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故郷サビナへの帰郷


 ケアノスから過去の話を聞いた翌日、カイトは海を眺めていた。いつも明るいがたまに色仕掛けを仕掛けてくるセアンや冷静なコスタ、しっかり者のケアノス、前向きで明るいライア、たまにドSな所があるラージュに壮絶な過去があったとは予想していなかったのだ。何かあって海賊をしているのだとセアンたちと会ってから考えていたのだが、まさか両親の死と故郷が滅ぼされたなんて思ってもいなかったのだ。


「カイト、どうかしたの? 朝からずーっとぼーっとしてるけど」


 海を眺めていると、セアンが話しかけてきた。カイトは返事をしようとしたのだが、その前にセアンがこう言った。


「ケアノスから私たちの過去を聞いて、それで何か考えているの?」


 返事をする前に考えていることを言われ、カイトは驚いた。その顔を見て、セアンはにやりと笑い、カイトの横に移動した。


「ま、昨日ケアノスが話した通り、私たちが海賊をしているのはサビナの復興、そんでもってブラッディークローを倒すため」


「結構ハードな理由だったなんて、想像してなかったよ。俺の予想をはるかに超えていた」


「まーね。でも、サマリオから鍛えられて、いろいろ教わったせいもあるかそんなに苦じゃなかったし」


「皆が辛くなかったらいいけど」


 カイトはそう言葉を返すと、セアンは少し暗い顔になった。


「辛くはないけどさ……海賊家業を始めて何年か経つけど、まだブラッディークローの情報が入らないの」


「え? そうなのか? 俺はブラッディークローって奴らは他の海賊よりちょっと強いけど、大した規模じゃないと思ったけど」


 旅立ちから何年か経過しているため、サビナを襲ったブラッディークローの手がかりを見つけているのだとカイトは思っていた。そう思っていたせいか、カイトは驚いていた。


「カイトが考えているよりもブラッディークローはかなり大きい海賊で、同盟組んでいる海賊もかなりいるって話を聞いた。だけど、奴らは仲間を売ることはないし、そんなことをしたら自ら命を落とす奴らばっかりなの」


「それだけ仲間意識が強いってわけか。かなり強いと、情報を手にするのも一苦労だな」


「そうでもないわ」


 そう言ってコスタが上から降りてきて、話に加わった。


「仲間を売るなら死んだほうがましって考えるのはほんの一部。大体の奴らはブラッディークローにいると言われている暗殺部隊に始末されているの」


「情報が流れる前に、仲間を始末するのか。恐ろしいことを考えているな」


「それだけ上の連中は情報が漏れるのが嫌なのよ。そのせいか、上の連中の手がかりがないの。奴らのボスもどんな奴なのか、男か女なのか、年齢も何もまーったく分からない」


 ため息交じりにセアンがこう言った直後、ケアノスが部屋から出てきた。


「そろそろサビナに到着するわよ。皆、支度して」


 カイトたちはケアノスに返事をした後、上陸の支度を始めた。




 ブラッディークローの襲撃でサビナは酷い状況となった。カイトはケアノスにこう伝えられたためか、焼け野原みたいな光景になっているとイメージしていた。だがそのイメージとは裏腹に、それなりに建物はできており、コンビニのような店も小規模でありながら存在していた。


