爆発の中で
ボムマサはセアンの笑みを見て、一瞬だけ恐怖を感じた。この笑みからセアンの余裕、そしてボムマサに対する強い敵意を感じたからだ。ボムマサは迫って来るセアンを見て、我に戻った。
「何をやっていたのか分からないが、お前は俺を倒すことはできないぞ!」
ボムマサはそう言い、セアンに向かって火の魔力を放ち、爆発させた。煙のせいでセアンの姿を確認できないが、魔力でセアンがまだ生きていること、ダメージを負っていないことを把握した。
これだけ爆発させても、無傷でいられるのかよ!
何度も爆発させたため、多少はダメージを受けているだろうとボムマサは考えているのだが、セアンはダメージを受けていなかった。しばらくして、煙の中からカトラスを構えたセアンが姿を現した。
「喰らえェェェェェ!」
セアンは勢いを付けて、ボムマサに向かってカトラスを振り下ろした。反射的にボムマサはバリアを張り、セアンの攻撃を防御した。攻撃が防御されたことを察したセアンはすぐに回転しながら後ろに下がり、ボムマサの様子を見ていた。
「クッ……やるではないか」
「何だか苦戦しているって思わせるような顔をしているけどさ、私あんまり本気出して戦ってないよ」
セアンの言葉を聞き、ボムマサは絶句した。こっちは本気で、確実にセアンを倒すつもりで戦っているのに、セアンは手を抜いて戦っていたからだ。
「本気で戦っていないだと?」
「そりゃそーよ。だって私、あんたの力把握したんだもん。あんまり強くないってね」
と、セアンはにやりと笑ってこう言った。挑発のつもりだろうとボムマサは思ったが、この言葉は真実だとボムマサは思った。
「確かに俺は強くない。だが、頭の中はどうだろうな」
ボムマサはセアンに気付かれないように小さな火の粉を作り、セアンに向けて放った。それに気付かないセアンは、カトラスを持ってボムマサに近付いた。
「戦いのコツ、とにかく相手を攻撃してぶっ倒すこと!」
「あまり熱くなりすぎると、周りが見えなくなるぞ」
迫って来るセアンに向かって、ボムマサはこう言った。そして、放った小さな火の子を破裂させた。爆発はセアンに命中。倒せなくても、大きなダメージを与えただろうとボムマサは思い、にやりと笑った。しかし、煙の中からセアンの魔力を感じた。
「何! あの爆発を受けても生きているのか!」
「あんたみたいな爆発させて攻撃する奴の考えなんて、大体分かるわよ!」
セアンの声が聞こえた直後、煙を払うかのように弾丸が現れ、ボムマサの左肩を撃ち抜いた。
「グアアアアア!」
弾丸を受けたボムマサは後ろへ倒れ、痛みのあまり立ち上がることができなかった。しばらくして、セアンが煙を払いながらボムマサに近付いた。
クラッチハートの海賊船に突入したライアとラージュは、周囲を見回していた。
「爆発音が響いているわね。物騒なことを考える奴がいるようね」
「船まで爆発させたら、この船の上にいる人たちみーんな沈んじゃうのに」
ライアとラージュは呆れながら話をしていた。そんな中、ナルクを倒したカイトと合流した。
「あり? 二人とも。バリア発生器の所にいなくてもいいのか?」
カイトがこう聞くと、二人は近付いて返事をした。
「ええ。バリアを使わなくても大丈夫だろうって判断したのよ」
「現に、皆が暴れたおかげで結構この船の連中が倒れたみたいだし」
「そうか。俺は一度ヴィーナスハンドへ戻るよ。こいつを牢屋に入れたいし」
そう言って、カイトはナルクを見せた。
「分かったわ。まだセアンとケアノスが戦っているみたいだから、私とライアは二人の援護へ向かうわ」
「頼んだ」
カイトはそう答えた後、ナルクを連れてヴィーナスハンドへ戻って行った。ライアは周囲を見回し、三人の敵と戦うケアノスの姿を見つけた。
「ケアノスが一人で三人と戦ってる。ちょっとそっちに向かうよ」
「じゃあ私はセアンの方へ向かうわ。ケアノスのこと、任せたわよ」
「うん!」
