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ピラータ姉妹の過去


 これは、カイトがこの世界に転生する十年以上前の話である。


 ピラータ姉妹はサビナという島の偉い人の娘だった。父母共に真面目で優しく、魔力も力も持っていて、最強の戦士ではないのかと言われていた。その強さを武器に、島に住む人たちを守るためにたまに島にやって来る悪党や悪名高い海賊を倒したりしていた。そんなことをしていたせいか、島の人たちからの人徳はかなり高かった。時折、父母の力を噂で聞いた腕のある戦士が腕試しでやって来るが、それも返り討ちにしていた。その結果、戦いの腕に惚れた戦士が弟子入りし、ピラータ姉妹の家で執事として働いていた。


 ある日のこと、ピラータ姉妹の父は唸り声を上げながら一枚の紙を見ていた。まだ幼かったセアンが近付き、父の膝に乗って紙の内容を見た。


「おとーさん、これなんて書いてあるの? 難しい字がいっぱいで分からない」


「うん? ああ、これは悪い海賊の情報だよ。この島の近くにいるって話なんだ。シーポリスから連絡が入ったんだよ」


「悪い海賊? おとーさんなら簡単にやっつけちゃうよ!」


「確かにそうだな。おとーさんは強い! ハーッハッハ! こんな海賊なんてワンパンで仕留めてやるよ!」


 父はセアンの言葉を聞き、たくましい両腕に力を込め、筋肉を動かした。そんな中、執事の一人が慌てて部屋に入って来た。


「どうした? 何かあったか?」


「大変です! ブラッディークローと関係する海賊団が攻めてきました!」


「そうか。来たか。相手の戦況はどうだ?」


「賞金額を見る限り、周りの海賊連中はあまり強くなさそうですが、一部の船にブラッディークローに直接所属する連中がいます」


「そうか。あの組織にいる連中がいるのか……今回は簡単に終わる戦いじゃあなさそうだな……ちょっと待ってくれよ。セアンと他の皆を避難場所へ連れて行く」


 父はそう言って、幼いセアンを連れて姉妹の部屋に向かった。一方、部屋にいるコスタたちは窓から見える無数の黒い旗の船を見て、恐怖を覚えていた。


「うわー、何だ、あの船? 旗に絵が勝てるあの絵、酷いデザイン」


「怖い、怖いよ……気味が悪いよ」


「心配しないでケアノス。おとーさんがいるよ。簡単にやっつけちゃうわ」


「そうよ。あんなセンスがない酷いデザインの帆を描いた船、サクッと沈めちゃうわ」


 コスタたちが話していると、部屋の扉が開いた。音を聞いたコスタたちは驚いたが、扉を開けた主を見て安堵の息を吐いた。


「皆。丁度部屋に集まっていたのか」


 父の声を聞き、コスタたちは父の方を振り返った。真剣な目をしている父を見て、何か大変なことが起きているとコスタたちは把握した。


「皆、地下室に向かってくれ。私が合図するまで、そこに隠れていろ」


「でも、おとーさんは? あの変なデザインの旗の人たちと戦うの? 大丈夫なの?」


「大丈夫だ。私は負けないさ。あんな奴ら、すぐに倒す。それと、シーポリスに応援を要請したから、すぐに合流して一緒に戦ってくれるさ」


 その後、セアンたちは父の言われた通りに地下室へ向かった。地下室にはすでに数名のメイドや執事、島の人々がいた。その中には、物騒な武器を持った母が立っていた。母はセアンたちの存在に気付き、笑顔を作った。


「セアン。お母さんもお父さんと一緒に戦うわ。娘のために、変な名前を付けたダサい海賊旗の海賊団と戦わないと」


「おかーさんも戦うの?」


「大丈夫よ。これまでこの自慢の槍で大量の悪い海賊を突き刺してきたのよ。変な海賊に負けるものですか」


 と、母は返り血で黒く染まった槍の矛を自慢げに見せながらこう言った。そして、父と共にブラッディークローを倒しに向かった。




 それから数日間、セアンたちは地下室の中で執事やメイド、島の人々と怯えながら過ごしていた。上からは爆撃と魔力の衝突が響きわたっており、上がどんな状況なのかは幼いピラータ姉妹でも把握できた。早くおとーさんとおかーさんが戻って来てほしい。ピラータ姉妹は震えながらこう思っていた。


