表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
326/430

いざ、マジハンドへ


 出港の支度を終えたカイトたちは、マジハンドへ向かって旅立った。カイトとコスタは見張りのためにヴィーナスハンドの見張り台へ向かい、周りを見回していた。


「変なモンスターと遭遇しなければいいんだけどな」


「カイトの言う通りね。この辺りのモンスター、変なのが多いって聞いたから」


 コスタはモンスターの図鑑を見てこう言った。カイトはコスタが持っているモンスターの図鑑の中を思い出し、周辺にいるモンスターのことを考えた。スケベイカのような変なモンスターはいないのだが、船を破壊するほどの力があるパワーオクトパスと言う大きなタコのモンスターがいると図鑑に書いてあったのだ。


「パワーオクトパスか……あんなのと戦ったら時間がかかるだろうな」


 カイトはそう呟きながら、周囲を見回した。




 一方、ヴィーナスハンドの運航を行っているセアンとケアノスは、モニターにあるモンスター探知機を見てこう言っていた。


「モンスターの気配なし。周囲に海賊の気配なし。とりあえず安全ね」


「油断しないでよセアン。モンスターが優しく襲い掛かって来ることなんてありえないから」


「分かってるから大丈夫だよ。ま、今のところは余裕を持っていようよ」


 セアンはウインクをしながらケアノスにこう言って、冷蔵庫からジュースを用意し、コップに注いだ。能天気なセアンを見て、ケアノスはため息を吐いた。


「余裕を持ちすぎても危険だっつーのに……はぁ」


 ケアノスはそう呟いた後、モニターを見た。


 それからは、モンスターや敵意を持つ海賊との出会いはなかった。恐ろしいほど、順調な航海が続いた。セアンがあくびをしながらモニターを見ていると、見張り台からカイトが降りてきた。


「見張りの交代の時間だ。次って誰だっけ?」


「私だよー」


 と、キッチンにいたライアが顔を出してこう言った。その後、ライアは急いで手を洗い、コスタがいる見張り台へ向かおうとした。だがその前に、近くにいたカイトとセアンとケアノスにこう言った。


「軽く軽食を作ったから、お腹空いたら食べてねー」


「うん。ありがとう」


「ありがとな、ライア」


「ありがたくいただくよー」


 カイトたちの礼を聞いた後、ライアは急いで見張り台へ向かった。カイトはケアノスの前にあるモニターを見て、声を出した。


「本当に順調に進んでいるな」


「ええ。本当にね。気持ち悪いわ。モンスターも何もないなんて」


「誰かがやっつけたのかなー?」


「だといいんだけど」


 ケアノスはセアンにこう言うと、腹を触ってこう言った。


「ごめん、ちょっとお腹が空いたから、ライアが作った料理を食べて来るね。その間、モニターの管理をお願い」


「任せて!」


 セアンは笑顔でこう言った。その笑顔を見て、少し不安だと思いつつも、ケアノスはキッチンへ向かった。




 見張り台。コスタとライアが望遠鏡で周囲を見回していた。そんな中、ライアがあくびをしてこう言った。


「なーんにもないねー」


「確かにね。でも、いつモンスターが来るか分からないわ」


「確かにねー。この辺って何がいたっけ?」


「パワーオクトパス。船を破壊するほどの力があるから、結構厄介ね」


「だねー。でも、あいつを倒せば美味しいタコ焼きができるんだけどなー」


「もし、遭遇して倒したらお願いね」


「りょーかーい」


 ライアは腕を上げながらコスタにこう言った。そんな中、コスタは一瞬だけ水しぶきが発生したのを目撃した。


「何かいるかもしれないわね」


「何かあったの?」


「水しぶき。サイレン鳴らしてくる」


 と言って、コスタは急いで近くに設置されてあるボタンを押した。




 突如鳴り響いたサイレンを聞き、部屋の中で医学の本を読んでいたラージュは外に飛び出た。


「何か出たわね!」


 ラージュは大剣を手にしており、敵を探すかのように周りを見始めた。そんな中、ケアノスがレイピアを持って現れた。


「モニターに何らかの気配を探知したわ! コスタの方も、目で確認したみたい!」


「ええ。さーて、どんな奴が相手なのかしらねー」


「ワクワクしながら言わないでよ。どんな敵が来るか分からないってのに」


 ケアノスは呆れながらこう言った。その直後、ヴィーナスハンドの右側から大きなタコが現れた。


「反応の正体はこいつね」


「パワーオクトパス。船を壊すタコだけど……今の私たちの敵じゃないわね」


「無視する……ことはできないわね。あちらさんはやる気満々よ」


 ラージュは大剣を構え、パワーオクトパスを睨んだ。パワーオクトパスは大きな腕を動かしながらヴィーナスハンドに攻撃を仕掛けた。しかし、攻撃が当たる前にバリアが展開し、攻撃を防いだ。


