迫る狼の牙
ゼルリムとの戦いを終えたカイトたちは、チョコバーを食べて体力と魔力の補充をしていた。ゼルリムの予想外の強さを感じ、合間の休み時間で確実に体力や魔力を回復しなければと思ったからだ。
「あと五人。それまで弾が足りるかな?」
コスタはポシェットの中の弾丸を見ながら呟いた。この戦いが長く続けば、こっちが不利になるとカイトは思い、気合を入れ直そうとした。だが、ザムチャンが魔力を解放した。
「休み時間は終了だ。次の戦いを始めるぞ!」
「えー、もう? あんたは戦ってないから疲れていないと思うけど、私たちは結構へとへとなのよー!」
ライアが文句を言ったのだが、ザムチャンは首を振ってこう言った。
「俺はそんなに甘くはない。どんな状況であれ、俺たちを倒さないと生きてここから出れないぞ」
「もう少し甘くしてよね、もう」
「甘くしたらまともな戦士にならないだろうが。じゃあ行くぞ!」
ザムチャンは猛スピードで前にいるライアに接近した。もう戦いを始めるのかと思いながらライアは舌打ちをし、魔力の衝撃波を発してザムチャンを吹き飛ばした。
「ほう。文句しか言わない娘だと思ったが、いい反応じゃないか」
「褒めても何も渡さないよ」
「さーて、私たちも動くわよ」
ラージュは大剣を持ってザムチャンに迫った。セアンは後ろからハンドガンを構え、ザムチャンに向けて発砲した。飛んでくる弾丸を見て、ザムチャンはにやりと笑った。
「この程度の攻撃は簡単にさばける。本命は、あのでかい剣を持った娘の攻撃だな」
ザムチャンは飛んでくる弾丸を左手だけではたいて落とし、振り下ろされるラージュの大剣を左手で押さえた。
「左手だけで……」
「ここで言っておく。俺は右利きだ」
「本気を出してないってことを言いたいわけね」
「その通りだ。さっきの奴の相手をしたが、あの時も俺は本気を出していなかったからな」
この言葉を聞き、ラージュは無残な姿となったギレムのことを思い出した。
「あれはあなたがやったのね」
「まーな。力を試すために戦ったが、大した力じゃなかったな」
「にしてもやりすぎじゃないの? 弱いと察したら、逃がすことも大事だと思うわよ」
「悪いが強かろうが弱かろうが、この遺跡に入ったら俺たちを倒すまで、生きて返さない。それが掟だからな」
「ルールをちゃんと守るのね。結構真面目だけど、人を殺すのはやりすぎだと思うわよ!」
ラージュは魔力を解放し、大剣を振るった。攻撃が来ると察したザムチャンは大剣から手を離し、後へ下がった。
「ふっ。力を出す時に魔力を感じるぞ」
「偉そうなことを言うんじゃねーぞ!」
と、叫びながらウイークが両手の剣を振り下ろした。ザムチャンは後ろを振り向かずに、両手を上にあげてウイークの斬撃を受け止めた。
「んなっ! 魔力を使わずに俺の攻撃を……グッ……ガッ……剣が動かねぇ」
ウイークはザムチャンから離れるために剣を動かしたが、剣を掴んでいるザムチャンの手はなかなか離れなかった。
「いい攻撃だ。だが、奇襲するなら大声を出すのはいけないなぁ」
と言って、ザムチャンは後ろにいるウイークが前になるように振り下ろした。ウイークは地面に激突し、痛そうに腰を抑えたが、その隙にウイークは獣の爪のように手を構えた。
「見せてやろう。あらゆるものを貫く狼の爪を! 行くぞ、必殺……ウルフファング!」
ザムチャンはそう叫び、猛スピードでウイークに近付いた。魔力は感じぬが、ザムチャンの気迫を察してこの攻撃を受けたらまずいと思ったウイークは、魔力でバリアを発し、その隙に後ろに下がった。
「ウイーク! 大丈夫か!」
後ろにいたカイトはウイークのことを心配し、近付いて様子を見た。ウイークの額から冷や汗が流れており、呼吸もかなり乱れていた。目の前にあるウイークが張ったバリアは、ザムチャンの手で貫かれてひびが入っていた。
「嘘だろ、魔力を使わず手だけでバリアを……」
「俺のウルフファングは何でも貫く。バリアだろうが、人体だろうが関係ない」
