デルマグとの戦いに決着を
魔力を解放したデルマグは炎の翼を作った。カイトはこけおどしではなく、何らかの攻撃の準備だと考えていた。
「死ねェェェェェ!」
デルマグは叫びながら、炎の翼から生えている羽をカイトたちに向けて放った。
「やっぱりこういう仕掛けがあったか!」
「そんなことを言ってる場合じゃないわよセアン! バリアを張るから、後ろに下がって!」
ケアノスはバリアを張って飛んで来る火の羽の攻撃を防いだ。しかし、火の羽はケアノスが予想していたよりも硬く、あっという間にケアノスが張ったバリアにひびが入った。
「クッ! 結構やばいわねあれ。バリアを張り続けてたら、いずれ壊れるわ」
「私が力を貸すわ!」
ライアがケアノスに近付き、魔力を注いだ。そのおかげでケアノスが張るバリアのひびが消えた。その光景を見ていたデルマグは攻撃を止め、カイトたちを見ながら鼻で笑った。
「このまま押し切って殺してやる」
そう言うと、デルマグは炎の翼を大きく動かした。その時、カイトたちに向かってゆっくりとした動きで火の羽が降った。
「何をするつもりなの?」
「とにかく俺が撃ち落とす! 皆、離れてくれ!」
そう言うと、カイトは左手に魔力を発し、地面に向かって叩きつけた。その直後、地面が急に凍り、浮き上がる形で氷柱が現れた。
「火の羽を撃ち落とすつもりね。カイト、ナイスアイデア」
セアンは浮き上がる氷柱を見てこう言った。その後、氷柱は上に向かって飛び上がり、デルマグが放った火の羽に命中した。命中したと同時に、火の羽は破裂した。
「あの羽は爆弾にもなるのね。結構厄介だわ」
コスタはスナイパーライフルを構えながらこう言った。そして、デルマグの隙を見て引き金を引いた。
「狙撃か!」
発砲音を聞いたデルマグは炎の羽を動かし、コスタが放った弾丸を防いだ。
「フッフッフ……この翼を攻略する方法はないぞ。どうする? ピラータ姉妹」
と、デルマグは勝ち誇ったかのようにこう言った。だが、バリアの中にいたはずのラージュの姿が消えていた。
「あれ? 一人いないような……」
「後ろががら空きよ!」
大剣を構えたラージュが、叫びながら大剣を振り下ろした。この強烈な一撃デルマグに命中し、地面に叩きつけた。
「ガッハァッ!」
悲鳴を上げながら、デルマグは地面にめり込んだ。攻撃を受けたせいで、デルマグから発していた炎の翼は消滅した。
「ナイス、ラージュ!」
「うし、俺たちも行くぞ!」
今がデルマグを倒すチャンスだと考えたカイトとセアンは、武器を持ってデルマグに接近した。
「グッ……クッ……クソ……」
デルマグは立ち上がり、迫って来るカイトとセアンを睨んだが、コスタが放った弾丸がデルマグの右肩を撃ち抜いた。
「ガッ!」
「あんた、一対多数で勝てると思ってるの?」
セアンはそう言うと、デルマグに向かってカトラスを振り回した。セアンの連続攻撃を受けたデルマグは悲鳴を上げながら後ろに下がるが、刀を構えたカイトが前に出ていた。
「グッ!」
「これで終わらせてやる!」
カイトは叫びながら刀を振り下ろし、デルマグにとどめを刺そうとした。だが、デルマグはカイトの攻撃に合わせて後ろに下がった。それでも、カイトの刀の先端はデルマグの体に小さな切り傷を付けた。
「チッ、まだ動けるのかよ」
「これでも船長だ……お前らみたいな小童の攻撃を受け続けて……くたばるわけにはいかないんだよ!」
デルマグは叫びながら魔力を解放した。再び炎の翼が現れ、魔力を解放した際に散った火の羽がカイトやセアン、ラージュに付着した。
「なっ!」
まずいと思ったカイトたちだったが、そう思った瞬間に火の羽は破裂した。
ケアノスとライアはバリアを消し、武器を持って走っていた。
「あの野郎! まだあんな力を持ってたの!」
「みたいね。でも、焦らないでライア。セアンたちはやられてない」
