「どこかに情報が集まる場所はないのかな?」


「酒場は……まぁ、こんな朝早くから酒場はやっていないわね」


「それじゃあ、朝市にでも顔を出しましょう。人がいるし、そこそこ情報もあると思うわ。それに、荒くれ共も少ないし」


 ラージュの言葉を聞き、カイトたちはなるほどと呟いてうなずいた。




 その後、カイトたちは町の朝市に向かった。それから店を出している人や買い物をしている人にクラッチハートがどこにいるか、あるいは怪しい場所に怪しい奴がいないか情報を集めた。カイトはあまり情報が集まらないかもしれないと思っていたが、その予想に反して情報はかなり集まった。


 数時間後、カイトたちは朝市の外に出て、話を始めた。


「結構楽に情報が集まったねー」


「集まったからって言って、その情報が正確かどうか分からないわよ」


 楽観するライアに対し、ケアノスがこう言った。カイトは手にしているメモ帳を手にし、口を開いた。


「とりあえず話を進めるぜ。島の北東の洞窟に変な船が停泊している。マストにはドクロのような絵が描かれている」


「他の海賊の可能性もあるけど、行ってみる価値はあるわ」


 セアンの声を聞き、コスタは確かにと呟いた。


「セアンの言う通り、行ってみる価値はあるわ。たとえ別の海賊でも、倒せば賞金を貰えるし」


「そうだね。それじゃあ早く行こうよ!」


 ライアはカイトたちを見てこう言った。それに続くようにセアンも行く気を見せた。




 マジハンド、北東の洞窟。ここにはクラッチハートの船があった。カイトたちが戦った船よりも大きく、船員も多い。


「やはり、ナルクたちはやられたのか?」


「はい。昨晩、様子を調べに行った奴らから連絡が入りました。ナルクたちはピラータ海賊団に倒され、現地のシーポリスに捕らえられたと」


 そう話すのは、クラッチハートの船長、ムイジとその部下である。部下からナルクたちが捕まった話を聞いたムイジはため息を吐き、周囲を見回した。


「そろそろここを根城にするのは限界だな。いずれ、ピラータ姉妹は俺たちの場所を察知し、攻めに来る」


 この話を聞いた部下たちは、驚きの声を上げた。だが、笑う声もあった。


「あいつらが来るんだとしたら、返り討ちにしてやりましょうよ!」


「そうですそうです! 俺たちは強い! ピラータ姉妹が二年間何をしてたのか分かりませんが、海賊家業をさぼっていた分弱っていますよ!」


 と、一部の部下たちは笑っていた。そんな中、一人の船員が魔力を解放した。


「都合のいいことを考えるな。この二年で修行をしていたとしたら、俺たちが勝てるかどうか分からんぞ」


「そ……そりゃー確かにそうですけど、考えてくださいよピンさん。二年間ですよ。急に行方が分からなくなったんだ。この二年で強くなったって……」


 ピンは船員を睨みながらこう言った。


「成長は人によって違う。あいつらは化け物と言う話を聞いている。普通の人間と一緒にするな」


 ピンの言葉を聞き、船員は黙った。ムイジはピンの言うことと同じことを考えていた。だが、強くなったと言うと逆に部下のやる気が下がり、戦いになった時にすぐにやられるのではと考え、黙っていたのだ。


「これ以上言うなピン。あいつらがどれだけ強くなったのかは正直俺も分からん。強くなった可能性があると思わせるのは大事だが、あまりネガティブなことを言うと船員もやる気を落とす。それ以上言うな」


「分かりました。すみません、真面目になりすぎました」


「その通りだ。たまにはバカなことを考えるのも必要だぞ、ピン」


 ムイジはそう言って手元のコップを手にし、中に入っている水を飲んだ。




 カイトたちは北東の洞窟の中へ入り、探索していた。


「久しぶりに洞窟に入るねー」


「ウラミニクシーミのことを思い出すね。あのオッサン、今でも生き埋めになってるのかなー」


「恨みと憎しみと一緒に埋まっているでしょうね」


 セアンとライアとラージュはそんな話をしながら前を歩いていた。カイトは顔にかかるクモの巣や水滴を払いながら進み、ケアノスも曇るメガネを拭きながら歩いていた。


「かなり湿っぽいわね。海が近いからかな……」


 コスタはスナイパーライフルを手にし、湿気を気にしていた。そんな中、前を歩いていたセアンが急に止まれとジェスチャーをした。


「誰かが来る」


 セアンの言葉を聞き、カイトたちは動きを止めた。しばらくすると、見張りのクラッチハートの船員が顔を見せた。その船員はカイトたちの存在に気付いておらず、周囲を見回していた。だが、しばらくしてカイトたちの存在に気付き、逃げた。


「あ! 逃げた!」


「追いかけるわよ! あいつが誰だか分からないけど、私たちの敵であることには変わりないわ!」


「おい! コラ待て! これ以上逃げても意味がないぞ!」


「カイト、そんなことを言っても相手は止まらないよ」


「ここであいつの足を撃つ?」


 とんでもないことを言ったコスタに対し、ケアノスは慌ててこう言った。


「止めなさい! 皆、逃げているあいつを追いかけましょう。逃げた先にあいつの仲間がいるかもしれないわ!」


「そうだね!」


 セアンはそう言って、逃げたクラッチハートの船員を追いかけた。


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