表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
313/430

それぞれのやるべきこと


 カイトがランドレディースに保護されて一ヶ月が経過した。ロスによって受けた傷はほぼ完治し、体を動かしても痛みを感じなくなっていた。だが、カイトはすぐにセアンたちと合流することは考えていなかった。カイトの方では、まだセアンたちの行方を掴めていないからだ。


 カイトは鍛錬のため、木刀の素振りをしていた。それを見ていたフワウは、声を上げた。


「太刀筋がよくなっている。だが、それでも勝てない奴がいるのか?」


「ああ。簡単にやられた。今の俺じゃあ、確実に勝てない」


 カイトは動きを止めてフワウにこう言った。フワウはこの世に強い奴がいるのかと思いながら、カイトに近付いた。


「セアンたちがどうなったのかも分からないから……少し不安だな」


「皆のことだから生きている……と、思いたい。最初にやられたの俺だから、あの後どうなったのか分からないんだ」


「そうか……生きていると、セアンたちと再会できると信じよう」


「そうだな」


 フワウの言葉を聞いたカイトは、安堵した表情になった。そんな中、カイトは強い魔力を感じた。


「この魔力……ソンウクか?」


「そのようだな。カイトの傷が治ったことを察したんだろう」


「解放したってことは、俺を呼んでるってことだよな? 一人であの物騒な遺跡の罠を何とかできるかな……」


「ソンウクたちには楽に会いに行けるぞ」


「マジか。そうか……出口を作ってくれたんだったな。ちょっと行ってくるよ」


 カイトはそう言うと、ソンウクたちの元へ走って行った。




 カイトは遺跡に到着すると、ソンウクが作った出口を使ってソンウクたちがいる部屋へ向かった。部屋の中央には、ソンウクたちがまるでカイトが来るのを待っていたかのように立っていた。


「オーッス! 久しぶりだなカイト!」


「ああ。皆元気そうだな」


「ヘヘッ。オラたちは生き物じゃないけど、まぁ元気だ!」


 ソンウクがこう言う中、ズジルダが口を開いた。


「カイト、俺たちは今回の状況を把握している。お前たちがどこかの海賊団と戦ったことも、お前たちが仇と狙う海賊の幹部に倒され、ウイークも殺されたと」


 この言葉を聞き、カイトは目を丸くして驚いた。カイトは最初に倒されたため、ウイークを殺されたことを知らなかったのだ。


「え……ウイークが……」


 カイトの様子を見たザムチャンはカイトに近付き、肩を叩いた。


「落ち着いて聞いてくれ。俺たちは魔力を使って周りのことを見ることができるんだ。お前たちの強い魔力を感じて、その戦いの様子を見ていたんだ。そしたら……ロスと言う奴がウイークを……殺した」


 ザムチャンの話を聞き、カイトは両膝をついた。ウイークのことを思い出した後、カイトは大声で泣いた。ソンウクはカイトに近付き、様子を見た。


「カイト、落ち着くまで泣くんだ。落ち着いたら、話をしよう」


「大丈夫だ……かなり動揺したけど……このまま泣いていたら、ウイークに笑われる」


 ソンウクにこう言葉を返し、カイトは立ち上がった。カイトは涙を拭き、ソンウクにこう言った。


「皆、頼みがあるんだ」


「頼み? セアンたちと合流するのか? セアンたちは武器を失ったから、武器を直すためにゴイチ王国へ向かったぞ」


「セアンたちとはまだ合流しない。というか、セアンたちは無事だったのか。それを先に話してくれ」


「へへへ。すまんすまん。だけど、まだ合流しないって……そうか、修行するのか」


 ソンウクの言葉を聞き、カイトは頷いた。


「ああ。このまま奴らを追いかけても、また返り討ちにされる。だったら、修行して強くなって……あいつを、ロスを倒す」


 カイトの話を聞いた後、ソンウクたちは頷いた。


「だから、オラたちに稽古をつけてもらいたいんだな。いいぜ。やるとしたら、徹底的に修行するからな」


「ああ。お願いします!」


 カイトは頭を下げてこう言った。ソンウクはカイトを見て、にやりと笑いながらこう言った。


「さて、それじゃあすぐに修行すっか!」




 一方、セアンたちはゴイチ王国にいた。鍛冶屋の情報を聞き、すぐに鍛冶屋がいる場所へ向かった。険しい山道を乗り越え、セアンたちは鍛冶屋が住む家に到着したのだが、その家はボロボロで、本当に人が住んでいるのか疑いたくなりそうになった。だが、煙突からは煙が出ていて、家の横には車が置いてあった。