ライアは大きな声で返事をし、ケアノスの援護へ向かった。ラージュは大剣を持ち、セアンの元へ向かった。
セアンは倒れているボムマサに近付き、ハンドガンの銃口を向けた。
「変なことを考えない方がいいよ。指は引き金の近くにある。何かしたらすぐに撃つから」
「物騒なことを言うな……だが、俺が何も考えないと思っていたのか?」
「何か考えているんでしょ? 目に見えないような火の粉を周囲にばらまいて、私が近付いた瞬間に爆発させるって考えているんでしょ?」
「その通りだ!」
ボムマサは魔力を解放し、周囲を爆発させた。セアンはボムマサがそうするだろうと考えていて、すぐにバリアを張る支度をしていたのだ。そのおかげで、ダメージを負うことはなかった。
「ぐっ……また厄介なバリアを張りやがったか……」
「ごめんなさいねー。爆発のせいで服がビリビリになって、エッチな姿になるのはごめんだからねー」
と言って、セアンは魔力を解放した。セアンの強い魔力を感じたボムマサは立ち上がり、セアンに向かって右手を向けた。
「何かをするようだが……そうはさせんぞ」
「あんたこそ、何をするつもりだか分からないけど……バカなことを考えない方がいいわよ」
セアンはにやりと笑ってこう言った。ボムマサは挑発されていると思い、セアンに接近しようとした。だがその直後、上から大剣を持ったラージュが現れ、勢いを付けて大剣を振り、ボムマサに攻撃を仕掛けた。
「グアッハッ!」
攻撃を受けたボムマサは悲鳴を上げ、後へ吹き飛んだ。現れたラージュを見て、セアンは驚きの声を上げた。
「ラージュ。誰か来ると思ったけど、ラージュが来るなんて思ってもいなかった」
「ライアがケアノスの援護に向かったからね。ヴィーナスハンドにはコスタもいるし、向こうは三人で大丈夫って思ってからね」
ラージュは大剣を構え直し、ボムマサの方を睨んだ。ボムマサは苦しそうな声を上げて立ち上がり、セアンとラージュを睨んだ。
「二対一か……こうなったら、本気を出すしかない」
「あの人、本気を出すって。どうするのセアン?」
「ちゃちゃってやっちゃおうよ。本気を出すって言っても、大して強くないだろうし。こっちが有利な状況は変わらないよ」
「確かにそうね。すぐに終わらせましょう」
セアンとラージュの話を聞き、ボムマサは少し苛立った。
「だったら、お前たちを木端微塵にしてこの戦いを終わらせてやる!」
そう言ってボムマサはセアンとラージュに襲い掛かったが、二人はボムマサを見てにやりと笑った。
「悪いけど」
「あんたの力じゃあ私たちを倒すことは一生できないわ」
「ほざけェェェェェ!」
ボムマサはセアンとラージュに向かって無数の火の粉を放ち、爆発させた。この爆発を受けたら、生きていられないだろうと思ったボムマサだったが、セアンとラージュの強い魔力を感じ、激しく動揺した。
「え……生きてる……」
「言ったじゃない。聞いてなかったの?」
「あんたの力じゃあ私たちを倒すことは一生できないのに」
セアンとラージュはボムマサの背後に回ってこう言った。ボムマサが振り返ろうとしたその瞬間、セアンとラージュは同時にボムマサに攻撃を仕掛けた。攻撃を受けたボムマサは口から血を吐きながら、悔しそうに呟いた。
「クソ……おれじゃあ……この二人に勝てなかった……」
そう呟くと、ボムマサはゆっくりと前に倒れ、気を失った。ラージュが倒れたボムマサに近付き、様子を調べてセアンにこう言った。
「倒れたわね。気を失ってるわ」
「にしても、ちょっとやりすぎたかな? 魔力出しすぎたかも」
「でもま、生きてるから安心して。早くヴィーナスハンドへ戻って、このおっさんを牢屋にぶち込まないと」
「そうだね。ラージュ、手を貸すよー」
「お願い。一人じゃこのおっさんを運ぶのは難しいわ」
ボムマサを倒した後、セアンとラージュはボムマサを担ぎ、ヴィーナスハンドへ戻って行った。
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