セアンVSフワウ
コスタとスラクがジクゼニオスの接近を察したころ、戦いを終えたラージュたちも異変に気付いていた。
「他の魔力が近付いてきているわね」
「うん。ジクゼニオスの奴らかな?」
「多分そうね。この状況で来るとしたら、あいつらしかいない」
ラージュたちは話をした後、セアンとフワウが戦っている光景を見て、再び顔を見合わせた。
「セアンはまだ戦っているわね。話をしたら邪魔だって言われそう」
「コスタの方が分からないけど、とにかくジクゼニオスを倒しに行こう」
「私、カイトの方に行ってこのことを伝えてくるわ」
と言って、ケアノスはカイトの方へ向かった。その後、ライアとラージュは先に村の外へ向かうことにした。
フワウは剣を振り回し、セアンに攻撃を仕掛けていた。セアンは体を動かして攻撃をかわしつつ、フワウに反撃を行おうとした。だが、行動に移すことはなかった。セアンはフワウの動きを見てこう考えていた。攻撃の隙がないと。
「フッ。私の動きを見て驚いているのか?」
と、フワウは笑いながらこう言った。言い返してやろうと思ったセアンだったが、フワウが言ったことは真実なので、言い返すことはしなかった。この言葉を聞き、セアンは更にフワウの実力を把握することができた。フワウの攻撃の動きはかなり早く、剣筋に乱れもない。そんな動きをしているのに、生きは乱れていなかった。
まずいなー。結構強敵だ。
セアンは深呼吸しながら、心の中でこう思った。その時、セアンのほんの一瞬の隙を見計らい、フワウは攻撃を仕掛けた。驚く声を上げながらセアンは攻撃をかわし、後ろに下がった。
「どうした? 私に攻撃を仕掛けてみろ!」
笑いながらフワウがこう言ったため、少し苛立ったセアンは左手のハンドガンを手にし、発砲した。フワウはセアンが放った弾丸をかわし、にやりと笑った。
「そんなおもちゃが私に通じるか」
「おもちゃ? 私の武器におもちゃはないよ」
と、セアンは言葉を返した。ようやく言葉を返すことができたとセアンは笑い、フワウは不審な顔をした。その時、フワウはセアンの笑みを理解した。
「魔力を使ったか!」
フワウは後ろを見て、セアンが放った弾丸は魔力で作られた弾丸で、追尾するように力を込められていたと理解した。
「そんな弾丸を作るとは!」
フワウは飛んで来る魔力の弾丸に対し、突きを放った。激しい破裂音を発しながら魔力の弾丸は破裂したが、その隙にセアンの蹴りがフワウを襲った。
「グアッハァ!」
「うーし! まず一発!」
フワウを蹴り飛ばした後、セアンはガッツポーズをしていた。フワウはすぐに立ち上がり、セアンに向かって剣を振るった。セアンは攻撃をかわし、ハンドガンをフワウに向けた。
「このまま引き金を引けば、あんたの額に風穴ができるよ。降参したら?」
「降参するのは貴様の方だ!」
フワウはそう言って、魔力を解放した。すると、フワウの剣の刃の周りが急に凍り付き、大きな氷の刃ができた。
「これで逃げることはできないぞ」
「カイトの真似? そんなのが私に……」
呆れたようにため息を吐きながらセアンは言葉を続けようとしたが、セアンは魔力を解放し、周囲に強風を発した。その結果、風が当たった場所に霜が付着した。
「剣の周りに物体を凍らせるほどの冷気を発しているのね」
「察しがいいな。それなりに経験を積んでいるのか」
「こんな島で鍛えているあんたより、戦いの経験はあるつもりだよ」
「鍛えている私よりもか。大口を言うな。長年鍛錬すれば、いずれ大きな力となる!」
フワウは剣を構え、セアンに斬りかかった。セアンは迫って来る氷の刃に対し、風を発して防御した。それでも、フワウは剣を振り下ろした。
「ウワッ! 無理矢理剣を振り下ろすねー」
「無駄口を言う隙は与えぬぞ!」
と言って、フワウは何度も剣を振るった。魔力を使う隙もない連撃をセアンはかわしていたが、冷気が体に当たり、一部分が凍り付いた。
「ウウッ、真冬みたい」
