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全知の剣について


 翌朝。カイトは体の重みを感じて目を覚ました。寝た時には何も感じなかったが、目を開けた時には重みを感じていたのだ。


「オイオイ……」


 疲れが取れていないのか、はたまた変な病気になってしまったのかと思ったカイトは少し弱気になったが、すぐに重みの原因に気付いた。布団の中を見ると、下着姿のセアンが寝息を立てて寝ていたのだ。


「セアン……何やってんだよ……」


「ふにゃ? あ……カイトおはよう。寒いから布団の中に潜っちゃったよ」


「変なことを言うなよ。夜這いをしようとして、寒さに負けたんだろ?」


「あはは……その通り」


「やっぱりな」


 カイトがそう言うと、ケアノスがノックもせずにカイトの寝室の扉を開けた。その時のケアノスの様子は、髪を整えておらず、パジャマも少し乱れていた。その様子を見たカイトはこう思った。ケアノスはセアンがいないことを察し、急いで探していたのだろうと。


「セアン。あんたカイトの部屋で何をやっていたのよ?」


「あはは……夜這いしようとしたら寒くてねぇ、一緒に寝ちゃったの」


「正直でよろしい」


 ケアノスはそう言うと、セアンの首根っこを掴んでカイトの部屋から出ようとした。その時、あることを思ったケアノスはカイトにこう言った。


「そう言えば、前はセアンや皆の下着姿を見て悲鳴を上げていたけど、今はそんなことないわね。もしかして……ランドレディースで何かあった?」


「ああ。たまにフワウたちが俺の借りていた小屋に入って寝てたんだ……」


 この言葉を聞き、セアンは目を開けて驚いた。


「ちょっと! それってカイトの初体験って……」


「そこまでやってない! フワウたちは本当に寝てただけだ。異性と寝てみたいって言ってたから……」


「ふむ……私はカイトを信じるよ。だって私たちの方がカイトの付き合いは長いからね」


「二年のブランクがあるけど……」


 この言葉を聞き、セアンは言葉を失った。確かにカイトがこの世界に転生してからの付き合いだが、二年間離れ離れになっていた。その分、カイトとフワウたちの方がより長く一緒にいるということになるのだ。


「け……経験があれば時間なんて!」


「とにかく戻るわよ。そんな格好じゃ風邪をひくし、メリスが変な誤解をするわよ」


 ケアノスのこの言葉を聞き、カイトは驚いた声を出した。


「今、メリスが来ているのか?」


「ええ。島の食堂にいるわ。カイトも早く着替えてね。食事は食堂でするから」


 と言って、ケアノスはセアンを連れて去って行った。




 数分後、支度をしたカイトはセアンたちと合流し、島の食堂へ向かった。そこには野次馬の島の人たちがおり、シーポリスの戦士が見張りで立っていた。見張りの一人がカイトたちに気付き、敬礼した。


「お久しぶりです皆さん。メリス少佐が中でお待ちしています」


「少佐? メリスって昇進したのか?」


「ええ。二年の間に、いろいろと活躍してたみたいよ。その時の話もしてくれると思うわ」


「気になるんだよねー。私たちが修行をしている間、何をしていたんだか」


 話をしていたカイトとケアノスの間に入るようにライアが顔を出した。扉の近くにいるコスタとラージュはカイトたちに目を合わせ、扉を開けると合図を送った。カイトたちが頷いた後、コスタが扉を開いた。扉が開いたことを合図する鈴の音が鳴り響いたのを聞いていた中にいるメリスは、カイトたちの姿を見て思わず立ち上がった。


