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久々の海の上


 ランドレディースから出航して数時間が経過した。カイトは外に出て、海の風を浴びていた。修行をしていた二年間、ほぼ遺跡の中でソンウクたちと修行していたため、海を見ることはなかったのだ。


「久しぶりに海の上に出ると、海の上で感じる風って気持ちいいなー」


 小さく呟いていると、セアンが近付いて来た。


「やっほーカイト。久しぶりに海に出てどんな気分?」


「久しぶりって感じだな。修行の間、ほぼ遺跡の中にいたし」


「確かにね。私たちも修行していたときは、ずーっと海じゃない場所にいたし。何だかこの感じが懐かしいよ」


 と、セアンは笑いながらこう言った。カイトはセアンが持つ鍛え直したカトラスを見た。


「なぁ、実際にそのカトラスを使ったか?」


「これ? 試しに何回か凶暴なモンスターを相手に使ったよ。結構強い。やっぱりカーキョイの翡翠の力のおかげかもね」


 セアンはカトラスを鞘から抜き、刃をカイトに見せた。刃は少し緑に染まっているせいか、美しいと思わせる。そして、魔力のような力を感じさせた。


「このカトラスから魔力を感じる。結構強そうだな」


「そうだね。まだしっかり使ってないから、どんな威力があるか気になるなー。あーあ、早く変な海賊団と戦いたいなー」


「そんなことを言うなよ。そう言ったら、本当に変な海賊団と遭遇するだろうが」


「そーだね」


 カイトとセアンはそんなことを話し、笑い始めた。そんな中、見張りをしているコスタの声が聞こえた。


「皆大変。変な海賊団がこっちに向かって来ている」


 この言葉を聞いたカイトとセアンは口を開けて止まった。


「本当に来ちゃったね」


「ああ。でも、互いの修行の成果を見せる時が来たって考えてもいいんじゃねーの?」


「確かに」


 カイトとセアンはそう言うと、敵の船の確認をするために周囲を見回した。すると、望遠鏡を持ったケアノスが近付いて来た。


「あそこにいるわ。かぎ爪のようなドクロを描いたのが敵の船よ」


「どれどれ?」


 セアンはケアノスから望遠鏡を借り、敵の船の確認をした。


「ほーほー。あれが敵の船ですか」


「呑気なことを言ってないで、敵が攻撃を仕掛けて来る前にこっちも支度をしないと。久しぶりに海上戦をやるんだから、やり方を思い出さないと」


「ずーっとやってたんだから、脳に染みついていると思うよ。いつでもバリアを張れるように準備をしておいて」


「もうやってあるわよ。ライアとラージュが支度をしたわ」


「さっすが。あとは、コスタに狙撃の準備を促そう」


 セアンはそう言うと、通信機でコスタと連絡を始めた。


「コスター。狙撃の準備できてる?」


「とっくにできてるわ。で、どんな作戦で行くの?」


「向こうが仕掛けてくると思うから、近付いた瞬間に反撃する」


「カウンター戦法ね。私は船の上にいる奴を撃つわ」


「お願い」


 セアンはそう言うと、通信機具の電源を切ってカイトの方を見た。


「敵が接近してくるまで待とう。相手のことを知りたいし」


「ああ。だが、接近したらなんかしてきそうだな」


「だね。まぁ、やられたらやり返してやるだけよ!」


 と、セアンは小さく笑った。




 敵の船、クラッチハート海賊団の船員は、ヴィーナスハンドを見て声を上げていた。


「こんな所に船がいるぜー!」


「略奪だ! 強奪だ! お祭りだ!」


「反抗する奴はぶっ殺せ! その前に準備をしておけ!」


 船員たちは声を上げながら攻撃の支度をしていた。そんな中、船員の一人が望遠鏡を見て、声を上げた。


「うっげぇ! あれって……ピラータ海賊団のヴィーナスハンドじゃねーか!」


 この声を聞き、船員たちに動揺が走った。


「ピラータ海賊団……あいつらは確か、二年間何も動かなかったのに……」


「噂じゃ、ブラッディクローの幹部のロスさんに潰されたって聞いたけど」


「くそったれ! 俺たちで勝てるか?」


 一部の船員は、戦意を失って武器を捨てた。だが、一人の男が声を上げた。


