悲劇が去った後で
ロスはウイークを殺した後、茫然としているセアンたちの方を向いた。
「愛する彼氏がくたばって、知り合いもくたばったから茫然としちまったか。ま、あんなえげつない光景を見たら誰だってそーなるわな」
ロスはあくびをしながらそう言うと、魔力を解放してセアンたちを吹き飛ばした。その後、倒れているデルマグの方へ向かった。デルマグは血を吐きながら、ロスの顔を見上げた。
「ろ……ロスさん……」
「派手にやられっちまったねー。こりゃー酷い傷だ」
軽い口調でロスはこう言っているが、デルマグはこれからどうなるか察しており、歯を食いしばっていた。デルマグの表情を見ていたロスは、にやりと笑った。
「イコルパワーはどこだ?」
「船長室だ。こんなにボロボロになったから……どこにあるか分からないが」
「とりあえず探すわ。それじゃ、ばいばーい」
と言って、ロスは魔力を解放し、デルマグに向かって槍を突き刺した。攻撃を受けたデルマグの体はバラバラに吹き飛び、体の破片が海へ落ちて行った。
「さてと……めんどいことになっちまったなー」
ロスはめんどくさそうにあくびをしながらイコルパワーを探し始めた。そんな中、シーポリスの戦士たちがロスを囲んだ。
「んー? 俺とやるのか? やるなら死ぬ覚悟があるんだろうな?」
ロスはにやりと笑いながらシーポリスの戦士たちを見回した。シーポリスの戦士たちは悲鳴を上げ、逃げて行った。逃げ出したシーポリスを見たロスは再びイコルパワーを探し始めた。数分後、ロスはイコルパワーを見つけ出し、中を調べた。
「うんうん。改良はしてあるようだ。こりゃーいい」
ロスは改良されたイコルパワーを持ち出し、乗って来た船に戻ろうとした。だが、シーポリスの戦士たちがロスに向かって銃で発砲した。
「おいおい、そんなもん使ったら袋に穴が開くだろうが」
飛んでくる弾丸を見ながら、ロスは魔力を解放してシーポリスの船の一部を爆破した。爆発に巻き込まれたシーポリスの戦士たちは周囲に吹き飛んだ。
「さーてと、帰る前に……遊んで行くか」
と言って、ロスは更に魔力を解放してシーポリスの船を破壊しようと企んだ。だが、ツリーが船から飛び上がり、ロスの近くに着地した。
「あんた! これ以上暴れると私が許さないわよ!」
ツリーは強気な態度でこう言った。メリスはいきなりツリーが動いたため、慌ててツリーを助けに行こうとした。だが、サマリオがメリスを止めた。
「急いで行っても間に合わない! ここは私がツリーを助けに行く! メリスはセアンたちを探してくれ!」
「サマリオさん……気を付けてください!」
「ああ」
サマリオは話を終えた後、急いでツリーの元へ向かった。
ツリーは仁王立ちでロスの前に立っていた。強気な発言をしたのだが、ツリーの両足は震えていた。
「何か言いなさいよちんちくりん! 私はシーポリスの小さな魔女よ! これ以上暴れたら、命はないと思いなさい!」
ロスは茫然とツリーを見ていたが、しばらくして大きな声で笑い始めた。
「アッハッハ! 小さな魔女が相手か! こりゃー俺でも勝てる気がしないや。ま、目的は果たしたし、ここは大人しく帰るとしますか」
と言って、ロスは乗って来た船に乗って戻って行った。ロスが去った後、ツリーは緊張の糸が切れ、その場に崩れるように座った。
「た……た……助かったぁ~」
「ツリー!」
ツリーは後からやって来たサマリオの言葉を聞き、泣きながらサマリオに抱き着いた。
「うわァァァァァん! 怖かったよォォォォォ!」
「怖いならあんな奴に立ち向かうな。どうしてお前を逃したのか分からないが……」
「とにかく生きてたのが奇跡よ!」
ツリーはそう言いながら、ずっと泣いていた。サマリオはため息を吐いた後、ボロボロになったエンデルングの海賊船を見て呟いた。
「大変なことになってしまったな……」
サマリオは重傷で行方不明になってしまったカイト、ロスからの追い打ちを受けた挙句、武器を失って行方不明になったセアンたち、そしてウイークを失って悲しんでいるサディたちのことを考えた。
