ソンウクとの戦い
怒れるセアンとケアノスとラージュの容赦と慈悲のない攻撃により、ズジルダは無残な姿となって敗北した。ズジルダとの戦いが終わり、カイトたちはゾムコロから貰った養豆で回復していた。
「さて、あと一人か……」
カイトは準備運動をしているソンウクを見てこう言った。カイトは内心不安だった。ズジルダとの戦いでは、圧倒的な力の前にカイトはあっという間に倒されてしまったのだ。そのため、最後に戦うソンウクはかなり強いと思った。そう思うと、カイトはため息を吐いた。そのため息を見て、セアンはカイトに抱き着いた。
「なーにため息を吐いてんのよ? 私がいるから不安なんて何もないよ」
「そうか? あの人がどれだけ強いのか分からないのに……」
カイトは不安に思っていることをセアンに話した。その言葉を聞いたセアンは笑って答えた。
「大丈夫だって! 皆でかかれば勝てるって! 今までの戦いで苦戦したことはあるけど、なんだかんだで強敵を倒してきてるじゃない!」
「確かにな……」
「だから不安に思っていたらダメだって! 勝てるって信じ込めば大体どうにかなるって!」
セアンは笑いながらカイトを抱きしめていた。ケアノスはカイトに近付き、こう言った。
「不安なのは私も同じだけど、まぁ皆で戦えば多分勝てるわ」
「そうか……そうだな」
ケアノスの言葉を聞き、カイトの不安は少し和らいだ。
ソンウクは準備運動を終え、気合を入れていた。
「うし。そろそろはじめっぞ!」
ソンウクの言葉を聞き、カイトたちは立ち上がってソンウクの前に移動した。
「さーてと、戦いを始める前に、あんたはどれだけ強いか教えてくれ」
ウイークがこう言うと、ソンウクはにやりと笑ってこう言った。
「オラもズジルダと同じようにパワーアップする。それも、バリエーションがあるぞ」
返事を聞き、ウイークは額から汗を流した。
「おいおい、さっきの戦いでかなり苦戦したってのに、似たようなバリエーションを持ってんのかよ、あんたは」
「まぁな。これも経験を重ねた結果だ」
そう言って、ソンウクは軽く跳ね始めた。
「それじゃあ始めるか。とりあえず、オメーらの力を見せてくれ。誰からでもいいから、オラに攻撃を仕掛けて来い!」
ソンウクは手招きをしながらこう言った。その言葉を聞き、カイトたちは口を開けて驚いた。
「挑発のつもりかあんた?」
カイトがこう聞くと、ソンウクは慌てながら手を振って否定する素振りを見せた。
「違う違う! このまま戦いを始めちまうと、オメーらの力を見ることができねーからさ、とりあえずどれだけの力を持つかこの身で知りてーんだよ」
「俺たちの力を試すってわけだな。それじゃあ俺から行くぜ!」
ウイークはそう言って、両手の剣を持ってソンウクに斬りかかった。ウイークは力を込めて剣を振り下ろしたが、ソンウクにできたのは多少の傷だった。
「おいおい、結構力を込めたんだけどな」
「それでもいい攻撃だったじゃねーか。そんなに悲観することはねーぞ」
「それじゃあ次は私!」
と言って、ライアが上空からナイフを構えてソンウクに攻撃を仕掛けた。攻撃を仕掛ける中、ライアはソンウクが防御の構えをとっていないことに気付いた。その状態で、ソンウクにできる傷は深くなかった。
「グッ! 結構分厚い皮膚だね。あんた、本当に人間?」
ライアは攻撃を止めて地面に降りたが、ソンウクは手で体を払ってこう言った。
「オラたちは人間じゃねーさ。なんつーか、うーむ……」
「俺たちは全知の剣を作った奴が生み出した思念体だ。鍵を守るために存在する」
「じゃあ人間じゃあないんだね」
ライアがこう言うと、あることに気付いたウイークがこう言った。
「おいおい、あんたは鍛えているって言ってたけど、誰が相手になってたんだよ」
「この場にいる皆だ。だからオラは強くなったんだ」
と、ソンウクはにやりと笑った。ソンウクはかなり強い。そう思ったカイトたちだったが、魔力を解放したラージュが大剣を構えてソンウクの腰元に向かって大剣を振るった。
「この一撃ならどう? 耐えられるかしら?」
