一対一の真剣勝負
ソンウクの強烈な一撃はセアンに襲い掛かり、セアンを倒す。その光景を見たカイトは、感情を爆発させてソンウクに立ち向かう。反射神経が強くなるスーパーモードシルバーになったソンウクだったが、カイトの奇策で動きを見切られてしまった。
攻撃を受けたソンウクは、構えを取ってカイトを睨み、周囲を見回した。スーパーモードシルバーの動きをカイトが見切ったのは、カイトが発した小さな氷の粒の仕業。カイトが氷の粒を発したのは、ソンウクの動きを見切るためである。ソンウクは素早く動くが、小さな粒が体に当たり、その粒の動きでソンウクがどう動くか分かるというわけだ。
こうなったら真っ向勝負を挑むしかないと思い、ソンウクは叫び声を上げながらスーパーモードレッドになった。
「行くぞ!」
「来い!」
カイトの叫びの直後、ソンウクは叫びながらカイトに向かって突進を仕掛けた。カイトは近付いてきたソンウクに対し、刀を振り下ろして反撃を仕掛けた。だが、ソンウクは左手の甲で刀を受け止め、右手の手刀をカイトの腹に突き刺した。
「グウッ!」
ソンウクの手刀はカイトの腹に命中した。まるで剣が刺さったかのような痛みがカイトを襲ったが、攻撃するチャンスだと思い、カイトは魔力を解放して冷気を発した。
「グッ!」
この冷気に触れると、体が凍ると感じたソンウクは後ろに下がったが、受け止めていたカイトの刀が自由になってしまった。カイトは刀を持ち換えて突きの構えにし、ソンウクに向かって突進した。
「うおおおおおおおおおおおおお!」
カイトは叫びながらソンウクに接近した。こうなったら反撃してやると思ったソンウクは構えをとったが、前に出ている左手に霜が付いた。これを見たソンウクは気付いた。カイトは冷気を発しながら近づいてきていると。
「とんでもねーことを考える奴だな」
そう言ってソンウクは魔力の塊をカイトに向けて放った。飛んでくる魔力の塊を見たカイトは動きを止め、防御した。カイトはダメージを受けなかったが、周囲に煙が発生し、そのせいで周りが見えなくなってしまった。
この煙を利用して、あいつが攻撃を仕掛けてくる。
カイトはこう考えながら開放している魔力をそのままに、いつソンウクが奇襲を仕掛けて来てもいいように構えていた。しばらくして、ソンウクの声と共に煙が切り裂かれた。ソンウクが蹴りを発して攻撃をしかけてきたのだ。その威力は周囲の煙を切り払うほど。これを受けると大きなダメージになると察したカイトはバリアを発した。
「そんなバリアを張っても意味ねーぞ!」
ソンウクはバリアを破壊するため蹴りを続行したが、バリアは蹴りが命中した瞬間に消えた。
「ええっ!」
一瞬だけ動揺したソンウクだったが、この一瞬がカイトにとって大きな時間となった。ソンウクの予想を外したカイトはソンウクの背後に回り、刀を三回連続で振るったのだ。
「ぐ……ぐああああああ!」
攻撃を受けたソンウクは悲鳴を上げ、体勢を崩した。カイトは追撃を放つため、巨大な氷の刃を発してソンウクに向けて放った。
あれを受けたらまずい!
