エンデルングの強敵たち
カイトたちはメガサイズスケベイカを倒した後、急いでエンデルングの海賊船へ向かった。運よくシーポリスの船はメガサイズスケベイカからの攻撃を受けなかったため、物理的被害がなく、猛スピードでエンデルングの海賊船を追いかけることができた。
「急げ急げ! あいつらが逃げちまうぞ!」
「大丈夫です。あいつらの船と私たちが乗るこの船の速度は大きく違います。この速度ならあっという間に追いつきます」
焦るウイークに向かって、メリスがこう言った。カイトはすぐに戦いになると思い、刀を手にしていた。横にいたセアンも武器を構えており、コスタはライフルの弾丸の用意をしていた。
「あと少しで戦いになるね。カイト、まだ暴れられる?」
「ああ。もちろんだ」
「やる気十分だね」
「セアンもやる気満々じゃん」
「そりゃーもちろん。あと少しでブラッディークローに関わる奴の情報が手に入るんだ。やる気が上がるよ」
と、セアンはカイトに言葉を返した。カイトは思い出した。いろいろあって忘れていたが、今回の騒動にはブラッディークローの幹部が絡んでいると聞いている。そいつを倒し、何かを聞き出せるかもしれないのだ。そう思うと、カイトは緊張感を覚えた。
そんな中、カイトたちが乗るシーポリスの船がエンデルングの海賊船に接近した。
「さて、そろそろ戦いが始まるわよ」
「皆、踏ん張ろう!」
ラージュとセアンの言葉を聞き、カイトは大きく深呼吸してリラックスした。
エンデルングの海賊船では、船員たちが慌てていた。あっという間にシーポリスの船が接近したからだ。
「うわー! もうあの船が近付きやがった!」
「クソッたれ! やるしかないぞ!」
「戦いの準備をしろ! こうなったら戦うぞ!」
船員たちは慌てながらも武器を持ち、シーポリスの船を睨んだ。そんな中、槍を持った男がやって来た。船員の一人がその男の方を見て声を出した。
「チェンさん。準備はできたのですね」
「ああ。これまでの戦いで私たちは大きく戦力をそぎ落とされてしまった。やるしかありません」
チェンは船員にこう答えると、後ろから斧を持った老人が現れた。チェンはその老人を見て、驚いた表情をした。
「ヤンジさん。あなたも戦うのですね」
「そりゃそーだ! 海賊家業五十年。長年シーポリスや海の化け物と戦ってたんじゃ。この程度の危機、何度も経験した!」
「では、あなたの力と経験を頼ります」
「おう。どんどん頼れ!」
ヤンジは笑いながら斧を構えた。そんな中、レイピアを持った品のありそうな男が紅茶を飲みながらこう言った。
「私としては、老いぼれは後ろに下がってほしいのですが……」
その言葉を聞いたヤンジは品のありそうな男に近付いた。
「ほう。それじゃあお前がワシの代わりに戦うのか、ムダンよ」
「そんな気持ちで発言したのではありません。あなた、この前までギックリ腰で苦しんでいたではありませんか。もし、また腰をおかしくしても助けることができませんよ」
「いざとなったら魔力でどうにかする。ジジイの魔力を舐めるなよ」
「そうですか。では、頑張ってください。私も頑張りますので」
と言って、ムダンは近くにあった木箱をテーブル代わりにし、ティーカップを置いた。
一方、船の上では派手なメイクと髪の色の女性が笑いながら慌てる船員を見ていた。
「キャハハハハハ! みーんな慌ててるね! 慌ててる奴を見るの楽しいなー」
「そんなことを言うなよムタ。あのシーポリスの船の上にはピラータ姉妹がいるんだから」
と、ムタの横に男がやって来た。ムタは嫌そうな顔で男の顔を睨んだ。
「私の乳揉んだらぶっ殺すよ、ハライ」
ハライと言われた男はおっとと言いながら両手を上に上げ、ムタから離れた。
「そんなことを言うなよ。アタシがそんなことをすると思ったの?」
「するに決まってるわよスケベヤロー。若い女の船員にエロいことしまくっているって聞いているわよ」