そう言って、ザムチャンはにやりと笑った。だが、その隙にセアンとラージュが横から近付いて攻撃を仕掛けた。
「隙あり!」
「カッコつけてる暇があるなら、周りをちゃーんと見た方がいいわよ!」
セアンとラージュがこう言ったが、ザムチャンは再び笑ってこう言った。
「同時に攻撃か。無駄だよ!」
ザムチャンは魔力を解放し、セアンとラージュを吹き飛ばした。吹き飛んだ二人を見て、カイトとウイークは助けようとしたが、ザムチャンはウイークが張ったバリアを破壊し、ウイークに襲い掛かろうとしていた。
「クソッたれ!」
カイトは刀を構え、ザムチャンの頭に向かって突きを放った。ザムチャンは顔を動かしてカイトの攻撃をかわしたが、下にいるウイークが剣を振り上げる構えをし、カイトの攻撃に合わせて剣を振り上げた。
「グウッ!」
ウイークの斬撃を受けたザムチャンは悲鳴を上げながら後ろへ下がった。それに合わせ、ナイフを持ったライアがザムチャンに接近した。
「くーらーえー!」
ライアは叫びながらナイフを振り回した。ナイフの攻撃はザムチャンに命中したが、ザムチャンは防御していたため、ダメージはなかった。
「いい攻撃だ。だが、一発一発の力がなさすぎる!」
と言って、ザムチャンはライアの攻撃の隙を見て、左手を振り上げた。ザムチャンの左手はライアの右肩に命中し、大きな傷を与えた。
「ウワッ!」
「連続攻撃は悪くない。だが! 力がないと相手を倒すことは不可能だ。ここでお前を仕留めてやる!」
「力ないと相手を倒せないのね。じゃあ、あれば倒せるんだよね?」
と言って、セアンが魔力を解放してザムチャンを一閃した。攻撃を受けたザムチャンは後ろに下がったが、セアンはザムチャンの動きに合わせてハンドガンを発砲した。
「グッ! ウウッ! 魔力を解放したか……だが、一人で俺を倒せるか?」
「私は一人じゃないよ」
セアンがこう言うと、ケアノスがジグザグ移動しながらザムチャンに接近し、レイピアを放った。
「グフッ! チームプレイか……」
ケアノスのレイピアの刃は、ザムチャンの腹を貫いていた。ケアノスはレイピアを動かし、ザムチャンの腹を一閃した。
「このタイミングを狙っていたのよ。皆で力を合わせてあんたに隙を作らせて、一撃を与える」
「そうか。だが、スナイパーライフルを構えている娘が戦いに参加しなかったのはどうしてだ?」
「弾の節約よ」
「節約か。そうか。ゼルリムより少ない人数の中で、俺は負けたのか。まだまだ鍛えたりないな、俺」
と言って、ザムチャンは倒れた。
ザムチャンが負けたことを知り、鍵を守る戦士たちは話を始めた。
「ゼルリムに続いてザムチャンも負けたか」
「かなりやるな、あの子供たち。あいつらの強さに興味がわいたぜ」
「俺もだ。次は俺が行くぞ」
戦士の一人がこう言ったが、別の戦士が前に立った。
「俺が行こう。戦いをやっている以上、負けたくないからな」
「そうだな。じゃあ頼むぞジャスセンハ。オメェの力を見せてやれ」
「ああ。もし、俺が負けたら後は頼む」
「そんなことを言うな。そう言うと負けるんだ」
「そうだな。じゃあ行ってくる」
ジャスセンハと言われた戦士は高く飛び上がり、カイトたちの前に到着した。
「俺はジャスセンハ。君たちが戦う次の相手だ。さぁ、いい戦いにするぞ」
この言葉を聞き、コスタはこう言った。
「もう少し休ませてくれない? こっちは連戦で疲れているのに」
「ふむ……すぐに戦わなければならないが……そうだな。疲れた相手に戦って勝っても嬉しくない。もう少し待とう」
と言って、ジャスセンハは座った。
最近、パソコンの動きがクッソ遅いです。起動するのも数分かかる。うーむ、こりゃー買い替えの時期が来たのだろうか? 今現在で八年は使ってるし……。どーしましょ。
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