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嬉しくない決着


 ウイークによって追い込まれたダンカは、イコルパワーを使ってしまう。イコルパワーを使ったボールによる攻撃は威力が上がっており、一撃受けたら死ぬか、それと同等の大怪我を負うとウイークは察した。


 これはヤベェ! 避け続けないと死んじまう!


 心の中でウイークはこう思い、迫って来るダンカを睨んだ。


「そこをどけェェェェェ!」


 蹴り飛ばしたボールを拾うために、ダンカは動いたのだとウイークは察し、急いでボールがある方向を見た。


「悪いがそうはさせないぜ!」


 ウイークは火の魔力を使い、ボールを遠くへ吹き飛ばした。


「なっ! あっ!」


「悪いな、こっちは死にたくないんでな!」


 ウイークはそう言ってダンカの体を殴った。だが、ダンカの体は鉄の壁を殴っているかのように硬かった。


「いっでェェェェェ!」


 痛めた手を振り回し、痛みをごまかしているウイークを見て、ダンカは笑い始めた。


「バカな奴だ。イコルパワーを使った結果、鋼鉄のような体を得たようだ。クックック……これでお前の攻撃も通じない」


「バカ野郎。しばらくしたら目玉が破裂して、全身から血を流して死んじまうぞ」


「そんなこけおどしが通用するか!」


 ダンカはそう言うと、ウイークに接近して腹を蹴った。ダンカが体術を使うとは予想していなかったため、ウイークはかなり動揺していた。


「ぐばっ! がはっ!」


 蹴りを受けたウイークは激しく咳き込み、その場で片膝をついた。咳き込む際に、左手を口に覆ったためか、ウイークは左手に何かが当たった感触がした。それを見て、小さく嘘だろと呟いた。左手には、大量の血が付着していたのだ。


「この一撃でどこかの臓器が潰れたみたいだなぁ! お望みなら、心臓を潰してやろう!」


 ダンカはそう言って、ウイークに襲い掛かった。




 ウイークに攻撃をする際、ダンカは生まれ変わったような気持ちでいた。大きなダメージを受け、激しい痛みを感じていたが、イコルパワーを使った後から痛みを感じなくなった。そして、体の奥底から噴水のように溢れ出る体力と魔力を感じ、ダンカの気持ちは高ぶっていた。


「さぁ! もっと俺に戦いを楽しませてくれ!」


 そう言って、ダンカはウイークの腹を蹴り始めた。ウイークは震える手で攻撃を防御しようとするが、強化されたダンカの足を防御することはできなかった。


「これでぶっ飛べ!」


 手足が出ないウイークに対し、ダンカは右足を高く後ろに上げ、強烈な一撃をウイークに決めた。


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 攻撃を受けたウイークは、悲鳴を上げながら猛スピードで後ろへ吹き飛び、生えていた大きな木に命中した。


「んっふ~。少々やりすぎたかな~」


 飛んで行ったウイークを見た後、ダンカは鼻歌を歌いながらウイークの後を追いかけた。ダンカが大きな木のふもとに到着すると、そこには何もいなかった。だが、ダンカは察していた。このどこかにウイークが隠れているのだと。


「オイオイ、かくれんぼの始まりか~? ガキの遊びじゃねーんだぜェ? くだらねーことしてねーでさっさと出て来いよ」


 と、ダンカは挑発をするような口調でこう言った。しばらくして、少し離れた茂みが動いた。


「そこだな~」


 ダンカはその茂みに近付き、隠れているだろうウイークを探した。そして、ウイークの姿を見つけた。


「みーつけた! かくれんぼもこれでおしまいだ! 案外あっけなかったなぁ!」


 そう言いながらダンカはウイークに向かって右の拳で殴ろうとしたが、ウイークがダンカの使っていたボールを持っていることに気付き、動きを止めた。


「あ……俺のボール」


「隙あり」


 ウイークは魔力を解放し、ダンカに向けてボールを放った。放たれたボールはダンカの腹に命中し、吹き飛ばした。




 ダンカにボールを放った後、ウイークは全身に激痛を感じ、その場で四つん這いになった。


 これで倒れてくれ。この一撃が最後の悪あがきみたいなもんだからな。


 と、ウイークは心の中でこう願った。吹き飛んだ場所にダンカのボールを見つけたことは、ウイークにとって幸運な出来事だった。ウイークはすぐにダンカのボールを手にし、反撃の機会を伺っていたのだ。その攻撃はダンカに命中したのだが、ダンカは倒れたまま、動こうとはしなかった。


