表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
286/430

迫る巨体


 ケアノスとサマリオはアラギと言う巨大な男と戦っている。アラギは見た目通り怪力を持っており、剣を一回振るっただけでサマリオが張ったバリアを破壊してしまった。


「ケアノス、下がれ!」


 サマリオはケアノスにそう言って、アラギの攻撃を剣で受け止めた。ケアノスは後ろに下がり、この後の行動を考えていた。


「グガッ……グググ……」


 相手の攻撃力はかなり高いだろうと考えていたサマリオは、魔力を両腕に込めて剣で防御をしていた。苦しそうな表情をするサマリオを見て、アラギは笑いながらこう言った。


「グヒヒヒヒ。苦しそうな顔だなぁ。さーて、も~ちょっと力を込めてやるかな~」


 この言葉を聞き、サマリオは嘘だろと思った。その直後、サマリオが持つ剣からひびが入る音が聞こえた。


「しまった!」


 サマリオは急いで後ろへ下がり、攻撃を回避した。大きな音が響くと同時に、剣が振り下ろされた地面は大きくえぐれた。


「何だよ。避けやがって」


 と、アラギは文句を言っていた。だが、サマリオは冷や汗をかいて回避して正解だったと思っていた。その時、後ろに下がったケアノスが魔力を解放し、アラギに向かって飛んでいた。


「てあっ!」


 攻撃の隙を伺い、ケアノスはレイピアでアラギに攻撃を仕掛けた。攻撃をすると察したアラギは、笑いながらケアノスにこう言った。


「攻撃してみろよ。オイラの体はレイピアの刃じゃ貫通しないぞ~」


「自分の体が硬いって自信があるのね。その自信が油断に繋がるわよ!」


 ケアノスは魔力を解放し、勢いを付けてレイピアを突いた。レイピアの刃はアラギの左肩を貫いていた。


「な……あ……」


「油断してくれてありがとう。確かにあんたの肌は固いわ。でも、魔力を込めて突けばどーってことないのよ」


 茫然とするアラギを見て、ケアノスはどや顔でこう言った。その後、ケアノスは力を込めてレイピアの刃を抜き、後ろに下がった。しばらくの間をおいて、レイピアの刃が刺さっていた場所から血が流れた。


「アギャアアアアアア!」


「サマリオ、攻撃するなら今がチャンスよ」


「分かった。隙を作ってくれてありがとう、ケアノス」


 サマリオは予備の剣を装備し、痛みで苦しむアラギに接近して剣を振り回した。魔力を込めて攻撃すればアラギの硬い皮膚を斬ることができる。そのことを知ったサマリオは魔力を解放し、何度もアラギの体を斬っていた。


