争奪戦は幕を開けていた
セアンはクラッチハートの船員が何かを知っていることを知り、その内容に興味を持っていた。それと同時に、あることを予測していた。それは、ブラッディークローも全知の剣を手にするために動いているということ。シーポリスの戦士は手にしているメモを見て、口を開いた。
「ブラッディークローの方で、全知の剣の封印を解くメダルは五枚あるということです」
この言葉を聞き、メリスは驚きながら立ち上がった。
「四つか。私たちとメリスの方で手にしたのを合計して四枚。相手が五枚にしたということは……じゃあ残りは三枚ということになるわね」
ライアは頭の中で計算しながらこう言った。メリスはライアの方を向いて、こう言った。
「持っている数は敵の方が上よ。まずいわ……で遅れたわ」
そう言って、メリスは深いため息を吐いた。だが、セアンはのんきにコーヒーを飲んでいた。それを見たメリスはセアンに近付いてこう言った。
「焦らないの?」
「別に。考えてみなよメリス。相手がこっちより多くメダルを持っていても、それで封印は解かれない。こっちが四枚メダルを持っている以上、相手は絶対に全知の剣の封印を解くことはないよ」
セアンの話を聞き、メリスは納得して冷静になった。
「そうか。こっちが持っているから、封印は解かれないわね」
「冷静になった? こっちの方でメダルが集まれば、相手の方から来るかもしれない。その時に、メダルは奪えばいい」
「奪うって……」
「奪うのは私たちに任せてよ。海賊なんだし」
と言って、セアンはウインクをした。
ブラッディークローの方でもメダルを集めていた。だが、こっちもメダルを持っている以上封印は解かれない。そのことを知ったカイトは安堵し、息を吐いた。そんな中、ケアノスがあることが気になってメリスにこう聞いた。
「で、メリスが戦ったメダルを守る戦士はどんな奴だったの?」
メリスは戦いの時のことを思い出しながら、メリスにこう答えた。
「何ていえばいいんだか……いろいろと戦ったからね」
「順を追って話せばいいから」
「そうね。それじゃあニカフィって戦士のことを話すわ」
メリスは水を飲み、話を始めた。
「ニカフィは変な戦士だったわ。武器は持っていないけど、魔力を体に纏わせて戦っていたわね」
「ソンウクと同じような奴か」
カイトはソンウクたちのことを思い出しながらこう言った。だが、メリスは首を振って話を続けた。
「体術を使うのは同じだけれど、ニカフィは変わっていたわ。魔力で腕や足を伸ばして攻撃するし、大きな魔力を物体化したようなもので攻撃を仕掛けたわ」
「遠距離戦が得意だったのね。すごい相手もいたのね」
と、コスタはニカフィのことをイメージしながらこう言った。次に、コスタはメリスにこう聞いた。
「で、どうやって倒したの?」
「魔力切れを狙ったのよ。強い魔力だったけど、魔力に限りがあったわ。そこを狙って攻撃を仕掛けて、ようやく倒したって感じね」
「強い相手だったでしょ? 皆無事だったの?」
ラージュにこう言われ、メリスは頷いて返事をした。
「ええ。相手も私たちを殺すつもりはなさそうだったわ。戦いに関しても、もう戦えないと判断したらすぐに負けを認めたし」
「結構素直な奴だったんだね」
「確かにそうね。次の話もするわね」
「どんな奴が相手だったんだ?」
メリスの話を聞き、少しだけ子供のような顔になっているカイトが急かすようにこう言った。メリスは落ち着くように言った後、話を続けた。
「次はナルって名前の戦士よ。見た目は十五歳くらいの少年だったけど、とんでもなく強かったわ」
「どんな技を使って来たの?」
「技はニカフィと同じ体術。だけど、時折変な魔力を使った技を使って来たのよ」
「変な技?」
「分身よ」
メリスの返事を聞いたライアは、目を丸くして驚いた。
「分身って……もう一人増えるってこと?」