「まさか……死んだのか?」


 ウイークが小さく呟いた直後、ダンカは勢いよく起き上がり、ウイークを睨んだ。


「この野郎! 俺のボールを使って攻撃するとは! それは俺のボールだ、返せ!」


 そう言いながら、ダンカはウイークに向かって走り出した。ウイークはすぐにその場から離れ、ダンカの突進を回避した。


「そこか!」


 ダンカはウイークが逃げたことを察し、周囲を見渡した。ウイークがいた場所には愛用のボールが落ちており、それを見たダンカはにやりと笑った。


「ふひひひひひ。バカだなー。俺にボールがあれば無敵だからなー」


 と言って、ダンカはボールを拾い、ウイークを睨んだ。


「これで終わりだ。体中バラバラになってくたばれクソ野郎!」


 大声で叫びながら、ダンカはボールを投げた。猛スピードで放たれたボールは勢いよく回転しながらウイークの方へ飛んで行った。それを見たウイークは、頭の中でどうするか考えた。そして、その答えを出した。


「おいどうした? 逃げないのか!」


 微動だにしないウイークを見て、ダンカは笑っていた。しばらくして、ウイークとボールの距離は徐々に縮まって行った。そして、ウイークはボールが接近したタイミングで高く飛び上がった。


「へ?」


「ぐうっ!」


 渾身の攻撃をかわされたダンカは目を開けて驚き、上空へ逃げたウイークは全身に痛みを感じていた。ボールはそのままどこかへ飛んで行き、遠く離れた岩盤に命中した。


「え……え? そんなことって……ありか?」


 攻撃をかわされたことを察し、ダンカは信じられないと言いたそうな表情をしていた。その時、ダンカの眼球が膨れ始めた。


「え? え? え! 目がおかしい! 何か破裂しそうだ! た……助けてくれ!」


 ダンカは両手で目を抑えたが、その直後に体中から血が流れ始めた。


「何だ? 今度は血が流れているのか? おい! 俺の体がどうなっているのか教えてくれよ!」


 突如感じた体の違和感に恐怖しながら、ダンカは叫んだ。ウイークはため息を吐きながらダンカに近付き、こう言った。


「イコルパワーの副作用……いや、使った代償だな。お前も知ってるはずだ。イコルパワーを使ったらパワーアップするが、無残な死を迎えると」


 ウイークの話を聞き、動きを止めたダンカだったが、話を理解したダンカは体を暴れさせながら叫んだ。


「嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ! 俺は死にたくない! お前を殺すためにイコルパワーを使ったってのに! お前を殺せないで、俺は死ぬのか! そんなの嫌だ!」


「どうあがいたって、お前は死ぬ運命だ……わけのわからねー薬に頼るんだったら、負けを認めて鍛えて鍛えて鍛えまくって、俺にリベンジすればよかったのによ」


「た……助けてくれ! このままだと目が破裂する、出血で死んじまう!」


 ダンカは涙声でこう言った。膨れ上がる眼球からは、血の他に涙らしき液体が流れていた。それを見たウイークはため息を吐き、ダンカにこう言った。


「泣いて助けを求めても……今の俺たちじゃああんたを救えない」


「そ……そんな……」


 話を聞いたダンカが絶句した直後、体中から流れる血の量は増え、眼球が破裂した。その後、ダンカはその場に倒れて動かなくなった。それを見たウイークは、舌打ちをしてその場に倒れた。


「あーあ……勝ったってのに……こんな勝ち方じゃあ嬉しくねーな……」


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