不利な数での戦い
ケアノスは一人で三人の槍使いと戦っていた。三人は口で何かを言いつつも、動きはしっかりとしていた。それを見たケアノスはチームプレイができていると思った。それと同時に、三人が相手でも一人で対処できると思った。
「イガ! 私に合わせてください!」
「分かったぜオイ。ガオ、俺らで攻撃を仕掛けるから、お前はドでかい一発をぶちかましてくれ!」
「了解した。怪我するなよ!」
イガとオイと呼ばれた男は同時にケアノスに向かって走り出し、攻撃を仕掛けた。ケアノスは攻撃をかわし、魔力を解放して迫って来るガオの攻撃をかわした。
「グッ、俺たちの攻撃があっさりとかわされる!」
「意外とやりますね。私たちの魔力を合わせて動きを封じますか?」
「そうだな。動きを封じれば叩くのは容易だ」
その後、イガたちはケアノスを取り囲むように陣形を取り、魔力を解放した。ケアノスはわざとその場に立ち止まり、様子を見た。
「喰らえ、俺たちの合体技、ライジングトライアングル!」
「雷の三角形に捕らわれ、動けなくなるがいい!」
「その時がお前の最期だ!」
三人は同時に雷を放ち、ケアノスを閉じ込めた。だが、ケアノスは大きなため息を吐いてこう言った。
「三人で魔力を解放してこの程度? これじゃああっさりと破られるわよ。こんな風にね!」
と言って、ケアノスは魔力を解放した。ケアノスの魔力は三人の合わせた魔力よりも強く、囲んでいた雷を跡形もなく吹き飛ばしてしまった。ケアノスが魔力解放の際に、強い衝撃波と共に風が舞ったため、三人は吹き飛ばされそうになった。
「ウワァッ!」
「グッ、何だこの魔力は……」
「動じるな! 魔力で負けても俺たちは三人! 数の面で有利であることには変わりない!」
ガオが動揺し始めた二人に向かってこう言ったが、目の前にケアノスが現れ、動揺した。
「なっ!」
「まず一人」
ケアノスはガオに向かってレイピアを突こうとした。だが、ケアノスの接近を察したオイが槍を使ってケアノスの攻撃を妨害していた。
「そうはさせませんよ!」
「あら、意外と勘が鋭いじゃない」
ケアノスは後ろに下がり、レイピアを構え直した。オイはガオを連れて後ろに下がり、ケアノスを見ながら話をしていた。
「予想以上に強い相手だ。誰だよ、ロスさんに倒されたから自信をなくしてどこかに逃げたって言った奴は?」
「今は愚痴を言う暇はありません。とにかく、この状況をどう打破するか考えましょう」
「打破するって、三人の魔力を解放しても敵わないんだぜ」
「考え直してください。これは戦いです。勝つためには手段を選ばない」
「おっと、そうだったな。俺としたことが、力の差を感じて動揺していたぜ」
ガオは小さく笑ってこう言った。そんな中、イガがケアノスの背後から襲い掛かった。
「背中ががら空きだぜェ!」
この光景を見たオイは叫んだ。
「イガ! あまり無茶な行動をしないでください!」
「大丈夫だ! 後ろから攻撃すれば、いくら強い奴でも……」
イガがこう言いかけた時だった。上空から何者かが現れ、イガに飛び蹴りを放ったのだ。ケアノスは小さく笑い、何者かに語りかけた。
「援護に来たのね、ライア」
「うん。三対一で苦戦してるかなーって思ったけど、苦戦してないみたいだね」
現れたのはライアだった。ライアに蹴り飛ばされたイガは蹴られた場所を手で押さえながら、立ち上がった。
ヴィーナスハンドの見張り台にいるコスタは、槍使いの三人をスコープに映していた。
「戦場に飛び込んだのはライアだけじゃないわよ」
そう呟くと、戦いの様子を見始めた。そんな中、カイトが見張り台にやって来た。
「コスタ、ケアノスとライアの援護をしてくれてるんだな」
「うん。まだそっちの戦いが終わってないみたいなの」
「俺にできることがあるなら言ってくれ」
「分かった。その気持ちだけで十分嬉しい」
コスタはカイトの方を振り返り、笑顔を見せた。
イガは槍を持ってライアに襲い掛かった。
