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イコルパワーの対処法


 戦いは終わった。怪我を負ったカイトの治療も終わり、動けるまでに回復した。


「ありがとう。動けるようになったよ」


「はぁ……はぁ……何とかなってよかった~」


 カイトの治療を行っていたライアは、疲れ果ててその場に倒れた。メリスも大きく息を吐き、その場に座った。


「つ……疲れました」


「二人とも、お疲れさん」


 ウイークが二人に近付いて話しかけた。その後、戦いを終えたセアンたちが戻って来たが、コスタだけは戻って来なかった。


「あれ? コスタは?」


 セアンは周囲を見回してコスタを探した。カイトたちもコスタを探し、周囲を見回した。すると、エンフを担いだコスタの姿を見つけた。


「コスタだ。で……背中にいるのは……」


「さっきコスタと戦っていた弓使いだよ」


 ライアの質問に対し、セアンはこう言った。セアンは急いでコスタの方へ向かい、共にエンフを担いでカイトたちの元へ向かった。コスタはラージュの姿を見て、急いで声をかけた。


「ラージュ、お願いがあるの」


「その背中にいる女の人の治療ね」


「それもそうだけど……この人、ちょっとだけイコルパワーを使ったの」


 この言葉を聞き、ラージュの目が開いた。


「もう少し詳しい話を聞かせて」


「注射器を取り出してイコルパワーを使おうとした。だけど、体内に入ったのは少量だと思う」


「途中で止めたのね。ナイスよ。サマリオ、救急車を呼んでほしいんだけど」


「大丈夫だ。すでに手配している」


「流石」


 サマリオの返事を聞き、ラージュはサマリオに向かってウインクをした。




 それから数分後、サマリオが手配した救急車がやって来た。ラージュは救急隊員に状況を伝え、すぐにエンフを連れて救急車の中に入った。慌てるラージュを見て、メリスはこう言った。


「ラージュさん、中でどうするつもりなんでしょうか?」


「あの人の治療だよ。中に入った少量のイコルパワーを取り除くつもりだね」


 セアンの答えを聞き、メリスは驚いた。


「取り除くって……一体どうやって取り除くんですか?」


「その辺はラージュに任せるしかないよ。私たちの中で救護の知識があるのはラージュだけ。この手術が成功したら、イコルパワーの対策法ができるかもね」


 セアンは欠伸をしながらこう言った。だが、セアンは足が震えており、この手術がうまくいくか心配だとメリスは思った。カイトやコスタ、ケアノスたちも冷静を装っているが、手が震えていたり、視線があちらこちらを向いていたのを見て、メリスはカイトたちが内心心配だと考えた。


 手術が始まって数時間後、救急車の扉が勢いよく開かれた。


「終わったわ。何とかイコルパワーを取り出すことに成功したわよ!」


 この言葉を聞き、カイトたちは安堵の息を吐いた。


「すっごーい! 流石ラージュ! とりあえずあの女が喋られるかどうか」


「待ってライア。手術が終わった後だから、話すのはもう少し後で」


 ラージュは救急車の中に入ろうとしたライアにそう言った後、もう一度扉を閉めた。とりあえず手術は成功した。イコルパワーの対策法があったことをカイトたちは知り、ひとまず安心した。そんな中、サマリオがこう言った。