そう言いながら、セアンは魔力を解放して後ろに下がった。そんな中、ケアノスがカイトの元へ向かっている光景を見て、何かがあったのかと察した。
コスタとスラクは木の上に移動し、ジクゼニオスの様子を見ていた。そんな中、見張りの一部がやって来た。
「スラクさん。連絡を受けました」
「あいつらは一体何者なんですか?」
見張りがこう聞くと、スラクはコスタの方を見た。コスタは自分が説明した方がいいと察し、見張りに自分たちのこととジクゼニオスのことを話した。話を聞いた見張りは納得し、ジクゼニオスの方を向いた。
「ここからあの船までかなりの距離がありますね」
「これでは届かない……」
見張りの一人は弓矢を持って呟いた。コスタはその弓矢を見てこう聞いた。
「銃は使わないの?」
「ああ。この島に近代の武器はないんだ。それと、家電やガスもない。原始時代みたいな島だ」
「そうなのね。私たち、それなりに有名だけど……この島の人たちが何も知らないって理由が分かったわ」
コスタはそう呟くと、スラクがコスタの肩を叩いた。
「船を見てくれ。小さな光が見えた」
「どれどれ……本当だ」
コスタはジクゼニオスの一部が島に上陸したと察し、見張りの方を見た。
「仲間は他に誰かいる?」
「ええ。ざっと五十人ほど」
「結構いるわね。武器はこの弓矢?」
「はい。それとショートソードを持っています」
「そう……弓矢でどこまで戦えるか分からないわね……」
コスタが難しそうな顔をすると、見張りの一人がこう言った。
「武器は弓矢とショートソードだけではありません。侵入者対策でいろいろな罠を張っています」
この言葉を聞き、コスタは驚いた表情をした。
「罠があるの? 私たちは普通にあの村に入ることができたんだけど……」
「運よく罠がないルートを通ったんでしょう。とにかく、奴らが罠に引っかかることを願いましょう。動くとしたら、そこから動きましょう」
見張りの言葉を聞き、コスタは呼吸をして今後の展開を考えた。
フワウはセアンの動きがおかしいと察したが、攻撃を止めることはしなかった。だが、次第に周囲に異変があったことを察した。
「何かあったな」
「多分ね。私の姉妹もいないし……ちょっと待って」
セアンはフワウにこう言うと、カイトとケアノスの元へ向かった。ケアノスはカイトにジクゼニオスが接近したことを伝えており、カイトはやる気を見せていた。そんな中、セアンとフワウが現れた。
「セアン……おわっ!」
カイトはフワウの姿を見て動揺し、ケアノスの後ろに下がった。セアンはカイトに落ち着くように伝えると、カイトは不審そうな目でフワウを見ながら前に出た。
「ケアノス、何かあったの? もしかして、ジクゼニオスの連中が来たの?」
「その通りよ。今、ライアとラージュが外へ向かったわ」
「外へ? 外には罠がたくさんあるぞ。罠がある場所を知っているのはこの島の女戦士たちだけだ」
フワウの言葉を聞き、ケアノスは驚いた表情をした。
「私たちは罠に引っかからなかったけど……あの二人が心配になって来た」
「急いで合流しよう」
「その通りだな。そうだ、ウイークはここに置いておくから」
と言って、カイトは背負っていたウイークを安全な場所に置いた。その後、三人はライアとラージュと合流しようとしたが、フワウが呼び止めた。
「この島に新たな奴が来たとすれば、見張りが動いているだろう。私も同行する」
「うん。いいよ」
セアンが即答し、カイトは驚いたが、今の状況一人でも仲間がいれば、それもこの島の地理を知っている人が仲間になれば心強いと考えた。その後、フワウを加えたカイトたちは外へ向かった。
この作品では、剣を持つキャラがたくさんいます。ですが、一部キャラには剣とは書かずに、その剣の種類を書くことが多いです。ピラータ姉妹やカイトは、剣を使うのですが形に特徴があるので、その種類の名前で書いています。一人一人違った剣を使っていると印象付けたかったのでそうしてます。もしよかったら、高評価とブクマをお願いします!