「クソッ! この! 喰らいやがれ!」
何度もライアに向かって槍を突いていたが、ライアはその攻撃をかわしている。イガは魔力を解放し、矛先に雷を纏わせている。それでも、ライアに攻撃が当たらないのだ。
「グッ! どうして攻撃が当たらない!」
「攻撃が下手だからだよ」
ライアは両手にナイフを持ち、素早くイガに接近して何度も振るった。
「グワァァァァァァァァァァ!」
攻撃を受けたイガは悲鳴を上げながら宙を舞い、後ろに倒れた。ライアはナイフをしまい、倒れたイガの方を向いてこう言った。
「結構痛そうな声を出していたけど、私本気を出して戦ってないんだよねー」
と、ライアは倒れたイガにこう言った。イガは血を吐きながら立ち上がり、ライアを睨んだ。
「クソが……手加減してるつもりかよ……」
「私が本気を出したら、あんたを殺しちゃうかもしれないからね。私、人を殺したくないの」
ライアの言葉を聞いたイガは小さく笑い、槍を構えた。
「俺たちは海賊だろ? そんな甘っちょろいことを言うのは……甘ちゃんの証拠だぜ?」
「私たちには私たちのルールがあるの。あんたみたいな雑魚が口をはさむんじゃないわよ」
その言葉を聞いたイガは魔力を解放し、ライアに向かって走り出した。その様子を見たオイはイガに向かって叫んだ。
「イガ! 冷静になりなさい!」
オイの叫びはイガには届かなかった。イガは怒り狂ったように叫びながらライアに突っ込み、攻撃を始めた。だが、ライアは余裕の表情でイガの攻撃をかわし、隙を見てイガの脇腹に二本のナイフを突き刺した。
「あ……が……」
「致命傷は避けてるよ。安心して倒れてね」
ライアはイガの脇腹からナイフを抜いてこう言った。イガは小さな声で悔しそうにクソッたれと言ってから、その場に倒れた。
イガが倒された。そのことを知ったオイとガオはケアノスを睨み、攻撃を始めた。
「私たちだけでも、戦いましょう!」
「ああ。一人だけでも倒せば!」
ガオがこう言った直後だった。遠くから発砲音が聞こえたのだ。ガオはその音を聞いて一瞬だけ立ち止まったが、この直後に遠くから放たれたライフル弾がガオの腹を撃ち抜いた。
「ガアッ!」
「ガオ!」
倒れたガオを見て、ケアノスはにやりと笑った。
「コスタが援護射撃をしてくれたのね。これで、状況は変わったわね」
と言って、動揺するオイを見た。オイは槍を持って立ち上がり、静かに魔力を解放した。
「あまり出したくなかったのですが……全力で相手をしましょう。やられるのは嫌なので」
「私だってあんたみたいな雑魚にやられるのは嫌よ」
ケアノスがこう言った後、オイはケアノスに向かって走り出した。
「あなたを倒します。覚悟してください!」
そう言って、オイは何度もケアノスに向かって槍を突いた。ケアノスはレイピアでオイの攻撃を防ぎ、隙を見て後ろに下がった。
「逃げるつもりですか!」
後ろに下がったケアノスを見て、オイはケアノスを追いかけ、再び攻撃を仕掛けた。力を込めて何度も槍を突くオイだったが、次第に彼に疲れの色が見えた。
何度も攻撃を仕掛けても、当たることはない。それどころか、逆に私の体力と魔力が減っている!
そう思ったオイは、後ろに下がって一呼吸しようとした。ケアノスはその隙を見計らい、オイに接近した。
「休むつもりなのね。戦いの中でそんなことをするなんて、余裕があるわねー」
ケアノスは皮肉っぽくこう言って、レイピアを振るった。レイピアの刃はオイの体に命中し、深く、大きな傷を作った。
「そ……そんな……」
大きなダメージを受けたオイは悔しそうに血を吐きながら、その場に倒れた。ケアノスたちの戦いを見ていたクラッチハートの船員は、動揺しながら後ずさりしていた。
「逃げるつもりなのね。あんたたち」
ケアノスは船員たちを見て、怖い顔でこう言った。
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