「アタシが手を出すのは若い子。あんたのような三十路を越えた女に発情しないわよ」
「何だとクソ野郎! シーポリスをやる前にあんたを殺してやろうか!」
ムタは魔力を解放してハライを殺そうとしたのだが、剣を持った男がムタの前に立った。
「仲間割れは止めなさいムタ。私たちの相手はシーポリスよ」
「チッ。命拾いしたわね、ハライ」
「そんなこと言わないのムタ。ハライもセクハラやエッチなことをするのは止めなさい」
「少しは抑えるよ、イヤル」
イヤルと言われた男はハライに向かって本当に反省しているのかしらと呟いた。そんな中、かぎ爪を持った女と長い槍を持った男がやって来た。
「おいおい、もう戦う準備をしてたのかい?」
「気が早いな、お前ら」
「ビャメント、シャジュモ」
「気が早いのはムタだけよ。アタシはムタに近付いて話をしただけ」
「なーんだ。そんなことか」
ビャメントがこう言うと、大きな音が響いた。ムタたちが前を見ると、シーポリスの船がエンデルングの海賊船に激突した。木製の海賊船に対し、シーポリスの船は木と鉄で作られた頑丈な船。激突しては木製の海賊船が敵うはずがない。激突されたエンデルングの海賊船は大きく破損した。
シーポリスの戦士は武器を持ってエンデルングの海賊船に乗り込んだ。動揺したエンデルングの船員は対処することなく、攻撃されて散って行った。
「相手は動揺している! 冷静さを失っている今、攻撃を仕掛けるぞ!」
「このまま追い込め! 勝てるぞ!」
「俺たちシーポリスの力を見せつけろ!」
シーポリスの戦士たちは声を出しながら攻撃を仕掛けた。この様子を見ていたチェンとムダンは武器を持って外に出た。
「下がれ。お前たちは下がって頭を冷やして来い」
「落ち着きを失った戦士は役には立たない。その状態で戦おうとする人は愚か者です。一度、冷静になりなさい」
チェンとムダンの言葉を聞き、エンデルングの船員たちは後ろへ下がって行った。シーポリスの戦士は下がろうとしたエンデルングの船員を追いかけようとしたが、チェンとムダンは魔力を解放してシーポリスの戦士に攻撃を仕掛けた。強烈な竜巻と氷の粒、そして火の刃がシーポリスの戦士に襲い掛かった。
「ギャアアアアア!」
「グワアアアアア!」
「体が……俺の体が!」
攻撃を受けた戦士たちは、あっという間に倒され、海へ向かって吹き飛んだ。水しぶきが響く中、エンデルングの海賊船の上から人影が現れた。
「いよいしょー! うっひゃー! 派手な戦いが始まってるねー!」
人影を見たチェンは、ため息を吐いてこう言った。
「お前はまた船の上で寝ていたのか、ビエンよ」
ビエンと言われた男はヘヘッと言いながら鼻の下をかいた。
「そりゃーこんないい天気だからさー、お昼寝しないとねー」
「バカ野郎。まだ午前中だぞ」
「そんなこと気にしないでよ。それよりも、あいつらを倒さないとね」
ビエンはシーポリスの戦士を見て、にやりと笑った。そして、前に立って両腕を大きく広げた。
「かかって来なよシーポリスの戦士さん。僕を楽しませてよ」
いきなり両腕を大きく広げ、攻撃を求めたビエンを見たシーポリスの戦士は動揺したが、しばらくして彼の言う通りに攻撃を仕掛けた。ビエンは攻撃をかわすことはせず、攻撃を受けた。シーポリスの戦士たちが持つ剣や槍が、ビエンの体を貫いた。
「バカ野郎。自ら攻撃を求めるなんて……とんだマゾ野郎だな」
戦士の一人がこう言った。だが、ビエンはため息を吐いて戦士の頭を掴んだ。
「こんな攻撃じゃあ僕は満足できないよ」
と言って、ビエンはその戦士の頭を握り潰した。この光景を見た戦士は悲鳴を上げ、一斉にビエンから離れた。
「はぁ。仲間が一人死んだからって逃げないでよ」
ビエンは逃げた戦士たちを見て、ため息を吐いた。だが、敵意を向けるカイトたちを見て、にやりと笑った。
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