「そんな感じね。もう一人の自分が現れる技ね。まぁ、魔力で作った偽物だけど。それに、身代わりも使うからまともに攻撃が当たらなかったわね」
メリスの話を聞いていたカイトは、忍者のことを思い出した。分身、身代わりと聞いて瞬時に忍者のことを思い出したからだ。
「この世界にも忍者みたいなものがいたのか」
「ニンジャ? 何じゃそりゃ?」
横にいたセアンがこう尋ねたため、カイトはどうやって返事をするか考え、こう言った。
「スパイみたいなものかな」
「スパイか……」
セアンは納得した表情でこう言った。そんな中、メリスは話を続けた。
「ナルは分身、身代わりを使って私たちと戦ったわ。魔力切れを狙おうとしても、ナルはその時を狙って攻撃されることを察していて、対策も練っていたわ」
「魔力補充のために、手段を残しておいたのね」
「ラージュの言う通り。魔力がなくなるタイミングで分身を減らすんだけど、隙をカバーするために一体か二体の分身を残しておいたのよ」
「魔力補充の妨害を防ぐためにね」
「本当に苦労したのよ。攻撃の隙を突いて、何とか私が倒したって形ね」
メリスは戦いの時のことを思い出したのか、疲れたようにため息を吐いた。そんな中、セアンが声をかけた。
「もう一人は?」
「ああ。三枚目のメダルの話をするわね。三枚目のメダルを守っていたのはインシーって名乗っていたわ。ラージュみたいな大剣を装備していたわね」
「私と同じ武器だったのね」
「ただ、そいつは水を使ったわ」
「魔力の属性が違ったわね」
ラージュはそう言ってコーヒーを飲んだ。メリスはインシーとの戦いを思い出しながら話を続けた。
「インシーはとんでもなく早い奴だったわ。大剣による攻撃も破壊力が高かったけど、それよりも早さの方で私は驚いた」
「どのくらい早かったの?」
「前にいたはずなのに、気が付いたら後ろにいたって感じね」
「瞬時に移動できる奴ね。意外とそういう奴が厄介なのよね」
「ケアノスの言う通り。攻撃をしようにも、あまりの速さで攻撃が当たらない。それに、反撃も受けてかなり危険な状態だったのよ」
話を聞いたラージュは、メリスの体を見回した。ラージュの視線に気付いたメリスは笑ってこう言った。
「大丈夫よラージュ。怪我はしたけど、もう治ったし、傷も塞がったから」
「あらそう。医者としての血が騒いじゃったわ」
「インシーと戦ったのも、大体半年前だったからね。倒したのは、私がある策を練ったからよ」
「ある策?」
コスタがこう言うと、メリスは頷いて話を続けた。
「インシーと戦った部屋の床は石でできていたのよ。私はわざと床を攻撃し、周囲に砂利をばらまいた」
「そうか。砂利を踏めば足音が響く。それを利用して攻撃したんだね」
「セアンの言う通り。インシーはそのことに気付くことができず、私の攻撃を受けたって形ね」
メリスはそう言って水を飲んだ。一息ついた後、メリスはこう言った。
「私が経験した戦いはこれで終わりね」
「激しい戦いだったんだね」
「ええ。でも、この戦いのおかげで私はかなり強くなったわ。今じゃ、少佐だもんね」
メリスはシーポリスの制服に着けてある少佐のバッジを見た。それを見たメリスは、心の中でこう思った。まさか、自分がここまで昇給するとは思わなかったと。
話が終わった後、カイトはメリスにこう聞いた。
「そう言えば、サマリオさんはどうしているんだ?」
「今は別行動中。ツリーさんと一緒にブラッディークローの方を探索しているわ」
「そうか。まだ、あいつらに仕えている海賊団を相手に戦っているのか」
「いえ、サマリオさんたちが調べているのは幹部の方。直接、奴らの本拠地を見つけ出して叩くつもりなのよ」
この話を聞き、カイトは背筋に緊張感が走った。シーポリスが本気でブラッディークローを潰すつもりなのだと思ったからだ。
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