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イコルパワーの元へ向かう道すがら


 ケスタージュンに到着したカイトたちは、すぐにイコルパワーが多数生息している場所へ向かうことにした。その道中、メリスに引っ張られているツリーは手足をじたばたさせて抵抗していた。


「いーやーだー! 物騒な所に行きたくなーい!」


「たまにはツリーさんも戦ってくださいよ! 魔力を使えばまともに戦えるじゃないですか!」


「変な奴相手に大事な魔力は使いたくなーい!」


 メリスとツリーの会話を聞きながら、カイトはサマリオにこう尋ねた。


「ツリーさんって戦えるんですか?」


「一応な。見た目と頭の中はあれだが、魔力に関しての技術は誰よりも高い」


「そうなんですか……」


 カイトは呆れた目でツリーを見ていた。本当にあんな人がサマリオさんから強いと言われるほどの戦闘力を持っているのかと思っていたのだ。


「そう言えば、ツリーが戦ったところってあんまり見てないなー。と言うか、見たことないかも」


「いつもサマリオに戦いを任せてるイメージだねー」


 と、セアンとライアが話をしていた。この話を聞いていたツリーは動きを止めた。


「むー。私はセアンたちみたいに超人的な運動神経はないのよー」


「嘘言わないでください。掃除当番の時、猛スピードでどこかに逃げるくせに」


 メリスがこう言うと、ツリーの表情が崩れた。メリスはため息を吐きながらこう続けた。


「来月、今まで逃げた分のツケを払ってもらいますからね」


「何日掃除するの?」


「来月から三ヶ月、毎日やってください。そうだ、見張りも付けますのでよろしくお願いします」


 メリスは冷ややかな目でツリーにこう言った。その言葉を聞いたツリーはため息を吐いた。この光景を見ていたカイトは、本当に強いのかと思った。




 数分後、カイトたちはレンタカーを借り、イコルパワーが生息している場所へ向かっていた。しばらくすると、カイトたちを乗せたレンタカーは田舎道を走っていた。


「うわー、いい景色」


 ケアノスは窓から見える海や小麦畑を見てこう言った。カイトもこの景色を見て声を上げていた。今見える景色は、プロの写真家が写真で撮ったかのような美しい景色だからだ。


「こんないい場所に危険な薬草があるのか」


「そうね。綺麗なバラには棘がある。それと似たようなことね」


 カイトの言葉に合わせ、ラージュがこう言った。その時、レンタカーを運転していたサマリオは急にブレーキを踏んだ。後部座席に座っていたカイトたちは激しく転倒した。その末、転倒したカイトの上にセアンの胸が押し当てられた。