氷の刃を見て、その威力を感じたソンウクは解放した魔力を両手に溜め、氷の刃を受け止めた。
「グッ! グググググ……」
力を込めて氷の刃を粉砕しようとしたソンウクだったが、カイトは魔力を込めて氷の刃を発したため、なかなか壊れることはなかった。
「グググ……グンガァァァァァァ!」
ソンウクは壊すことを諦め、氷の刃が別の場所に飛んで行くように向きを変えた。向きが変わった氷の刃は壁の方へ飛んで行き、壁に当たって崩れた。ソンウクはダメージを受けることはなかったが、この行動でかなり魔力を使ってしまった。そのせいで、ソンウクのスーパーモードは解除してしまった。
「へ……へへへ……オラがここまで追い込まれたのは……生まれて初めてだ」
ソンウクは小さく笑ってこう言った。だが、カイトの表情は変わらなかった。まだ勝負は終わっていない。そう思ったソンウクは立ち上がり、カイトに向かって接近した。
「だァァァりゃァァァァァ!」
体内の力を振り絞りながら、ソンウクは連続して蹴りを放った。カイトはこの攻撃をかわし、隙を見て刀を振るった。カイトの刀はソンウクの胸当たりに命中し、攻撃を止めた。
「グウッ! やるじゃねーか!」
「まだやれる! あんたを倒すためなら死んでも動く!」
カイトは前に出て、何度も刀を振るった。ソンウクは両腕をクロスさせて防御したが、魔力の使いすぎ、深手を追っている状態での防御はあまり意味がなかった。
「グウッ!」
この状態での防御は両腕を痛めるだけと察し、ソンウクは後ろに下がった。だが、カイトは左手を前に出して氷の刃を発した。
「グオッ!」
飛んで来た氷の刃を受けたソンウクは後ろへ吹き飛び、転倒した。カイトは居合の構えを取り、ソンウクに接近した。
「追撃か!」
ソンウクはすぐに立ち上がろうとしたが、遅かった。ソンウクが対処する前にカイトは刀を振るった。斬撃を受けたソンウクは体中に激痛を感じ、その場で立ち尽くした。
「ぐ……ぐあぁ……」
ソンウクの口から小さな悲鳴が漏れた。その直後、ソンウクの体から血が流れた。カイトは刀を鞘に納め、ソンウクに近付いた。
「おい、結構血が出てるけど……それでもやるか?」
「ああ。追い込まれているけど、オラはまだ倒れてねぇぞ……」
カイトの質問に答えながらソンウクは態勢を整えた。だが、足はふらついており、息もかなり上がっていた。それを見たカイトはため息を吐いてこう言った。
「我慢はしない方がいいぞ」
「オメェもそうだろ? あれだけ暴れて平気なはずがねぇ。感じてるぜ、オメェの魔力が弱くなってるって」
ソンウクはにやりと笑ってこう言った。カイトはため息を吐き、鞘に納めた刀に手を触れた。
「お互い、次の一撃でどうなるかが決まりそうだな」
「そうみてぇだな。次の一撃で勝負が終わる」
二人はこう言うと、後ろに下がった。
最初に倒れたラージュはゆっくりと目を開けていた。体中に激痛が走るが、それでも周りを見て状況を整理しようとした。
「コスタ……ケアノス……ライア……ウイーク……」
コスタたちが倒れている光景を見て、彼女らが倒されたことを察し、壁にめり込んでいるセアンを見てラージュは言葉を失った。
「セアンも……じゃあ……残っているのはカイトだけ……」
今、ソンウクと戦っているのはカイトだけ。そう理解したラージュは周囲を見てカイトとソンウクを見つけた。二人は睨め合うように立っており、カイトは居合の、ソンウクは格闘の構えを取っていた。その時のカイトとソンウクの魔力を感じ、二人の魔力が底尽きそうだと感じた。
「カイト……」
ラージュは心配な目でカイトを見ていた。そんな視線に気付いていないカイトは、ひたすらソンウクを見ていた。二人が睨め合いを始めて数分後、二人の目が開いた。
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
「でやあああああああああああああ!」
目が開いたと同時に、二人は同時に走り出した。カイトは居合の構えをとったまま走っていたためか、走る速度は遅かった。そのせいで、先にソンウクがカイトに接近した。
「これで終わりだァァァァァァ!」
叫びながらソンウクは右足の回転蹴りを放った。その動きを見たカイトは力を込めて刀を振り上げた。カイトの刀はソンウクの右足に命中し、ソンウクの攻撃を止めた。
「グアアアアアアア!」
斬撃を受けたソンウクは悲鳴を上げながら宙を舞った。そして、その状態のソンウクに対し、カイトは二撃目の斬撃を放った。
他のなろう作品とは違い、俺の作品は主人公サイドが苦戦する描写が多いです。その理由は、ただ簡単に勝たせるのがつまらないと思っているからです。やっぱりヒーローたるものは、苦戦する中で勝機を掴み、強敵を倒す者だと思っていると言うか、そういう展開が面白いと思っているからです。
こんな展開が多いのは、昔からコロコロとかジャンプとか読んでいたせいかな? そんな作者の作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします。