「近くにシーポリスのキャンピングカーがある。もう遅いし、今日はそこで休もう」


「そうだね。この状態で現場に向かったら返り討ちにされるわ」


 セアンがこう言った後、カイトたちはキャンピングカーに乗り、休むことにした。




 同時刻、エンデルングと共にイコルパワーを採取しているロスだったが、カイトたちの足止めに向かったダンカたちの魔力を感じなくなったため、ため息を吐いた。


「一度引くぞ。足止めに向かった連中がやられた」


 エンデルングの船員たちは驚きの声を上げた。だが、すぐに笑ってこう言った。


「大丈夫ですよ。今の奴らに戦う元気はありません」


「俺たちはもう少しイコルパワーを採ります」


「あっそ。勝手にしろ。俺は一度引く」


 そう言って、ロスはその場から離れた。


 ロスはエンデルングが用意したバイクに乗り、近くの町へ向かった。安宿で部屋を借り、部屋に入ってベッドの上で横になった。


 足止めに向かった連中はそれなりに強い奴らだ。そいつらを倒すとは、ピラータ姉妹は強くなったってことか。


 そう思ったロスは煙草を手にし、火を付けた。煙草を吸いながら今後のことを考えた。


 仕方がない。それなりにイコルパワーは手に入れたが、あいつらの所にある。様子を見て、イコルパワーを回収して船に持って行こう。


 予定を決めたロスは携帯電話を手にし、操作し始めた。




 キャンピングカーにいるセアンたちは、疲れのあまりその場で横になっていた。


「ああ……疲れた。イコルパワーを使う奴とはもう戦いたくねぇよ」


 そう言いながら、ウイークはマッサージをしていた。ウイークは服を脱ぎ、自身の体を見て驚きの声を上げた。


「うっげぇ。攻撃を受けた痕がくっきりと残ってやがる」


「うわぁ。酷い痕」


 ウイークの体を見たライアは、驚きの声を上げた。その声を聞いたセアンはウイークに近付き、痕を見た。


「イコルパワーを使った敵と戦ったって言ってたね。これは……」


「酷いだろ? 俺の肉体に傷が付いちまった」


「そんなことはどーでもいいけど。イコルパワーが広まったら大変だね」


 セアンはそう言ってそっぽを向いた。その後、ソファーの上で横になっているカイトに近付いた。


「カイトー、隣開いているならお邪魔するよー」


「残念。すでにお邪魔済み」


 と、カイトの横にいたコスタがこう言った。セアンはコスタを無理矢理どかそうとしたが、コスタはそれに反発した。


「コスタ。一応私が長女なんだから、そこは私に譲りなさい」


「五つ子に長女も次女も関係ない。早い者勝ち」


 二人は誰がカイトの横に寝るかというしょうもない理由で喧嘩を始めた。メリスはどうしようかと思ってあたふたしていたが、スリッパを持ったケアノスが二人に近付き、スリッパで二人の頭を叩いた。


「いい加減にしなさい。カイトだって怪我をして寝ているんだから。静かに」


「はーい」


「へーい」


 ケアノスから叱られた後、二人は大人しくなってその場に座った。この光景を見て、メリスはケアノスがリーダーになった方がいいのではと思った。


 救急車内。担架の上で横になっていたエンフが目を覚ました。


「あれ……ここは……」


「あら、お目覚めの用ね」


 と、近くにいたラージュがエンフに声をかけた。ラージュがピラータ姉妹であることを知っていたエンフは弓矢を取ろうとしたが、コスタとの戦いで失ったことを思い出した。


「何をするつもり? もしかして、武器がない私に手を出すつもり?」


 エンフはラージュを睨みながらこう言ったが、ラージュは両手に何も持っていないことをエンフに分かるようにし、笑顔でこう言った。


「怪我人相手に戦うわけがないじゃない。あなたが目を覚ますまで、見守っていたのよ」


「どうしてそんなことを?」


「あなたは怪我人だからよ。それと、イコルパワーを取り出すためにいろいろとやったから、それなりに体力を失っているから」


 その言葉を聞き、エンフは右手を動かし、手の平を見た。指を動かそうとしたが、いつものように力が入らなかった。


「たとえ少量でも、イコルパワーを使った副作用があるようね。大人しくしてね」


 ラージュはそう言うと、立ち上がって背伸びをした。そんなラージュに向かって、エンフはこう言った。


「どうして敵の私を助けたの?」


「私たち、人は殺さないって決めているの。それと、私は見習いだけど医者としてのプライドもある。怪我人をほっとくわけにはいかないわ」


 と、ラージュは笑顔でこう答えた。


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