 激しい音は何日も続いたが、ある日突然爆撃と魔力の衝突は止んだ。一体どうなったのだろうとセアンは思い、扉を開こうとした。だがその前に、奥から扉のノブを回す音がした。


「セアン様、危ない! 下がってください!」


 執事の一人が慌ててセアンに駆け寄り、扉から遠ざけた。そして扉が開き、外からシーポリスの戦士が入って来た。


「島の人々か……戦いを避けるために避難していたのだな」


 中に入って来たのがシーポリスということを知り、島の人々は安堵し、すぐに駆け寄った。そんな状況の中、ピラータ姉妹は急いで外に出て、自分たちの家が、父と母がどうなったのか知ろうとした。そんな彼女らの目に最初に映ったのは、荒れ果てた大地、そしてボロボロの兵士たちの死体だった。見知った兵士たちが見るも無残な姿となっていたため、一目見たセアンたちは驚きと恐怖のあまり、目を丸くし、涙を流していた。


「あ……あ……」


「皆……生きてるの? 生きてるなら、返事してよ」


 ラージュは恐る恐る倒れて動かない黒焦げになった兵士の皮膚を触ったが、触れた瞬間に皮膚の一部は崩れ、地面に落ちて塵となった。その後、その兵士の死体は崩れた。遺った鎧や兜を見て、ラージュは思わず口を塞いだ。そんな中、セアンは周りを何度も見回しながら父と母を探していた。


「おとーさん……おかーさん? どこなの? 返事して!」


 セアンが泣き叫ぶ中、コスタもセアンと同じように周りを見回し、父と母を探した。ケアノスは知っている兵士たちの悲惨な死体を見て、恐怖と悲しみのあまり大声で泣き、ライアは大好きだった故郷が見るも無残な姿になっているのを見てその場に膝を崩していた。ラージュは死体の異臭と焼け焦げた臭いに耐え切れず、嗚咽していた。そんな中、ライアは地下室の扉前で見覚えのある槍を見つけた。


「これ……おかーさんの槍……」


 槍を引き抜こうとした時、下の方に切り落とされていた腕が付いていた。腕についていた服の切れ端を見て、それが母の腕であることをセアンは察した。


「おかーさん……嘘だ……嘘だ……」


「あ……ああ……」


 セアンの足元を見て、ライアが声を震わせていた。セアンは足元を見ると、そこには母の頭だけがあった。その近くには肉片が散らばっており、母が悲惨な最期を迎えたことが理解できた。


「おかーさん……そんな……そんな!」


 母が死んだ。その事実を信じることはせず、絶望したセアンは家の外に向かって走って行った。おとーさんは生きている。たくましく、筋肉モリモリマッチョマンのおとーさんは絶対に生きている。その希望を持ちながら、セアンは父を探しに走っていた。だが、幼いセアンの希望は叶わなかった。


 セアンの目に映ったのは、上から吊られている父の死体だった。裸で、肉体の一部は肉が欠けて骨が見え、頭には破損個所が多数あった。そして、両腕と両足は切り落とされ、その下の地面には血の跡が広がっていた。セアンの悲鳴を聞き、近くにいた若いシーポリスの戦士が駆け寄った。


「君、一体どうしたんだい?」


「おとーさん! おとーさん! おとーさァァァァァァん!」


「おとーさん? まさか君は……あの人の……」


 若いシーポリスは近くいいる仲間を呼び、セアンのケアを任せた。その後、その若いシーポリスは仲間にこう伝えた。


「私は屋敷の中を調べてきます。生存者の確認の手伝いもします」


「ああ。頼むぞ、サマリオ」


 その後、まだ若かったサマリオは急いでセアンたちの家へ向かった。



 今回ピラータ姉妹の過去の話ですが、姉妹の父と母の名前は決まっていません。一話しか出番がないので。もし、名前を知りたいとかそういうコメントが来たら、今後の話の中で姉妹の父と母の名前を出そうかなと思っています。


 この作品が面白いと思ったら、高評価、いいね、ブクマ、感想質問、レビューをお願いします。誤字脱字があったらどんどん送ってください。ただ、要望とかは聞けないと思うけど。

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