「戦う前に勝負を諦めるな。あいつらは何年か動かなかった。何をしていたか分からないが、ロスさんにやられたんだ。弱体化しているかもしれないぞ」


「そ……そうですね、ナルクさん」


 ナルクと呼ばれた男は望遠鏡を手にし、ヴィーナスハンドを確認した。


「どうやら、俺たちの存在を奴らは察したようだ」


「ど……どうします?」


「反撃を受ける可能性が高い。バリアを張れるように準備をしておけ。大砲を撃たれても大丈夫のようにな」


 ナルクの指示を受けた船員たちは、すぐにバリア発生器の所へ向かった。ナルクは胸ポケットから煙草を一本取り出し、口にくわえて火を付けた。しばらく煙草の味を楽しんでいると、ヴィーナスハンドから大砲が放たれる音が響いた。


「仕掛けてきやがったな。バリアを発生しろ!」


 ナルクの声を聞き、クラッチハートの周りにバリアが発生した。バリアのおかげで大砲の直撃を避けることができた。


「さて、こっから反撃と行きますか!」


 飛んで来る大砲を見ながら、ナルクは魔力を解放した。




 セアンは次の砲弾を大砲に入れ、クラッチハートの海賊船を見た。


「あいつら、私たちの存在に気付いていたね」


「まーそうだろうな」


 カイトはクラッチハートの海賊船を見ながらこう言った。しばらくすると、カイトは魔力を感じた。


「何かが来る!」


 カイトがそう言った直後、上にいるコスタの悲鳴が聞こえた。カイトは外に出ると、上空に巨大な氷ができているのを見て驚いた。カイトの声を聞いたケアノスは外に出て、上空の巨大な氷に気付いた。


「何じゃありゃァァァァァ!」


「敵の攻撃かもしれないわ! 私に任せて!」


 ケアノスは魔力を解放し、高く飛び上がった。そして、素早くレイピアを振るって上空の氷を粉々に切り裂いた。


「ふぅ、やっぱり切れ味が違うわ」


 ケアノスはレイピアの刃を見ながらこう言った。カイトは粉々になった氷を見て、思わずすごいと呟いた。その後、カイトはクラッチハートの海賊船を見て、魔力を解放した。


「さて、俺たちも攻撃を仕掛けようぜ!」


「私も行くわ」


 ケアノスがカイトの横に立ち、こう言った。カイトは頷き、ケアノスと共にクラッチハートの海賊船へ向かった。セアンはその時の光景を見ており、声を上げた。


「あー! ケアノスばっかりカイトと一緒に行動してずるーい!」


 この時、通信機具の電源をオンにしていたためか、セアンの声がコスタや、バリア発生器の所にいるライアとラージュの所にも聞こえていた。


「そんなことを言ってる場合じゃないわよセアン」


「ここは私たちに任せて、セアンも敵の船に攻め込めば?」


 ライアの言葉を聞き、セアンは思わずこう言った。


「ホント? それじゃあお願い!」


 セアンはそう言うと、すぐに外に出た。そして魔力を解放し、セアンはクラッチハートの海賊船に向かって飛んで行った。




 カイトとケアノスはクラッチハートの海賊船の上に到着していた。船員たちはカイトとケアノスが接近してくることを把握していて、二人を取り囲むように構えていた。


「こっちに来やがった!」


「だけど二人だけだ」


「どうする? 俺たちだけで戦えるか?」


「戦えるか? 違う、戦うんだ!」


「行くぞ!」


 話を終えた後、クラッチハートの船員たちは一斉に襲い掛かった。


「カイト、修行の成果を見せてね」


「ああ。きっちりバッチリ見せてやるさ!」


 カイトはケアノスにこう言うと、刀を抜いて構えた。その時、カイトの迫力を見たクラッチハートの船員は動きを止め、たじろいだ。


「さぁ、行くぞ」


 カイトはそう言うと、目の前にいた船員に斬りかかった。攻撃の目標となった船員はすぐに我に戻って防御の構えを取ったが、カイトの攻撃の方が早かった。


 二年前より動きが早く、攻撃力も上がってる。カイト、強くなったわね。


 ケアノスはカイトが強くなったことを察し、心の中でこう思っていた。


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