「ヘヘッ、来い!」
ソンウクは体全体に力を込め、ラージュの攻撃が来るのを待った。そして、ラージュの大剣はソンウクの腰に命中した。大剣の刃はソンウクの腰に少しめり込んだが、深くまでめり込まなかった。
「グッ……硬い……」
「ヘヘッ。そう残念そうに言うなよ姉ちゃん」
「じゃあこれはどうだ!」
ケアノスは魔力を解放し、ソンウクの腹に向けてレイピアを放った。何度もレイピアを突いたケアノスだったが、ソンウクにダメージを与えることはできなかった。
「グッ! これでも無理なの!」
「ああ。オラの体はかなりかてぇからな」
ソンウクがにやりと笑ってこう言ったが、その直後にコスタが放ったライフル弾がソンウクの額に命中した。ライフル弾を受けた時の衝撃で、ソンウクは後ろに倒れた。この一発で倒れたかとカイトとセアンは思ったが、ソンウクはすぐに起き上がって額を触った。
「おいおい、今度はライフル弾かよ。衝撃はあったけど、この弾丸じゃあオラの頭は撃ち抜けねーぞ」
そう言いながら、近くに落ちている潰れたライフル弾を手にして遠くへ投げた。潰れたライフル弾は壁に激突し、そのまま奥深くめり込んだ。その後、ソンウクは首を回しながらカイトとセアンの方を向いた。
「後はおめぇらだ。もし来るなら、二人同時で来てもいいぞ」
その言葉を聞き、カイトとセアンは顔を見合わせてこう言った。
「それじゃあカイト、遠慮なく行こう!」
「ああ! 二人でなら奴を倒せる……いや、ダメージを与えることができるはずだ!」
会話後、カイトは刀を持ち、セアンはカイトの手に触れて魔力を解放した。その時、カイトの刀の周りには、青と緑のオーラが発した。それを見たケアノスは驚いてこう言った。
「すごい! これならあいつにダメージを与えられるかも!」
「二人の魔力が一つになったから、威力も上がっているはず」
ケアノスの横にいたコスタがこう言った。魔力を解放した後、カイトとセアンは息を合わせて走り出し、ソンウクに接近した。
「うおおおおおおおおお! これでも喰らえェェェェェェェェェ!」
二人は同時に叫び、刀を振るってソンウクを一閃した。
ソンウクが一閃された時、セルリムたちは目を開いてこの戦いの様子を見ていた。
「すごい一撃だ。剣を振るった時の衝撃がここまで響く」
ザムチャンは身震いしながらこう言った。ジャスセンハは目を細めて、ソンウクの様子を確認しようとした。
「ソンウクはどうなった? まだ立っているか?」
セルリムは慌てながらジャスセンハにこう聞いたが、煙が濃すぎてソンウクの無事を確かめることはできなかった。そんな中、ゾムコロとズジルダがこう言った。
「奴は生きている」
「あいつ、魔力をゆっくり開放していやがる」
その言葉の直後、ソンウクは魔力を解放して周囲の煙を吹き飛ばした。ソンウクの体には、一閃された大きな切り傷があった。
「痛かったぞ今の一撃は。流石のおらでもヤベェって思っちまったぞ」
その言葉を聞き、カイトとセアンは驚いて茫然としていた。
「嘘だろ。かなり魔力を込めたのに」
「傷はある。だけど……それで奴は立ってるよ」
カイトとセアンが呟く中、ウイークが急いで二人をソンウクから遠ざけた。
「しっかりしてくれ二人とも! あいつの攻撃が来るぞ!」
ウイークがこう叫んだ瞬間、ソンウクはウイークに向かって突進した。
「ガハッ!」
突進を受けたウイークは衝撃で浮き上がった。その後、ソンウクは左足でウイークを蹴り飛ばした。
「さて、こっからオラも攻めて行くぞ! 本気でやらねーと、死んじまうと思えよ!」
カイトとセアンに向かって、ソンウクはこう言った。
そろそろ今回の章も終わりが近付いてきています。次回はブラッディークローのもう一つの狙いと動き、そしてその傘下との激闘です。いろいろと今後の展開について考えているので、伝える時が来たらあとがきを利用して話をしようと考えています。最後に、この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします。




