修行と経験を積んだ結果
カイトはナルクを睨みながら、その場で立っていた。動じないカイトを見て、ナルクは不審な顔をしたが、しばらくして魔力を解放した。
「お前がどれだけ強いかどうか知らんが、お前は俺が殺す」
と言って、ナルクは両手に氷を纏い、巨大な拳を作り出した。カイトはそれを見て、刀を構えた。
「それがお前の攻撃方法か」
「そうだ。この攻撃であの世へ逝っても、俺を恨むなよ」
「安心しろ。そんな攻撃を受けても俺は死なないし、そもそも攻撃を受けない」
カイトの返事を聞き、ナルクは少しイラッとした。
「その生意気な口を動かないようにしてやる!」
「やれるもんならやってみろよ」
再び挑発するような口調でカイトが口を開いた。その言葉を聞いたナルクは叫び声を上げながら、カイトに接近して攻撃を仕掛けた。カイトは刀を使って攻撃を防御し、後ろに下がった。
「チッ、運がいい奴め」
ナルクは後ろに下がったカイトを見て、舌打ちをしながらこう言った。呼吸を整え、再びカイトに襲い掛かったが、カイトは反撃をせず、防御をしていた。
「おいおい、反撃するつもりがないのか?」
「お前の攻撃の手の内を調べてる。お前、手を凍らせて殴るだけしかできないのか?」
カイトの言葉を聞き、ナルクは小さな声で笑い始めた。
「殴るだけじゃないぜ。こんなこともできる!」
と言って、ナルクは右手をカイトに向けた。そして、右手の氷が勢いよく放たれた。
「どうだ! 遠距離戦もできるんだぜ!」
「そりゃーよかったな」
カイトは自身に向かって飛んでくる右手の氷を見て、刀を構えた。そして、接近したと同時に勢いを付けて刀を振り上げた。刃が当たった瞬間、右手の氷の向きがナルクの方へ向いた。その後、右手の氷はナルクに向かって飛んだ。
「は?」
ナルクは自分に向かって飛んでくる右手の氷を見て、何もできなかった。まさか、自分の攻撃が跳ね返されるなんて思ってもいなかったからだ。
「クソッ! そんなのってありかよ!」
そう言いながら、ナルクはバリアを張って飛んでくる右手の氷から身を守った。その隙に、カイトがナルクの背後に回って刀を振るった。
「ギャアッ!」
「悪いな、隙だらけだぜ」
一閃されて前に倒れたナルクに向かって、カイトはあくびをしながらこう言った。
攻撃を受けたナルクはすぐに立ち上がり、魔力を解放して傷の治療と右手に再び氷を発した。
「このガキ、俺を甘く見るんじゃねーぞ!」
「甘くは見てない。ただ、あまりにも弱いから哀れに見える」
カイトはナルクを見下すような態度をしながらこう言った。この言葉を聞き、ナルクの堪忍袋の緒が切れた。
「お前だけは絶対に殺す! 謝っても許さないからな!」
「謝るつもりなんてこれっぽっちもねーよ。いいからかかって来いよ」
カイトは刀を構え、怒りを爆発させるナルクに向かってこう言った。
ヴィーナスハンドのバリア発生器にいるライアとラージュは大丈夫だろうと思い、外に出ることにした。二人の姿を見たコスタは急いで監視室から外に出て、二人の元へ向かった。
「二人とも、バリア発生器の前にいなくてもいいの?」
「バリアの出番はなさそうだからね」
「今のところ、私たちが有利だからねー」
ラージュとライアはコスタにそう答えると、クラッチハートの海賊船を見た。
「ヴィーナスハンドを守ることも大事だけど、セアンたちを助けないと」
「私たちの助けはいらないって言われるかもしれないけど……久々に悪党相手に暴れたいわね」
「ラージュ、それが本音じゃないの?」
「ええそうね」
ラージュは笑顔でコスタにこう言った。コスタは呆れながらため息を吐いたが、クラッチハートから魔力の衝突を感じ、ライアとラージュにこう言った。
「サクッと終わらせるなら、ヴィーナスハンドを留守にしてもいいわね。私は監視塔から狙撃するから」
「分かったわ。援護お願いね」
「ええ。二人とも、あまり派手にやって相手の船を壊さないでね」
コスタはそう言って、ライアとラージュを見送った。
ナルクは拳を振り回しながらカイトに攻撃を仕掛けていた。だが、カイトは必要最低限の動きでナルクの攻撃をかわしていた。
クソッ! どうしてだ? どうして俺の攻撃が当たらない!