「皆! 久しぶりね!」


「メリス! うわー、でっかくなったねー!」


 ライアはメリスに近付き、じろじろと体を見た。メリスは恥ずかしそうにし、ライアに近いと言った。


「二年前より身長もおっぱいも大きくなったんじゃない?」


「おっぱいは余計よ。それよりも、皆が無事でよかったわ。セアンたちも二年間、ずっと修行をしていたせいで何も連絡なかったし」


「あはは……ごめんごめん。私たちがいた場所、電波が通じなくてねー」


 セアンは笑いながらこう言った。その後、カイトたちはメリスと同じテーブルに座り、食事をした。セアンは水を飲み、メリスにこう言った。


「で、今日私たちに会いに来た理由って何?」


「このことを伝えようと思って」


 と言って、メリスは小さな布袋を取り出した。布袋を開け、中にあった物をテーブルの上に置いた。


「これって、メダル?」


「ええそうよ。でも、ただのメダルじゃない」


 メリスの言葉を聞いたケアノスは、はっとした表情をし、こう言った。


「まさかこれ、全知の剣の封印を解くメダル?」


 この言葉を聞き、カイトたちはメダルの方を向いた。カイトたちがメダルに釘付けになっている時、メリスは咳ばらいをして話し始めた。


「皆から全知の剣の話を聞いた後、私たちの方でもいろいろと調べたの。それで、できる限り取れるメダルは取ろうって話になったの。それで、私とサマリオさんが中心となってメダルを集めたの」


「メリスとサマリオで? メダルを守る人がいたけど、強くなかった?」


 コスタの言葉を聞き、メリスはその時のことを思い出したか、ため息を吐いた。


「とんでもなく強かったわ。サマリオさんや皆と手を組んで戦ってようやく勝てたって感じよ」


「やっぱり強かったのか」


「ええ。はぁ……ツリーさんもいたけど、ビビッて戦えなかったわね」


 カイトはこの言葉を聞き、強敵を前にして泣きわめくツリーの姿を想像した。


「確かにあの人があの場にいたら、何もできなかったな」


「でも、こうやって三枚のメダルを手にしたわ。そのことを皆に伝えようと思ってね」


「そうだったの。本当にありがとう」


「お礼なんていいわよ。おかげで強くなったんだし」


 と、メリスは笑顔でセアンにこう言った。そんな中、メリスはカイトの腕をじっと見た。


「どうした? 俺の腕に何かついているのか?」


「カイト、二年の間に結構筋肉が付いたわね」


「そうか? 俺はそうとは思わないけど」


「自分の体の変化って、自分じゃわからないもんなんだよね。カイト、腕に力を入れて」


 ラージュに促され、カイトは右腕に力を込めた。その後、メリスはカイトの右腕を触った。


「うわー。すごいカチカチ。結構鍛えたわね」


「ああ。ずっと実戦のような形で修行していたからなー」


 カイトはソンウクたちとの修行のことをメリスに話した。話を聞いたメリスは驚きつつ、カイトにこう言った。


「そんな人たちがいたのね。それじゃあカイトも強くなるはずだわ」


「ソンウクとの戦いはきつかったわ。皆で戦っても勝てるかどうか分からなかったし」


 セアンはソンウクたちとの戦いを思い出し、大きくため息を吐いた。


「あの時って、ウイークもいたんだよね」


「ああ……ウイークと一緒に戦ったんだよな」


 カイトもソンウクたちとの戦いを思い出し、大きくため息を吐いた。場の雰囲気が暗くなったため、メリスは慌てて次の話をした。


「それよりも、セアンたちはどうやって修行していたの?」


「鍜治場の近くにあったトレーニングルームで修行していたわ」


「あのトレーニングルームはすごかったわ。疑似的なモンスターを生み出せるし、強さも設定できる。それで、重力も設定できるんだから」


「そりゃスゲーな。まるでマンガだ……」


 カイトは転生前に読んでいたマンガを思い出し、こう言った。それから、カイトたちは久しぶりにメリスにあったことで、かなり楽しく食事を楽しんだ。食事が始まってしばらくした後、メリスの部下らしきシーポリスの戦士が近付いて来た。


「少佐、昨日セアンさんたちが倒したクラッチハートの船員から話を聞きだすことに成功しました」


「そう。あいつらがどんな話をしたか教えて。それに、セアンたちにもそのことを伝えて」


「分かりました」


 シーポリスの戦士はセアンたちの方を見回し、咳ばらいをして口を開いた。


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