それぞれの二年間
再開したカイトとセアンたちは、オババ様の家へ向かった。オババ様はセアンたちの姿を見て、嬉しそうな表情となった。
「おお。久しぶりじゃのう。見ない間にたくましくなりおって」
「えへへ。オババ様、久しぶりです」
セアンはそう言って頭を下げた。それに続いて、コスタたちも頭を下げた。その後、カイトたちは机を囲むように座った。
「じゃあ、私たちの方であの後、何が起きたか話すね」
「ああ。頼む」
カイトがセアンにこう言った後、セアンは話を始めた。
「私たちはあの戦い……ロスにやられた後、ロベリーに救われたの」
「ロベリーって……ゴイチ王国の!」
ロベリーの名前を聞き、カイトは驚いた。その話を聞いていたオババ様も目を開けて驚いた表情をしていた。
「ゴイチ王国と繋がりがあったとは」
「過去にブラッディークローの傘下の海賊団に襲われてたのを、私たちが助けたの。話を続けるね。ロベリーに助けられた後、私たちはゴイチ王国に住む鍛冶屋のおじいさんたちの元を尋ねたの」
「カイトは分からないと思うけど、あの戦いで私たちの武器はロスに破壊されたの」
ケアノスの言葉を聞き、カイトは驚き、セアンたちが持つ武器を見た。
「武器が壊されたって……じゃあ、今の武器は」
「セアン、話を続けて」
コスタに促され、セアンは話を続けた。
「武器を破壊されたから、鍛冶屋のおじいさんの元へ向かったの。デザートディッシュでカーキョイから貰った翡翠を使って、武器を直すことに成功したの」
「カーキョイの翡翠か。そうか、あのおかげか」
カイトはデザートディッシュであった意思を持つ翡翠、カーキョイのことを思い出した。そんな中、カイトはあることを疑問に抱き、セアンにこう聞いた。
「なぁ、そう簡単に武器って直るもんなのか?」
「簡単には行かないよ。鍛え直すのに二年はかかったんだから」
「二年か。相当難しい仕事だったんだろうな」
「でも、あの人たちはやりがいのあるいい仕事だったって言ってたよ」
ライアがお茶を飲みながらこう言った。そんな中、ラージュがカイトを後ろから抱きしめた。いきなり抱きしめられたため、カイトは驚いて声を出した。
「フフッ。久しぶりの反応ね」
「い……いきなり抱かれたらビビるぞ!」
「それよりも、何か気付かない?」
ラージュにこう言われ、カイトは過去のラージュの姿と今のラージュの姿を脳内で想像しながら見比べた。
「あれ? 筋肉が付いたか?」
「そう。武器が直るまで、私たちは近くのおっかない場所で修行してたの。強いモンスターがたくさんいたから、いい修行になったよ」
と、セアンは右腕を見せながらカイトにこう言った。
「それよりも……ウイークのことだが……」
ウイークのことが出て、セアンたちは動揺した。この時点で、セアンたちはカイトがウイークが死んだことを知っていないと思っていたからだ。
「あのね。ウイークはその……」
「ソンウクが教えてくれた。ウイークが死んだって」
「あ……うん……そう。ウイークはロスに殺されたの。私たちの目の前で」
「あの後、サディたちはどうなったんだ? 故郷に戻ったのか?」
カイトの問いに対し、ライアがこう言った。
「カイトの言う通り、故郷に戻って孤児院を開いたってメールが来てたよ。シーポリスも孤児院開業に手伝ってくれたみたい」
「そう……か。いつか落ち着いたら、ウイークの墓参りに行かないとな」
「カイトの言う通りだね」
セアンはそう言って、お茶を飲んだ。そんな中、フワウがセアンを見てこう言った。
「ウイークが死んだのは驚いたが……まさか、死因が殺害されただなんて思ってもいなかった。ウイークを殺したロスってのは強いのか?」
「ブラッディークローの幹部だから滅茶苦茶強い。だから、奴を倒すために私たちは強くなったの」
セアンは立ち上がり、強くなった姿をフワウに見せるように動いた。フワウはセアンの体つきを見て、にやりと笑った。
「二年前よりたくましくなったな。一度勝負したいところだが、今はそんな気分じゃないだろう」