「カイトかセアンがバリアを張ったわね。ナイスタイミング!」


「それじゃ、私があいつを仕留めて来るわ」


 と言って、ラージュは大剣を持ってパワーオクトパスの足の上に着地した。それを見たケアノスは慌ててこう言った。


「あいつの足は滑ると思うから、気を付けてね!」


「分かってるから大丈夫! すぐに終わらせるから!」


 ラージュはパワーオクトパスの足を飛び移りながら頭に近付き、高く飛び上がった。


「私たちに喧嘩を売ったのが、あんたの間違いだったのよ!」


 そう言って、ラージュは渾身の一撃を放った。攻撃を受けたパワーオクトパスは暴れまわったが、次第に動きが弱くなり、しばらくして完全に動きが止まった。ケアノスはヴィーナスハンドに戻ってきたラージュに近付いてこう言った。


「あのデカブツを一発で仕留めるなんてね」


「あの修行のおかげよ」


 と、ラージュはウインクをしてケアノスにこう言った。それと同時に、見張り台からライアがやって来た。


「あー! もう終わってる! 暴れようと思ったのに」


「大したことがなかったわ。一発で終わったし」


「ちぇー。まぁいいや。カイトかセアンにヴィーナスハンドを停めるように伝えてー。今からあいつをばらしてくるから」


「了解。今日の晩御飯はタコパね」


 ラージュはそう言って、カイトとセアンの元へ向かった。




 パワーオクトパスの襲撃があったが、あれからは何もなかった。それから二日が過ぎ、カイトたちは無事にマジハンドへ到着することができた。


「ふぃー、やっと到着したなー」


「そうだね。何もなかったけど、無駄な魔力を使わなくてよかったよ」


 カイトとセアンはそう言いながらヴィーナスハンドを港に停泊させた。その後、カイトたちは近くの町へ向かい、宿で泊ることにした。


 宿の部屋に入り、少し休んだ後、ケアノスはカイトたちにこう言った。


「明日からはクラッチハートのことを調べるわ。あいつらがこの島のどこにいるか分かり次第、すぐに向かうわよ」


「うん。すぐに情報が集まればいいね」


「セアンの言う通り。早くあいつらを倒さないと」


 セアンとライアの言葉を聞き、カイトたちは頷いた。すぐにやるべきことは決まった。カイトはそう思いつつ、背伸びをした。


「それじゃあ今日はどうする? もう夜も遅いし、晩飯もヴィーナスハンドで食べたから……もう寝るか?」


「カイトの言う通りね。今日は早めに寝て、明日早く動きましょう」


「賛成」


 セアンたちもカイトの案を聞き、すぐに賛成と言った。




 それから、カイトは風呂に入ることにした。宿の部屋にある風呂を見て、カイトは驚いていた。


「うわー、意外と広いなー」


 宿の外見はあまり広くなかったが、予想に反して風呂は大きかった。人が六人ほど入っても少し余裕があるくらいの大きさだった。カイトは体を流し、湯船に入ってリラックスしていた。ヴィーナスハンドではシャワーを浴びていたが、カイトとしてたまに湯船につかってゆっくりしたかったのだ。


「たまにはこうやって風呂に入るのもいいな……」


「そうだねー」


「カイトの言う通り」


 セアンとコスタの言葉を聞き、カイトは頷いた。そして、何故かいるセアンとコスタを見て驚いた。


「セアン! コスタ! いつの間に入って来たんだよ!」


「最初からカイトの後ろにいたよー」


「相手の歩幅と呼吸を合わせて後ろを歩けば、意外とばれないもんなんだよ」


「どこのマンガだよ。こんな光景見たらケアノスが起こるから早く出た方が……」


「もう遅いわよ」


 と、呆れた顔のケアノスが風呂の扉を開けてこう言った。その後ろにはライアとラージュがいた。ライアはセアンとコスタを見て声を上げていた。


「あー! 二人ばっかりずるーい!」


「どうせなら、皆で入りましょうよ。二年ぶりだしね」


 ラージュはウインクをしてこう言った。カイトはため息を吐きつつ、小さく呟いた。


「ああ……こんなんで明日大丈夫なのか?」


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