「何だ、俺は戦争が終わった後の焼け野原をイメージしていたけど……かなり復興しているようだな」


「焼け野原になったのは襲撃の直後だけ。この状況になったのは私たちの復興金とシーポリスのおかげ」


 ライアがカイトにそう言った直後、外で遊んでいた子供たちがピラータ姉妹に気付き、歓声の声を上げながら近付いた。


「セアンたちだー!」


「わーい! 遊びに来てくれたー!」


 セアンたちが来たのを喜んだが、カイトを見て茫然としていた。


「お兄ちゃん誰? 見ない顔だね」


「もしかしてセアンたちの彼氏? どこの出身なの?」


「いよっ、このハーレム色男! 可愛い顔してやることはやったんだね!」


「えっと……俺は実は……」


 カイトは異世界からの転生者と子供たちに伝えようとしたが、難しいと思った。だが、セアンが代わりにカイトのことをこう説明した。


「私たちの運命の人。つまり恋人。皆の予想は大当たり」


「へー。セアンたちも恋をするのかー」


「ぱっと見普通のお兄ちゃんだけど……何この剣? 変な形」


 子供たちはカイトの腰の刀を見て、珍しそうに手を伸ばそうとした。


「これ貸してー。見てたら振り回したくなったー」


「あ、危険だから触っちゃダメだよ! 危険だから!」


 もし、子供が鞘から刀を抜いておもちゃのように振り回せば事故につながる。そう思ったカイトだったが、ライアが子供たちにこう言った。


「武器はおもちゃじゃないよ。振り回したら危ないから。怪我人が出たら遅いよ」


「はーい」


 返事をした後、子供たちは再び遊び始めた。その光景を見て、カイトはこの島にもそれなりに平和が戻っているのだと思った。




 その後、セアンたちは島の人たちにカイトのことを紹介し始めた。カイトを見た島の人たちは、最初にこの子は誰と聞き、次にどこで出会ったとか、セアンたちと一線は越えたのか聞き始めた。変なことを聞いて来た野郎連中は皆、女性たちにボコボコにされていた。ベンチに座っていたカイトはそんな光景を見て、サビナはそれなりに平和だと察した。


「そこそこ平和だな。俺は世紀末のような荒れた場所だと思っていたけど」


「世紀末? 何それ?」


 ライアがカイトの横に座りながらこう聞いて来た。カイトは少し考えた後、こう答えた。


「変な髪形の野蛮人が奇声を上げながらバイクを走らせる。それで、力で弱者の食べ物や水を奪う危険な世界……かな」


「危険な世界だね。まさか、カイトってその世界から来たんじゃ……」


「それは俺の世界にあったマンガの話。実際、俺がいた世界は……まぁ、いろいろあるけどそこそこ平和だから大丈夫だよ」


「そうなんだ。ねぇ、カイトのいた世界にもサビナみたいな場所があったの?」


 ライアの言葉を聞き、カイトは学校で学んだ歴史やニュースのことを思い出しながら、ライアに答えた。


「ああ。戦争で酷い目に合った場所もあったし、俺が死んだときも、俺がいた国とは違う国で戦争があった。いろんな理由で戦争が起きてたな」


「うわー、この世界とあまり変わりないね。海賊とかいたの?」


「昔はいたけど、俺がいた時代にはいたかどうかは分からないな」


 カイトとライアが話をしていると、ケアノスが二人の肩を叩いた。


「そろそろ役所へ行くわよ。島を管理している人に挨拶しないと」


「そうだね。行こ、カイト」


「おう」


二人は返事をし、ベンチから立ち上がった。その後、カイトたちは島の役所へ向かった。ピラータ姉妹の顔を見た役員は、歓喜の声を上げて近付いた。


「セアン様! 皆様! お久しぶりです、毎回毎回寄付の方ありがとうございます! おかげで少しずつこの島も復興してきています!」


「故郷だからさ、何が何でも復興させたいの」


「本当にすみません。私たちは何もできず……」


「何もしてなくないよ。私たちの代わりに島を復興させているよ。それだけで十分大きな仕事だよ」


 セアンの言葉を聞き、役員は嬉し涙を流した。そんな中、役所の偉い人がセアンたちを見て、歓喜の声を上げて近付いた。


「これはセアン様! コスタ様! ケアノス様! ライア様! ラージュ様! お久しぶりでございます!」


「久しぶり。今日はカイトにこの島を見せようと思って戻って来たよ」


「カイト? はてどなた?」


 偉い人はカイトを見て、セアンにこう聞いた。


「この少年は一体誰ですか? 見たことのない人ですが」


「運命の人。旅の途中で知り合ったの」


「ほうほう……何かとわけがありそうですな。ま、長話もあれですので、一度私の部屋へ向かいましょう」


 その後、カイトはセアンたちと共に偉い人の部屋へ向かうことになった。


 セアンたちの過去は話数をかけて書きますが、カイトの過去を書こうとは思っていません。設定として、カイトが両親を亡くす前は普通の少年で、普通の人生を過ごしていたため、大きなイベントも何もありませんので。決して書くのがめんどくさいとかじゃあありません。


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