「人は住んでそうだね」


 ライアがこう言うと、セアンが家の玄関まで近付き、チャイムを押した。


「ごめんくださーい。私たち、ピラータ姉妹なんですけど」


 ケアノスはセアンの行動を見て驚いたが、しばらくして玄関が開いた。


「はい? どちらさんですか?」


 と、玄関を開けた老人がセアンにこう聞いた。ケアノスはその老人に近付き、頭を下げてこう言った。


「いきなりすみません。私たち、腕のいい鍛冶屋の話を聞いてここに来ました」


「菓子屋? バカ言っちゃいけないよ。私らは鍛冶屋だよ」


「あの……菓子屋ではなく鍛冶屋の話を聞いたんですけど……」


 ケアノスの話を聞き、老人は声を上げた。


「ああ。私らの話を聞いたのね。そうだよ。私らが腕のいい鍛冶屋。他の人はフリード鍛冶屋って勝手に呼んでるよ。ま、とりあえず上がってちょーだい」


 老人はセアンたちを家に上がらせ、案内を始めた。


「最初に名乗っとかないといけないねぇ、私はラシーム。お客の相手をするのが私の役目」


「そうなんですね」


 ラージュは足元がおぼつかないラシームを見て、不安を覚えながらこう言った。ラシームが世間話をしながら歩く中、扉を開けた。


「カートゥーさん。お客さんだよ」


 部屋の中にいたのは、メガネをかけ、頭の頂点に一本だけくるっとした毛が生えた老人、カートゥー。彼の手には、酒瓶が握られていた。


「おう? どしたんだいラシームさん? おおっ、どうしたんだいこの別嬪さんは?」


「お客さんだよ。武器の手入れをしてほしいんだって」


「何? 武器のおトイレ? 武器のトイレなんてそんなんないよ」


「違うよ、乳のお手入れ!」


「どっちも違います! 武器を直してほしいんです!」


 聞き間違いをする二人を見て、思わずケアノスは叫んだ。ケアノスの叫びを聞き、カートゥーは驚いた表情をした。


「武器の手入れね。そいじゃ、まず武器の状態がどんなのか見せてちょーだい」


「こんな状態です」


 コスタは持っていた武器の残骸を、カートゥーの近くの机の上に広げた。武器の残骸を見たカートゥーは、驚きの声を上げた。


「こりゃま酷い状態だ。買い直した方が早いけど……いい素材だねぇ」


「亡くなった父から引き継がれるように使っていたんです」


 ラージュの言葉を聞き、カートゥーが真剣な表情に変わった。


「亡くなったお父さんの形見ねぇ。それじゃ、真面目にやらないといけないねぇ。ラシームさん。あの三人を連れてきて」


「あいよ」


 ラシームは返事をして、席を外した。それからしばらくして、ラシームは三人の老人を連れて戻って来た。


「連れて来たよ」


「やっと来たかいボス」


「オイーッス。で、どんな武器を直すんだい……ん? あらま、ピラータ海賊団じゃないの。珍しいお客さんが来るもんだねぇ」


 ボスと言われた老人は、セアンたちに近付いた。すると、セアンの右手を持って見始めた。


「ずっと武器を使っていた手だ。他の女の子の手とは違う。相当あの武器を使っていたんだね」


「はい」


「愛着を持ったか、それ以上の感情を持って使っていたようだね。分かった。何が何でも治してみるよ。このフリードのボス、イカチョースケとその仲間に任せなさい」


 イカチョースケは胸を張ってこう言った。その後ろにいたメガネをかけた老人と、少し太めの老人が武器を見た。


「タカブさん。この武器、見てどう思う?」


「私は結構いい素材を使っていると思いますよ。ナカモさんはどう思いましたか?」


「同じ考えですよ。それと同じくらいいい素材じゃないと直らないと思いますけど……ま、我々の力があれば、どうにかなりますよ」


 二人の話を聞き、セアンたちはどうにかなりそうだと思った。そんな中、コスタがリュックから翡翠を取り出した。


「これがあれば直ると思いますが」


 翡翠を見て、フリードの五人は驚きの声を上げた。


「あら。あらあらあら。これはデザートディッシュの翡翠じゃないの。久しぶりに見るなー」


「若い頃は、よくここの翡翠を取っていたもんよ」


「私らは歳とってジジイになりましたが、翡翠は変わりませんねぇ」


 などと、懐かしむように声を漏らした。イカチョースケはセアンたちの方を見て、こう言った。


「これさえあれば武器も直ります。ですが、相当時間がかかりますよ」


「そうですか……でも待ちます。武器ができるまで、どこか修行できる場所があればいいんですけど」


 セアンの言葉を聞き、ラシームが何かを思い出したかのように声を出した。


「だったら、私らの訓練場を使いなさい。ま、地下に案内しますよ」


 ラシームはそう言って、セアンたちを地下に案内した。フリードの鍛冶屋の地下は近代的な設備が整っているトレーニングルームになっていた。それを見たライアは驚きの声を上げつつ、周囲を見回した。


「すっごーい! どうしてこんなもんがあるのー?」


「武器の試し切りを行うために私らが作ったんです。魔力を使って模擬的な敵を作ることができるんです。もちろん、強さの設定もできますよ」


 ラシームがこう言って、施設の捜査を始めた。すると、目の前にあるリングの上に魔力で作られたモンスターのようなものが現れた。


「武器ができるまで、何年かかかると思いますよ。でも、その時間を使って修行ができますよ」


「ええ。これを使えば、私たちもっと強くなれるかも」


 セアンの言葉を聞き、コスタたちは頷いた。


「うん。上手く使えばの話だけど」


「私たちなら何とかできるわ」


「さて、皆で強くならないと!」


「納得するまで強くなるわよ。さぁ、修行を始めるわ!」


 その後、セアンたちはリングの上に上がった。ラシームはモンスターと戦い始めるセアンたちを見て、頑張んなさいと呟いた。




 カイトはランドレディースでソンウクたちと修行を始めた一方、セアンたちはフリードの鍛冶屋の地下で修行を始めた。それぞれが強くなるため、力を得るために動き出した。激しく、辛い修行が始まり、二年の時が流れた。


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