ナルクは心の中でこう叫んだ。何度攻撃を仕掛けても当たらない。連続して攻撃をしているが、まぐれでも一発は当たるだろうとナルクは思った。だが、まぐれは起きない。
「どうした? がむしゃらに攻撃しても俺に当たらないと意味がないぞ」
カイトの言葉を聞き、ナルクは思わず黙れと叫びそうになった。その中で、ナルクはあることを考えた。熱くなりすぎている。冷静さを失えば、判断を間違える。そう思ったナルクは攻撃の手を止め、大きく深呼吸をした。
「おいおい、どうした? お前が来ないなら俺の方から行くぞ」
カイトはそう言って、ナルクに接近した。その時の早さをナルクは目で追えなかった。いつの間にか目前に迫ったカイトを見て、ナルクは言葉を失っていた。
「な……早すぎる……」
「どうやら、俺とお前の力の差があまりにも開いているようだな」
「ふっ……ふざけるな!」
ナルクは魔力を解放し、手を覆っている氷を巨大化させた。そして、それを使ってカイトに攻撃を仕掛けた。
「またその攻撃か」
カイトは呆れたように小さくこう言うと、刀を上に上げた。刀の先が氷に触れた瞬間、氷は動かなくなった。
「え……あ……何で? 動かない……」
「魔力を使っているからな」
その言葉を聞いたナルクは動揺した。カイトからは魔力を感じていないのだ。もし、カイトが言葉通りに魔力を使っていたとしたら、感じることが難しいくらいの弱い魔力を解放しているのだ。
「ほ……本当に魔力を使っているのか? 何も感じないぞ」
「使っているさ。鍛えに鍛えた結果がこれだ」
驚くナルクにそう言った後、カイトは刀の先に発していた魔力を破裂させ、ナルクの氷を弾き飛ばした。周囲に氷の粒が舞う中、カイトは隙だらけのナルクに接近し、刀を振るった。
「命までは奪わない。しばらくそこで倒れてくれ」
カイトはそう言って刀を鞘に納めた。その直後、ナルクの腹から切り傷が開き、そこから大量の血が流れた。
「そ……そんな……」
大きなダメージを受けたナルクは自分が負けたと衝撃を受けながら、その場に倒れた。
ボムマサと戦っているセアンは、カイトがナルクとの戦いに勝利したことを察し、口笛を吹いていた。
「ヒュー! カイトやるぅ! 本当に強くなってるなー」
「戦いの最中だぞ! 集中しろ!」
ボムマサはカイトの方を見て口笛を吹いているセアンを見て、苛立ちながら火の魔力を放った。セアンは魔力を少しだけ解放し、風を発した。この風のせいで、ボムマサが放った火の魔力は消されてしまった。
「集中しろ? 雑魚相手に集中して戦ったら、すぐに終わっちゃうよ」
「ふざけているのか? これは命の取り合いだぞ!」
「そんなこと言われてもねぇ。あんたはどうやっても私には勝てないよ」
セアンはあくびをしながらボムマサの方を振り返った。明らかにバカにされていると察したボムマサは魔力を解放し、周囲に火の粉を発した。
「お前はここで爆殺してやる! 覚悟しておけ!」
「あんたみたいな雑魚が、私を倒せるわけがない。その爆弾を爆発させてみなよ」
セアンの言葉を聞き、ボムマサはにやりと笑った。
「後悔するなよ」
そう言って、ボムマサは周囲の火の粉を爆発させた。その結果、激しい破裂音と共に周囲が爆発した。ボムマサはバリアを張って爆発から身を守っていたが、前からセアンの魔力を感じ、動揺していた。
「嘘だろ……並大抵のバリアなら簡単に破壊できるのに……」
「私を他の海賊と一緒にしないでよ。今の私はあんたより強いんだからさ」
煙が晴れた直後、にやりと笑うセアンの顔がボムマサの目に映った。
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