セアンは漂流の中、我に戻った。
「皆! 我に戻って! 早く戻ってよ!」
我に戻ったセアンは茫然としているコスタたちに声をかけた。だが、何度声をかけてもコスタたちは我に戻らなかった。セアンはコスタたちの頬を叩き、無理矢理我に戻した。
「セアン……あ……」
コスタは今の状況を把握し、言葉を失った。ライアはウイークがロスによって殺された光景を思い出し、大声を上げた。
「うわあああああ! ウイークが……ウイークが!」
「これ以上叫んでもウイークは生き返らないわよライア。動揺するのは分かるけど……少し冷静になりましょう……」
ラージュはそう言っているが、手足を震わせていた。ラージュもまた、ロスに対して怒りを爆発させているのだ。ケアノスは咳ばらいをし、動揺した空気を元に戻した。
「とにかく今はどうやってサマリオたちの所に戻るか、カイトをどうやって探すか考えましょう」
「ケアノスの言う通りだね。先に今はサマリオたちの元に戻ることを専念しよう。ヴィーナスハンドもそこにあるし、一度サマリオたちの所に戻ってから、カイトを探そう」
セアンは周りを見ながらこう言った。ライアは海の表面を叩きながら、セアンたちにこう言った。
「ねぇ、どうやってこのボロボロないかだもどきを動かすの? 風を受ける帆もないし……」
ライアの言葉を聞き、セアンは座り込んだ。
「うーん……どーしましょ」
「どーしましょ。じゃないわよ。真剣に考えて」
ケアノスはセアンの頭を叩いた。そんな中、コスタが何かを見つけて声を出した。
「ねぇ皆……あれを見て!」
「あれ? あ……船!」
ラージュの言葉を聞き、セアンとケアノスはコスタが指を指す方向を見た。そこには、大型の船があった。
「ラッキー! どこかの船か分からないけど、助けてくれるかな?」
「変な船じゃなければいいわ。私たちに気付いてくれればいいけど」
「とにかくここにいるってことをアピールしよう! ヘールプ! ヘェェェェェルプ!」
ライアは近くにあった木片を持ち上げ、大きく振り上げた。しばらくすると、大型の船はセアンたちに近付いて来た。
「よっしゃー! こっちに来る!」
「気付いてくれたみたいね。親切な人だといいけど」
安堵の息を吐きながらケアノスはこう言った。そんな中、コスタは船に描かれた紋章を見て、驚きの声を上げた。
「ねぇ……あの紋章って……ゴイチ王国の!」
コスタの言葉を聞き、セアンたちは目を丸くして驚いた。
「本当だ! それじゃああれって、ゴイチ王国の船ってこと?」
「ロベリーの知り合いが乗ってるかも!」
「その可能性が高いわね。にしても、本当にラッキーね」
ラージュがこう言った後、ゴイチ王国の船はセアンたちに近付いた。そして、船の上から梯子が落ちてきた。
「皆! 早くこの梯子を使って上に来て!」
上から聞こえた声を聞き、セアンたちは更に目を丸くして驚いた。
「今の声って……まさか……」
ライアが驚きの声を上げた直後、上からロベリーが顔を見せた。
「早く上がって、皆!」
「ロベリー!」
ロベリーがいることを知ったセアンたちは、急いで梯子を上り、船の上にいたロベリーに抱き着いた。
「うわァァァァァん! 助かったよォォォォォ!」
「助けてくれてありがとう! 本当に助かったよォォォォォ!」
セアンとライアは泣きながらロベリーを抱きしめていた。コスタとケアノス、ラージュはただ静かに涙を流していた。ロベリーはただ泣き叫ぶセアンたちを見て、この光景を見て驚く部下にこう言った。
「大変なことがあったみたいね……ここ数日間で何が起きたか調べて」
「分かりました。ですが、セアン様たちはどうしますか?」
「しばらくこのままで。何か大変なことが起きたってのは分かる。だけど、今はセアンたちが落ち着くまでこのままでいさせて」
ロベリーの言葉を聞き、ロベリーの部下は分かりましたと返事をした。
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