「ぐがが……」


「ごめんねカイト。でも私の胸、柔らかいでしょ?」


「そんなことを言ってる場合じゃないわよセアン。サマリオ、どうかしたの?」


 ケアノスがこう聞くと、サマリオは焦りながらカイトたちの方を振り返って叫んだ。


「今すぐ外に出るんだ! こちらを狙う魔力を感じた!」


 この言葉を聞き、カイトたちはすぐに魔力を解放し、レンタカーから出て行った。


「あーん! 待ってー!」


 カイトたちの後を追うように、ツリーがレンタカーから出た。その直後、上空から魔力の塊が飛んで来てレンタカーに命中し、レンタカーは爆発した。


「どうやら俺たちの存在が知られているみたいだな。おい! さっさと出て来いよ!」


 二振りの剣を持ったウイークは大声で叫んだ。その直後、雷を纏った何かがウイークに向かって飛んで来た。


「グッ! 何だよこれ!」


 ウイークは魔力のバリアを張ってその何かを地面へ打ち返した。地面に埋まった何かを見ると、それがボールであることを確認した。


「ボール? 何でこんなもんが」


「ウイーク君。敵が来るぞ!」


 サマリオの声の直後、六人ほどの人影が見えた。




 両手に雷を纏っている男は、舌打ちをしながら走っていた。


「あの双剣ヤロー、俺のボールを地面に撃ち返しやがった」


「あまりリスクが多い武器を使うなダンカ。遠距離攻撃を行う場合はリスクが少ない銃を使えと何度も言ったはずだ」


「うるせーなターティー! 俺には俺なりの戦い方があんだよ!」


 ダンカはターティーに向かって叫んだが、ターティーはため息を吐いた。


「冷静さを欠いてはいけないよ。私があの双剣使いを相手にするから、君は急いで武器のボールを回収しなさい」


「嫌だね! あの双剣ヤローは俺がぶっ殺す!」


 そう言ってダンカは猛スピードでウイークに向かって飛んで行った。ターティーはやれやれと呟いたが、その横にいた女性がこう言った。


「あいつとは一緒にエンデルングに入った同期だけど、全然頭の中は成長しないわ」


「そう言うなニーニエ。歳をとると性格を変えるのは難しいからな」


「確かにそうね」


 ニーニエがこう言うと、弓を持った女性が近付いた。


「もう一発矢を放っとく? まだ魔力はあるから何発でも放てるわ」


「あと少しで戦いが始まるから、魔力はとっておいてねエンフ。あいつらはシャンジュたちを倒す実力があるわ」


「でも、さっきの一発は命中したわ」


「ぶっ壊れたのは奴らが乗っていた車よ。明らかにあなたの魔力を感じて奴らは車から逃げたわ」


「残念……」


 エンフは残念そうにうつむいた。エンフの後ろにいた大きな男が笑いながらエンフの肩を叩いた。


「失敗は誰でも起こすよ。まぁ、そんなに落ち込まないで」


「慰めてくれてありがとねアラギ。少し気を取り戻したわ」


「それで結構! さて、それじゃあオイラもダンカに続いて張り切るぞ!」


 と言って、アラギは魔力を解放して上空を飛んだ。後を追おうとしたニーニエだったが、ターティーが彼女を止めた。


「とりあえず彼らが暴れてからこの後のことを考えよう」




 ウイークは地面にめり込んだダンカのボールを剣で刺し、壊そうとした。だが、ボールは固く、剣で突いても壊れることはなかった。


「クソッ! 何だこの球は! 硬すぎて壊れない!」


「たりめーだクソ野郎! 俺が作った特製のボールだからな! だからさっさと返しやがれ!」


 ウイークに接近したダンカが、雷の糸を伸ばしてウイークに攻撃を仕掛けた。ウイークは周囲に炎を放って雷の糸を消そうとしたが、雷の糸は地面にめり込んでいたボールにくっつき、そのまま持ち上げた。


「んなっ! その糸、そこまで力があんのかよ!」


「磁力が入ってんのさ。さーて、テメーの相手は俺がするぜ! このダンカを楽しませてくれよ!」


 と言って、ダンカは雷の糸を振り回し、ボールを振り回した。勢いを付けてボールを叩きつけて攻撃してくると察したウイークは、両手の剣を構えてこう言った。


「こいつの相手は俺がする! あと一人誰か来るから、そいつの相手をしてくれ!」


「ああ! 死ぬなよウイーク!」


 カイトの声を聞き、ウイークはにやりと笑った。


「俺があんなヤンキーもどきに殺されると思わないでくれよ!」


 そう言って、ウイークはダンカの元へ走り出した。その直後、上空からアラギが降ってきた。


「ふぅ。着地成功。ん~? 君たちがオイラたちの相手なんだね~」


 アラギはカイトたちを見回しながらこう言った。カイトは刀を向けてアラギを睨んだ。


「なんだデカブツ! 俺たちが相手で文句あんのか!」


「文句はないよ~。ただ、オイラの一撃を受けて耐えられるかなーって考えてたのさ!」


 そう言って、アラギは背中に携えていた大きな二振りの大剣を持ち、カイトに向かって振り下ろした。カイトはすぐに魔力を解放してバリアを張ったのだが、アラギの大剣はカイトのバリアを一振りで粉砕した。その結果、カイトはアラギの強烈な一撃を受けてしまった。


「ガハッ……」


 血を吐いて倒れるカイトを見て、セアンはカイトの名を叫んだ。その様子を見て、アラギは笑みを浮かべていた。


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