「フワウの言う通りね。ゴイチ王国からランドレディースまで結構な距離があったし、少し休みたいわ」
ケアノスがこう言うと、フワウはにやりと笑った。
「じゃあ休んでいけ。カイトも久しぶりにセアンたちと一夜を過ごすんだし」
その言葉を聞き、セアンたちは笑みを浮かべた。その笑みを見て、カイトは今日の夜に何をされるか想像した。そんな中、あることが気になったライアはフワウにこう聞いた。
「ねぇ、もしかして……カイトと一線超えてないよね?」
この言葉を聞き、セアンたちははっとした表情になった。カイトも一人前の青年となった。だとしたら、そろそろ性欲を持つだろうと思った。だが、フワウは呆れた様子でこう言った。
「そんなことはない。一度、興味本位でしようとしたが、逃げられた」
その言葉を聞き、セアンたちは安堵の息を吐いた。カイトは少しだけ呆れた表情となったが、オババ様がカイトに近付いてこう言った。
「今晩の料理には精力が付く物をたーんと作ってやる」
「いえ、作らなくていいです」
カイトはオババ様に向かってこう言った。
その日の夜は、盛大な宴が繰り広げられていた。飲めや歌えの大騒動。村の中央のキャンプファイアーには両端に火が付いた棒を振り回す女戦士が派手な舞を行っていた。
「久しぶりに賑やかな夜になったなー」
カイトはそう呟きながら、村で作られているブドウのジュースを飲んでいた。そんな中、セアンがカイトに近付いて来た。
「カイトー。一緒に食べよー」
「セアン。何を持ってきたんだ?」
「ハッスルガーリックの素揚げ。とてもおいしいよ。口臭も気にならないにんにくだから、いくつ食べても平気だって」
「ハッスルガーリックか。フワウたちがよくそれを使った料理を作ってたな」
「なーんだ。知ってたの」
「ああ。知ってるさ。それを食べたら、精力も増すってな」
この言葉を聞き、セアンはそっぽを向いて小さく舌打ちをした。セアンはハッスルガーリックをカイトに食べさせて性欲を沸かせ、大人の関係になろうとしていたのだ。
私たち十九歳になったんだから、大人の階段を上ってもいいと思うのに。カイトってば、二年前と性格が全然変わらない!
と、セアンは心の中で悔しそうに呟いた。そんな中、半裸のコスタが背後からカイトに抱き着いた。
「カイト……体が熱い。火照ってる……」
「おわあああああ! コスタ、どうしてそんな格好をしてるんだよ!」
「だって熱いんだもん……」
この時のコスタの格好を見たセアンは、まさかコスタが派手に誘惑をするなんてと思っていた。だが、ケアノスがコスタを抱き寄せた。
「お酒の匂いで酔っちゃったのよ。コスタ、結構お酒に弱いから」
「そうか……」
そんな中、ライアが上からカイトに向かって降って来た。
「カイトー。何だか体中が熱くてとてもエッチな気分なの。このまま大人の階段を駆け上ろうよ」
「まだしないよそんなこと! つーか、お前はお前でどうしたんだ!」
カイトは襲い掛かろうとするライアを止めながらこう言った。そんな中、ラージュがライアの動きを止めた。
「ハッスルガーリックを何個も食べたらこうなったの。人間は欲が爆発したら大変なことをする生き物だから」
「そりゃーそうだけど……ライアの欲が爆発したらそうなるのか。気を付けないと」
カイトがそう呟くと、ケアノスから抜け出したコスタが再びカイトに抱き着いた。
「カイトー。助けてー。解放させてー」
「おわっ! コスタ、その前に服を着てくれ!」
「わー! コスタばっかりずるーい!」
コスタがカイトに抱き着いた光景を見たライアは、無理矢理ラージュの拘束から抜けてカイトに抱き着いた。そんな様子を見たセアンは、頬を膨らませた。
「もう! こうなったら私もエッチで過激に行ってやるんだから!」
と言って、下着姿になってカイトに抱き着いた。こんなバカバカしい光景を見たケアノスは、ため息を吐いた。
「また騒がしい日が始まるのね」
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