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危険な密室


 ウイークは双剣を構え、イヤルを睨んでいた。ウイークは自身の性格を把握している。本当なら、すぐにでもイヤルに襲い掛かって攻撃を仕掛けたいのだが、現状を把握してそれができなかった。イヤルは自分が戦いやすいように氷の空間を作り、ウイークとイヤルを閉じ込めたのだ。


「ねぇ、どうして来ないの? 私をじらして楽しませるつもり?」


「そんなつもりはねーよカマ野郎! クッソ! こんな奴の相手をするなんてなぁ……」


「そんなことを言わないでよいい男。二人っきりで楽しみましょうよ」


 と言って、イヤルは剣を持ってウイークに迫って来た。ウイークは二本の剣を構え、迫ってくるイヤルの攻撃を防いだ。


「あらん。間近で見るといい男」


「うわっ! 俺をガン見するな!」


 ウイークは悲鳴を上げながら、イヤルの腹を蹴った。蹴り飛ばされたイヤルは氷の壁の方へ移動し、激突しないように態勢を整えた。


「さっきの蹴りは痛かったわよ~ん。私、痛いのは嫌いなの」


「俺もお前みたいなのは嫌いだ」


「嫌いなのは今だけ。これから好きにさせるわよ~」


 イヤルはウイークに向かってウインクをすると、猛スピードでウイークに接近した。攻撃が来ると察したウイークは魔力を解放し、火の壁を作った。


「いやん。そんな物があったら突っ込めないわ」


 火の壁を見たイヤルは途中で速度を落とし、地上に降りた。その後、火の壁をまわってウイークに接近しようとしたのだが、ウイークは攻撃の構えを取っていた。


「そう来ると思った」


「じゃあ何で来た?」


「あなたの顔を見るためよ」


「気持ち悪いことを言うなよ」


 ウイークはそう言って、イヤルに攻撃を仕掛けた。イヤルは剣を使って攻撃を防御し、剣を動かしてウイークの攻撃を流した。


「クッ!」


 イヤルの動きを見て、ウイークは察した。イヤルは攻撃を受け流すのが得意だと。


「どんな攻撃も、剣一つさえあれば受け流せるわ」


「それじゃあこいつはどうだ!」


 と言って、ウイークは左手に魔力を出し、雷を発してイヤルに攻撃を仕掛けた。イヤルが使う魔力の属性は水。これなら自分に有利な状況だとウイークは思っていた。しかし、ウイークが思っていた通りにならなかった。


