航海の途中で
ケスタージュン付近の海の上。エンデルングの海賊船の中で悲鳴が轟いていた。部屋の中では、中央にある柱に三人の船員が全裸で縛られていた。そのうちの一人の頭は項垂れており、顔色も変色していた。
「で。テメーらがしくじったからシーポリスのバカ共に俺たちの目的とかばれちゃったじゃないの」
拷問をしている男性がこう言うと、部屋の隅で倒れているシーポリスの戦士を柱の三人に見せた。シーポリスの戦士は体中から血を流しており、右腕と左足を斬り落とされていた。近くにいた女性がシーポリスの戦士を棒で突いたが、返事がないことを知って笑い始めた。
「アハハハハハ! こいつ死んじゃったよ! どーするの? 臭い死体を放置するってわけにはいかないよね?」
「海に捨てておけ」
「オッケー」
女性は窓を開け、シーポリスの戦士の死体を窓から海へ投げ捨てた。落ちる音を聞いた後、男性は柱の三人にこう聞いた。
「次はお前らがこうなる番だ。しくじった以上、ちゃーんとあの世で反省しろ」
「すみましぇんでした……反省してます……」
「命だけは……命だけは助けてください」
と、船員の二人は泣きながらこう言った。返事がない一人を見て、女性は近付いて様子を調べた。
「アハハハハハ! マジ受けるんだけど、こいつ死んじゃってるよ~。役立たずな分、死ぬのも早いんだねぇ~」
「そうか、まぁいい。どうせこいつら全員処分するんだからな」
男性は武器を持って泣き叫ぶ二人に向かって攻撃を仕掛けた。しばらくの沈黙の後、二人の頭は地面に落ちた。
「俺が後で掃除をする。死体の処分を任せるぞ」
「あいあーい。まっかせんしゃーい」
女性は嬉しそうにこう言うと、船員の死体を海から投げ捨てた。その様子を見ていたエンデルングの船長、デルマグはため息を吐いてこう言った。
「シーポリスの連中が俺たちを狙ってここに来るのは間違いないだろう。だが、イコルパワーの採取に力を入れろと命令されている」
「大変ですね、船長。この状況をどうしますか?」
男性にこう聞かれると、デルマグはこう答えた。
「イコルパワーの採取に力を入れろ。それと、シャンジュ、カーデオ、エアエを呼んで来い。シーポリスの連中がいつ、どこで来るか分からないが、三人と一部の船員に任せれば足止め……できて殲滅することができるだろう」
「分かりました。シャンジュたちに命令しておきます」
「頼んだ」
と言って、デルマグは部屋から去って行った。
シーポリスの船の上にて。カイトはサマリオに剣の稽古をつけてもらっていた。カイトはサマリオに向かって木刀を振るっているが、サマリオはカイトの攻撃をかわし、反撃をしていた。しかし、カイトは素早くサマリオの動きに反応し、攻撃を防いでいた。
「腕が上がっているじゃないか。いい反応だぞ」
「ありがとうございます。サマリオさんも強くなった気がしますけど」
カイトはそう言って木刀を振るった。サマリオは攻撃を受け止め、にやりと笑ってこう言った。
「ジョンキーでの戦いの後、少し鍛えたのだよ。あの戦いで、私はまだ未熟だと察したからな」
そう言って、サマリオはカイトの木刀を払って突きを決めようとした。だが、カイトは寸の所で回避した。
「俺もそうです。ランドレディースでいろいろと経験しましたので」
「そうか。あの気難しいと言われる女戦士の島で何をしたか分からないが……まぁ、いい経験になったのならそれでいい」
そう話をしながら、二人は木刀を振るっていた。その様子を見ながらウイークは熱心だねぇと呟いた。そんな中、コスタが持っていたモップでウイークの頭を叩いた。
「掃除、手伝いなさい。世話になっている以上、皆の手伝いをしないと」
「うへぇ。あの二人はいいの? 掃除しないで稽古ばっかしてるけど。かれこれ一時間近くやってるぜ」
「いいんじゃないの? ただずーっとボーっとしているよりもね。早くしなさい」
コスタは無理矢理モップをウイークに渡し、去って行った。
「コスタちゃんは掃除しないのかよー!」
「もうした」
