エンデルングを追い払え
翌朝、カイトは体中から重みを感じていた。
「お……重い……」
目を覚まし、周囲を見回してカイトはやっぱりと思った。上にセアンが乗っていて、左右にはコスタとライアがカイトに抱き着くような形で眠っていた。昨日の戦いのせいで、セアンたちはカイトが起きて少し動いても、目を覚ます気配はなかった。
「あ、起きたのねカイト」
と、歯ブラシで歯を磨いていたケアノスが声をかけた。
「おはようケアノス。歯磨きを終えた後でいいから助けて」
「分かったわ。ちょっと待ってて。あ、それかメリスを呼ぶ? 今、外でトレーニングしているわ」
「メリスを呼んでくれ」
「ニュフフフフ~カイト~」
セアンが寝言を言いながらカイトの首元を抱きしめた。苦しそうに声を上げるカイトを見て、ケアノスは慌てて外にいるメリスを呼んだ。
数分後、カイトは駆け付けたメリスによって解放された。
「朝から大変ね」
「ああ。いつもこんな感じだよ」
カイトは爆睡するケアノスをベッドの上に寝かし、メリスにこう答えた。その時、ラージュの姿が見えないので、カイトはメリスにこう聞いた。
「ラージュは救急車の方にいるのか?」
「そこで眠るって言ってたわ。多分、もう起きていると思うけど……」
「起きているわ。救急車は近くの町に発進したわ」
と、ラージュが姿を見せてこう言った。
「おはよう。昨日は大変だったな」
「今日も大変よ。今からエンデルングの連中ともう一戦交えるんだから。イコルパワーを使うかもしれないってことを頭に入れておいてね」
「ああ。奴らが使う前に倒さないと」
「それと、幹部の一人がいるかもしれないわ。そいつと戦うことになったら、手加減無用。本気で戦ってね」
ラージュは真剣な目でカイトにこう言った。その目を見たカイトは、少し緊張した。
数分後、カイトたちはイコルパワーがあるという現場へ向かった。足止めを喰らい、一晩休んだためエンデルングがいるかどうか分からないが、とにかく向かうしかないということで、急いでその現場に向かった。
「奴らがいればいいんだけど」
「いるかどうか分からないよ。足止め部隊を倒したってこと、奴らも把握しているだろうし」
「とにかく、安易なことを考えるのは止めよう」
と、目が覚めたセアンたちが話をしていた。カイトは外から海を見て、エンデルングの船がいるかどうか調べていたが、それらしい物は見えなかった。
「奴らはいないな」
「夜のうちに逃げたかもしれないわね」
「そうだな……ちょっと残念」
「戦った後、疲れた状態で次の戦いに向かうのは間違っているわ。休んで万全な状態で戦った方がいいわ」
カイトとラージュが話をしていると、突如乗っているキャンピングカーが急ブレーキをかけた。その直後、目の前の道路が爆発した。
「敵が俺たちの存在に気付いたようだな」
「そうみたいね」
「敵はいるってことね! じゃあ暴れてやる!」
セアンはカトラスとハンドガンを持ち、外に飛び出した。その後を追うようにコスタ、ライアが武器を持って外に飛び出した。
「それじゃあ私たちも行きましょう」
「おう!」
「フフッ。腕が鳴るわね」
ケアノスの号令を受け、カイトとラージュも外に飛び出した。メリスもその後に続こうとしたのだが、何かを忘れている気がし、周囲を見回した。
「何か忘れているわね……」
そう呟いた直後、近くでウイークの声が聞こえた。その声を聞いて、メリスは思い出した。昨晩、ウイークがメリスに夜這いを仕掛けようとし、それに気付いたメリスがウイークを近くにあったフライパンで滅多打ちにし、近くにいたセアンと協力してウイークが動けないように硬く縛ったと。
「あ……忘れてた」
メリスはウイークを見てこう呟いたが、夜這い未遂のことでまだ怒っているため、ウイークを放置して外に飛び出した。