冷静にケアノスはそう言うと、魔力を解放して強風を発し、火の羽の破裂のせいで発生した煙を吹き飛ばした。煙が晴れた直後、デルマグは自身に迫って来るケアノスとライアを見た。
「まだ来るか!」
デルマグは二本の剣を構えながら、炎の翼を動かした。ケアノスはもう一度強風を発し、自身に迫る火の羽をデルマグの方へ吹き飛ばした。
「グッ! 仕方ない!」
デルマグはそう言うと、火の翼を消した。それと同時に、火の羽も消滅した。火の羽の破裂に巻き込まれなくてよかったと思ったデルマグだったが、上空からライアが襲い掛かって来た。
「ケアノスだけがあんたの敵じゃないよ!」
「ガハッ……」
ナイフの攻撃を受けたデルマグは、後ろに下がった。攻撃をした後、ライアは後ろに下がった。
「後はお願いね。カイト、セアン!」
この言葉を聞いたデルマグは、火の羽の破裂で倒れたはずのカイトとセアンが動いていることを察し、驚きの声を上げた。
「なっ……何故立っている! お前らは火の羽の爆発でやられてはずじゃあ!」
「あんな爆発で私たちが倒れると思ったの?」
「あれ以上の攻撃を受けたことがある。あんなもん、大したダメージじゃねーよ」
カイトとセアンはそう言うと、デルマグに向かって武器を振るった。デルマグは攻撃を受け、宙に舞った。その時、ラージュは飛び上がって宙に舞ったデルマグに接近した。
「お……お前も動けるのか……」
「大した傷じゃないわよ。それじゃ、これで終わりにするわね」
ラージュはそう言うと、デルマグに向かって力を込めて大剣を振り下ろした。
「グアアアアアアアアアア!」
デルマグは悲鳴を上げながら床に向かって吹き飛んだ。床にめり込んだデルマグは、何が何でも立ち上がろうとしたのだが、体を動かすほどの体力がなかった。あったとしても、体を動かした時に傷が痛むため、まともに動くことはできないとデルマグは考えた。
「こんな……はずでは……」
デルマグはそう呟き、気を失った。
治療していたウイークとメリスは、デルマグの魔力が消えたことを察知した。
「うっし! カイトたちが勝ったんだ!」
「ええ。これでエンデルングとの戦いも終わりましたね」
二人の言葉を聞き、シーポリスの戦士たちから歓声の声が上がった。サマリオは戦士たちの方を向き、こう言った。
「落ち着け。戦いには勝利したが、まだやることがあるだろう」
「そうでしたね。後片付けがあるんだった」
「勝利に酔いしれるのは、その後ですね」
「ふぃー、やっと終わったー」
戦士たちは気を抜いた声を上げながら、ボロボロになったエンデルングの船へ向かった。そんな中、一人の戦士が何かを見つけた。
「あり? なんか変なちっこい船がこっちに向かって来ているぞ」
「ちっこい船? 漁師か?」
「この辺はモンスターが出るから、漁師はここまで来ないって聞いているぞ」
「じゃあ何だあれは?」
戦士たちが話をする中、一人の戦士が望遠鏡を使って小さな船を見た。そして、声を上げて驚いた。
「う……うわぁぁぁぁぁ! あれは……ブラッディークローの幹部……ロスだ!」
戦士の驚く声を聞いたカイトたちは、すぐに立ち上がった。
「クッ……まさかこんな時に幹部の一人が来るなんて……」
「カイト、そんなことを言ってる場合じゃないよ。向こうから来てくれるんだから、相手しないとね!」
「魔力がないから……苦戦すると思うけど……」
コスタが苦しそうにこう言うと、武器を持ったウイークがカイトたちの元にやって来た。
「俺がいるぜ。安心しな」
「ウイーク。怪我は大丈夫なの?」
「すぐに治ったさ。さて、幹部の一人を皆で倒そうぜ」
ウイークは二本の剣を鞘から抜き、近付いてくるロスの船を睨んだ。カイトたちも武器を持ち、戦いの支度をした。
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