ウイークの言葉に対し、コスタの簡潔な答えが返ってきた。
その後、ウイークはため息を吐きながら掃除を始めた。最初は文句を言っていたウイークだったが、稽古を終えたカイトとサマリオも掃除を始めたため、文句を言うのを止めた。
一人だけ文句を言っていたら、ガキっぽいもんな。
ウイークは心の中でそう思った。そんな中、ウイークは遠くから魔力を感じた。カイトとサマリオも魔力を感じたため、掃除を止めた。
「この魔力は……」
「ああ。明らかにこちらに敵意を持っている」
サマリオはそう言うと、警報を鳴らすように叫んだ。すぐに警報が鳴り響き、周囲に剣や銃を構えたシーポリスの戦士が現れた。
「敵はどこですか?」
「恐らく、二時の方向だ。強い魔力を感じる。腕に自信がある者だけこの場に残れ。あとの者は船内に戻って待機!」
「はっ!」
サマリオの号令の後、自分の強さに自信があるシーポリスの戦士はその場に残り、それ以外の戦士たちは中へ戻った。
「さーてと、こっちも準備しないとな」
「ああ。いつ来るか分からないしな」
カイトとウイークはそう話し、武器を構えた。しばらくして、近くに何かが落ち、爆発した。
「大砲か!」
「あいつら、撃って来やがった!」
「撃ち返せ!」
敵が大砲を撃ってきたことを察し、シーポリスの戦士たちは反撃のつもりで船に装備されているバルカン砲を用意した。
「狙いは見えたか?」
「はい! 弾丸用意をお願いします!」
「いつでも撃てるぞ!」
「了解! バルカン砲、発射します!」
その後、一斉にバルカン砲が発射された。この攻撃を見て、カイトはこれなら敵船は粉々になるだろうと思った。
エンデルングの船に乗っているシャンジュは、ため息を吐いて大声で叫んだ。
「バリアの用意!」
「はっ!」
シャンジュの号令の後、船員はバリアを展開し、バルカン砲から船を守った。
「バルカン砲は続いている。奴らが弾切れを起こすまで展開しろ!」
「了解です!」
船員はバルカン砲の弾切れまで、バリアの展開を行った。数分後、バルカンの方の雨は止んだ。
「相手は弾切れのようだ。このまま奴らの船に突っ込め! 船員、武器の用意をしておけ!」
「アイアイサー!」
シャンジュの命令を聞いた船員たちは、やる気満々のアピールをするため持っていた武器を高く上げた。そして、勢いを付けて船はカイトたちが乗るシーポリスの船に近付いて行った。そんな中、シャンジュの横にいるカーデオとエアエが話しかけてきた。
「あいつら、私たちに喧嘩を売るなんていい度胸をしているじゃない」
「私たちの力で奴らを海に沈めてあげましょう」
二人はこう言ったが、シャンジュはため息を吐いた。
「二人とも、呑気な考えは捨てろ。ブラッディークローを追っているピラータ姉妹がいる可能性もある。あいつらとの戦いになったら、勝てるかどうか分からないぞ」
「そんなこと言っちゃって、本当に慎重だねあんたは。こいつがあるから大丈夫よ」
と、エアエは袋に入っている白い粉をシャンジュに見せた。シャンジュはエアエを睨み、こう言った。
「それは危険だと思った時のために使う。すぐに使ったら意味ないだろうが」
「切り札は最後まで取っておけ。そういうわけか」
カーデオの言葉を聞き、シャンジュは頷いた。
「その通りだ。これさえあればどんな強敵でも、力でねじ伏せることができるかもしれない。とにかく今は、奴らを倒すことに専念しろ」
「分かった」
「りょーかーい」
カーデオとエアエの返事を聞き、シャンジュは前を見た。シャンジュたちが乗る船は、徐々にシーポリスの船に近付いて行った。
さて、前から土日更新が始まりました。このあとがきを書いている時点ではまだ仕事が忙しく、たまーにしか新作執筆ができていません。だけど、休みの時とか利用して書いています。今作、ビューティフルパイレーツも土日のみの更新だけど、最終回まで地道にやって行くので応援よろしくお願いします。え? 最終回っていつ? 当分先だと思います。と言うわけで、高評価とブクマをお願いします。