エンデルングの船員はカイトたちの接近を察し、武器を持って応戦を始めていた。
「弾を持ってこい! とにかく撃って撃って撃ちまくれ!」
「大砲を用意しろ! 当たらなくても奴らの行く手を阻むことができる!」
「魔力を使える奴は魔力を使って遠距離で戦え! 狙撃手のコスタに気を付けろよ!」
船員たちは声を出しながら応戦の準備をしていた。そんな中、船員の一人は船の方にいる船長、デルマグの方を見てこう言った。
「船長! 俺たちが時間を稼ぐので、逃げてください!」
「お前たちを置いて逃げるだと? 俺は臆病者ではないぞ」
「お言葉ですが、ここであなたが倒されたら俺たちはどうなるんですか? 俺たちはバカだから、あなたが指示しないと何もできないんですよ!」
船員の言葉を聞き、デルマグは何も言わなかった。船員は反論したことがデルマグの怒りに触れてしまったと思い、汗をかいていた。だが、デルマグは振り向かずにこう言った。
「分かった。だが、必ず俺の元へ戻って来い」
「分かりました!」
船員は頭を下げ、船へ向かうデルマグの姿を見送った。その後、その船員はカイトたちが近くにやってきたことを察した。
「ここは俺たちで食い止める!」
そう言って、近くにあった剣を持ってカイトたちの方へ向かった。
カイトたちは各々の武器を使い、襲い来る船員を倒していた。カイトは刀を使って船員に刀傷を与えて一撃で倒していき、セアンはカトラスとハンドガンを利用して船員を倒す。ケアノスはライアと協力して周りの船員を斬り倒し、ラージュは大剣を振り回して複数の船員を空高く打ち上げていた。
そんな中、狙撃手の船員が暴れているカイトの姿をスコープに映し、小さく呟いた。
「誰か一人でもいいから……風穴開けてぶっ殺してやる……」
彼の狙いはカイト。攻撃の隙を狙ってカイトを撃ち殺そうとしたのだが、突如別の方向から発砲音が聞こえた。その後、飛んで来たライフル弾が盾として使っていた壁を撃ち抜き、その狙撃手の右肩を撃ち抜いた。
「ギャアアアアアアアア! まさか……俺の場所が……」
狙撃手はコスタの存在を思い出し、撃ち抜かれた右肩を抑えながら苦しみ、悶えた。
発砲音が聞こえた後、一部のエンデルングの船員はカイトたちを無視してコスタの元へ向かった。
「狙撃手がいる。そいつを倒すぞ!」
「腕が良ければ、そいつ一人で戦況を変えちまうからな!」
「発砲音をよく聞くんだ! 音で奴の居場所を把握しろ!」
船員たちは慌てながらコスタを探した。だが、コスタがいる場所は分からず、それどころか姿が見えないコスタの狙撃によって次々と船員が撃ち抜かれた。
「クソ! このままだと全滅する!」
「おい、俺は奴の居場所が分かったぜ」
と、別の船員がこう言った。他の船員はその船員の言葉を信じ、コスタがいる方へ向かった。
「俺はこの目で見たんだ。弾丸があそこから飛んでくるのを」
そう言いながら、コスタの居場所が分かった船員は崖の方を指差した。
「そうか。あそこなら身を隠す場所があるし、それを利用して発砲できる」
「うし、ばれないように行動して、狙撃手を始末するぞ!」
船員たちはコスタを倒すために行動を始めた。隠密行動がばれないように行動したためか、コスタから狙撃されなかった。そして、コスタの後ろ姿を見つけた。
「よし。やるぞ」
船員はそう言って、一斉にコスタに襲い掛かった。だが、近くの物陰に隠れていたサマリオとメリスが姿を出し、船員に斬りかかった。
「ガハッ……」
「そんな……」
斬られて倒れる船員を見て、シーポリスの車の陰からツリーが姿を見せた。
「あははははは! バレバレだっての! あいつら、案外マヌケねー!」
ツリーは笑いながらこう言ったが、コスタは心の中でツリーも戦ってよと思った。
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