「雷対策はちゃーんとやっているわよ~」


 イヤルはそう言うと、氷の壁を発してウイークが発した雷を防御した。強い魔力で作られた氷のため、ウイークの雷は完全に塞がれた。


 しかし、ウイークは攻撃を諦めていなかった。ウイークは右手の剣に魔力を込め、刃の周りに炎を発した。


「氷ならこいつで上等だろ!」


「ふっふーん。やるならやってみれば?」


 イヤルの不審な笑みを見て、ウイークは氷を溶かすのを止めて後ろに下がった。イヤルはウイークの姿を見て、驚いた表情をした。


「あら。何か察したのね」


「氷を溶かして何かするつもりだったんだろ?」


「正解。残念ね、氷が溶かされた時、わざとあなたを濡らして凍らせようとしたんだけど」


「やべーことを考えるなよ」


 ウイークはため息を吐き、開放していた魔力を抑えた。イヤルもため息を吐き、剣を構え直した。


「結構粘るわねぇ。早く倒されてほしいんだけど」


「うっせーよ。だったらテメーが倒れろよ。そうすれば、この氷の壁が消えるだろ」


「だったら私が温めてあげましょうか?」


「断固拒否する。とびっきりの美人が相手ならいいんだがな」


「そんなことを言わないでよ。最期の時は私が看取ってあげるから」


「そいつは勘弁だ。それと、俺はこんな所で死にたくねーよ!」


 ウイークはイヤルに飛びかかり、二本の剣を振るった。イヤルは攻撃を受け流しつつ、攻撃の隙を見計らった。


「ふふっ。真剣な顔も素敵ね」


「ウゲェッ! そんなことを言うな!」


 ウイークは二本の剣を振り下ろすと、後ろに下がった。様子を見ようとしたのだが、イヤルはウイークに接近しようと走り出していた。


「逃がさないわよイケメン!」


「グッ! 来るんじゃねぇ!」


 ウイークは魔力を解放し、雷を発した。イヤルは再び雷を発して攻撃するつもりかと察し、高く飛び上がった。そして、氷の天井に剣を突き刺した。


「これで雷は当たらないわ」


「何が何でも当ててやるぞ!」


 にやりと笑いながら、ウイークはそう言った。イヤルはどうしてそんな笑みを浮かべるのだと思っていたが、すぐにその理由は判明した。ウイークが発した雷は地面を走り、イヤルの真下に移動して勢いよく上に伸びた。


「なっ……」


「俺の雷で痺れてろ」


 ウイークがそう言うと、雷はイヤルに命中した。




 休憩しているカイトたちは、ウイークとイヤルの魔力に異変があったことを察し、顔を上げていた。


「何かあったみたいだね」


「ウイークが強い魔力を使ったのかな」


 セアンとライアはチョコバーを飲み込んでこう言った。カイトはお茶を飲み、イヤルが作った氷の空間を見た。


「多分ウイークが攻撃したと思う。この一発で倒れたらいいんだけどな」


「そうはいかないわよ。今、私たちと戦っているエンデルングの連中は全員、イコルパワーを持っているわ」


 ケアノスの言葉を聞き、カイトは確かにと思った。


「もしかしたら、ウイークが追い詰めても……」


「多分イコルパワーを使うわね」


 ラージュはため息を吐いてこう言った。この時、カイトはラージュの心情を察した。イコルパワーの対策法を持っていたとしても、すぐに使える状況ではない。助けることができないと知り、何もできない自分を責めていると。そう思ったカイトは、ラージュに近付こうとしたが、ケアノスはカイトを止めて首を横に振った。


「何も言わない方がいいわ。慰めの言葉だと思っても、それが人に伝わるってわけじゃないから」


「ああ……そうだな……」


「でも、ラージュを慰めようとしてくれてありがとう」


 ケアノスは静かにこう言った。カイトは何も言わず、頷いて返事を返した。




 ウイークは雷を浴びて黒焦げになっているイヤルを見て、ため息を吐いていた。イヤルに大きな一撃を与えたが、イヤルが作った氷の壁は解けることはなかったのだ。


 クソが。こいつを倒しても氷の壁は消えないのか。だとしたら、まだこいつは戦えるってわけか。


 ウイークは心の中でこう思った。そう思っていると、黒焦げになったイヤルが立ち上がった。


「うふふ……今の攻撃はいい一撃だったわよ~」


「それだったらくたばってろよ。まだ倒れねーのかよ」


「私はまだ倒れないわよ。でも、今のはきつかったわ。骨も痛くて動かすのもやーっと」


 イヤルはそう言うと、イコルパワーを取り出した。ウイークはすぐに火の魔力を発してイコルパワーを壊そうとしたのだが、イヤルは素早くイコルパワーが入った注射器を腕に刺し、注入した。


「ふっふぅ……これであなたを始末する準備は万端」


「なーにが万端だよ! お前、死んじまうぞ!」


「イケメンと一緒に死ねるなら、本望よ」


「俺は本望じゃねーよ!」


 ウイークは言葉を返すと、剣を持ってイヤルに攻撃を仕掛けた。イコルパワーの力が発揮されない今なら倒すことができると考え、行動を起こしたウイークだったが、ウイークが予想したよりも早くイコルパワーの効果が発揮された。


「あぁ……あああああ! 体中から力が溢れて来るわァァァァァ! あぁ、体中ドキドキするわァァァァァ!」


「チッ、異様さが更に増しやがったな!」


 ウイークは後ろに下がり、魔力を解放して火や雷を発して攻撃を仕掛けた。だが、どの攻撃も体が肥大化したイヤルには効かなかった。


「火や雷を受けても痛くない。うふふ。これならあなたを好きなようにできるわ。さぁ、もっともっと楽しみましょう!」


 不気味な笑みを浮かべながら、イヤルはウイークに近付いた。


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