「この野郎がァァァァァ!」


 攻撃を受け続けていたアラギは怒声を上げながら、サマリオに向かって両手の剣を振り下ろした。サマリオは後ろに回避し、ケアノスと合流した。


「でかくて攻撃力が高い相手だが、案外大したことがないな」


「見た目で判断してたのよ、私たち。動きは遅いし、攻撃も襲い。一撃の威力が大きいけど、隙が多いから叩くには問題ないわ」


「ああ。だが、楽に終わると考えるな。ああいう奴はきっと最後の悪あがきで何かする」


 二人が話をしていると、アラギはポケットから注射器を取り出した。


「オイラをバカにするなよ。こうなったら、イコルパワーを使ってやる!」


 この言葉を聞き、二人は急いでアラギを止めようとした。だが、アラギはイコルパワーを注入する前に魔力を解放し、周囲に雷を発した。


「これで邪魔できない。さぁ、覚悟しろ!」


 アラギはイコルパワーを注入し、注射器を地面に叩きつけて破壊した。その後、アラギは体中に力がみなぎって来るのを感じた。


「おお! こいつはすごい! オイラの体がだんだんと強くなっていく感じがするぞ!」


「クソッ! こうなったら奴が力尽きるのを狙うしかない!」


「そうね。敵であろうとも、死ぬのは見たくないけど……」


 イコルパワーを注入し、歓喜の声を上げるアラギを見てケアノスとサマリオはこう話をした。アラギはサマリオの方を見て、手を伸ばした。


「まずはお前から殺してやるぞ!」


 サマリオはアラギから殺気を感じ、高く飛び上がって逃げた。だが、アラギはサマリオを追って高く飛び上がった。


「逃がさないぞ~!」


「クッ!」


 サマリオは左手に魔力を溜め、大きな火の玉を作ってアラギに向けて放った。火の玉はアラギに命中し、周囲に煙を発した。


 ダメージは与えられなくても、煙のせいで私の姿を確認できないだろう。


 そう思っていたサマリオだったが、煙の中からアラギの手が現れ、サマリオの体を掴んだ。


「何!」


「グッフフ~。それでオイラの目をごまかしたつもりかい? イコルパワーのおかげかな? ちょっとの魔力でも探知することができるようになったんだよ~」


 煙をかき分けながら、アラギの顔が現れた。サマリオを捕まえたことを察したアラギは、そのままサマリオを掴んだ手を強く握りしめた。


「ガアアアアアアア!」


「グヒヒ。いい声で鳴くねぇ。もっといい声を出して鳴いてくれよ」


「この野郎! これ以上サマリオを傷つけたらテメーの腕斬り落とすぞこの野郎!」


 サマリオの苦しむ顔を見て、怒りが爆発したケアノスが魔力を解放し、アラギに襲い掛かった。


「ん? 仲間がやられて頭に血が上ったのかい? 丁度いい。君も殺してあげよう」


 アラギは飛び回るケアノスを見て、手を伸ばそうとした。だが、ケアノスはアラギの頭の上に着地し、力を込めてアラギの頭を殴った。


「ゴンフェェッ!」


 イコルパワーを使ったアラギだったが、ケアノスの拳骨には敵わなかった。目まいが発生したアラギはサマリオを手放してしまったのだ。


「サマリオ!」


「すまん……油断した」


 ケアノスはサマリオを救出し、目まいでふらついているアラギを見た。


「力任せであの野郎をぶん殴ったけど、あの一撃が効いているみたいね」


「あのまま大人しくなってくれればいいが……」


 しばらくふらついているアラギを見ていた二人だったが、アラギは我に戻って二人を睨んだ。


「よくもやりやがったな! オイラを怒らせたらお前たちは死んじまうぞ!」


 と言って、アラギは地面に落ちていた自身の大剣を拾い、大きく振り上げた。だがその瞬間、大剣を持ち上げていた右腕の血管が大きく膨れ始めた。


「なっ! あっ!」


 異常が起きたことをアラギは察したが、右腕が言うことを聞かず、下に下ろすことができなかった。


「おい! どうしてだ? 右腕が動かなくなっ……え?」


 その時、アラギは目の様子がおかしくなったことを感じた。ケアノスはアラギの目を見て、ため息を吐いた。


「イコルパワーの副作用が始まったのね」


 アラギの目は膨らみ始めていた。サマリオもアラギの命があとわずかだと知り、ため息を吐いた。戦う気をなくした二人を見て、アラギは叫んだ。


「待て! まだ戦いは終わってないぞ! あともう少ししたら、この変な異常も収まる!」


「無理よ。イコルパワーを使った副作用が起き始めているわ。あんたの命は、もう少しで終わるわ」


 ケアノスはそう言って、サマリオと共にアラギの元から去って行った。去っていく二人を追いかけようとしたアラギだったが、両足の太ももの血管が破裂し、血が流れた。


「うわあああああ! 何だこれ、何だこれ? オイラはまだ戦えるのに! 体よ、いうことを聞け!」


 動かなくなった体に対し、アラギは大きな声を上げた。その時、力を失った右手が開き、持っていた大剣がアラギの頭上に落下した。大剣が頭に当たった直後、膨らんでいたアラギの目は破裂した。そして、アラギの巨体はゆっくりと地面に倒れた。




 カイトは戦いから戻って来たウイークと共に、アラギの最期を見ていた。


「イコルパワー、本当に恐ろしいな」


「ああ。あれがもし敵の手に渡ったら……」


 カイトはブラッディークローがイコルパワーを手にし、改良に成功した後のことを考えた。


 ブラッディークローの作戦がうまく行ったら世界が大変なことになる。


 そう考えたカイトは、何が何でもブラッディークローの作戦を止めなければと改めて思った。


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