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ランドレディースの村


 女装してランドレディースへ潜入したカイトは、村の女戦士から話をされていた。


「それで、君の名前は?」


 カイトの前にいる女戦士は、相手を安心させるような顔でこう言った。カイトは緊張しながら、こう答えた。


「えーっと……その……」


 いきなり名前を聞かれたため、本名を出すのはまずいとカイトは思った。なるべく女っぽい名前はないかと考えたが、女戦士は不審に思った。


「どうした? 名を言えない理由でもあるのか?」


 この言葉を聞き、カイトははっとした表情になった。


「そうです! 私はいろいろと事情があって名を出すことができないのです! すみません!」


 と、カイトは高い声でこう言った。返事を聞いた女戦士は納得した表情をしていたが、カイトは心の中で自分ののどから女っぽい声が出るなんてと思っていた。


「では、出身地は……いや、聞くのを止めておこう、名前も出せないなら、生まれた場所も言うこともできないだろう」


 女戦士はそう考え、あれこれ聞くのを止めた。カイトは何とかなったと思いながら、安堵の息を吐いた。女戦士はカイトの表情を見て、笑い始めた。


「緊張させてしまったようだな。申し訳ない。いろいろな事情があるんだなと思ってくれ」


 女戦士は息を吐いた後、カイトにこう言った。


「私もいろいろあったんだ。私の故郷では戦争が多発し、そのせいで私の両親は殺された。私は命からがら逃げてきたが、腐った男共が私を……」


 女戦士はこう言った後、壁を殴った。その際、物凄い音がしたため、カイトは驚いた。


「すまん。トラウマを思い出してしまってな……私は腐った男たちを殺してしまい、何とかここへ逃げてきた。ここは私のようにいろいろあって逃げてきた女性たちが住む島だ。鍛えれば、私のように強くなれる。君も鍛錬すれば、男よりも強くなれるぞ」


 女戦士はそう言って、去って行った。その後、別の女戦士が現れてカイトにこう言った。


「しばらく村の中を歩くといい。島の中には凶暴なモンスターもいるから、私が見守りでついて行こう」


 と言った。カイトはまずい状況になったと思った。話を終えた後、牢屋を探してウイークを見つけ、一緒に逃げようと考えていたが、村の女戦士が一緒についてくるとは思ってもいなかった。


「あの……私は大丈夫ですので」


「何を言っている。そんな小さな体じゃあモンスターには勝てないぞ。安心しろ、私が見守ってやるから」


 女戦士はカイトに顔を近付けてこう言った。その言葉を聞き、安心する気がしたが、ウイークを探しに行きにくいという気もした。


 その後、カイトは村を歩き始めた。女性しかいない島と言うだけあってか、村には女性しかいなかった。だが、村の女性たちは剣や槍を振り回し、魔力の鍛錬を行っていた。


「皆さん、何をやっているんですか?」


「鍛えているんだ。この島には水やガス、電気が流れていない。魔力を頼っているんだ。それと、外からの襲撃を守るための道具も質素な物しかない。だから、いざと言う時は自分で自分の身を守るしかないんだ」


「へ……へー、そうなんですね」


 もし、騒動になれば屈強な女戦士が襲い掛かる。そう考えたカイトはウイーク救出が難易度の難易度が上がったと思った。そんな中、ウイークの居場所はどこだと思い、女戦士にこう聞いた。


「あの、もし外から変な人が来たらどうするのです?」


「村の戦士たちで袋叩きにして、牢屋送りだ。どうした? この島に来た奴が気になるのか? 見るものじゃないぞ」


 女戦士はこう言った。話を聞きだすなら今がチャンスだと思い、カイトはこう聞いた。


「あの、牢屋ってどこにあるのですか? 私もこの村にお世話になるとしたら、場所を知っていた方がいいかなって思って……」


「うむ。そうだな、とりあえず教えておこう」


 女戦士はそう言って、振り返った。カイトはよっしゃと心の中で思いながら、女戦士の後を追いかけた。




 カイトは村の外れにある小さな建物の前にいた。だが、その建物は牢屋と言うより小屋と言うような感じだった。


「小さい小屋ですね。まさか、この中に……」


「いやいや、そんなことはない。牢屋は小屋の中の階段の中にある。地下牢だ」


 その後、二人は小屋の中に入り、階段を下りて行った。


「うわ……」


「ここが地下牢だ。多少汚いが……まぁ、地面をくりぬいて作ったから仕方ないと思ってくれ」


 女戦士はそう言って、火の魔力を発して明かりを点けた。地下牢の中にはいくつか牢屋があるが、それらの中には人がいなかった。ここにウイークはいないのかとカイトは思ったが、女戦士は壁の方を指差してこう言った。


「実はな、最近この島の周囲にいた変な奴を捕まえたんだ。見てみるか?」


 この言葉を聞き、これがウイークだとカイトは考え、見てみたいと答えた。返事を聞いた女戦士は、カイトを連れて奥へ向かった。


「こいつだ。見ろ、汚らしい男だろう?」


 女戦士は笑いながらこう言った。そこには傷だらけで上半身裸のウイークが吊り下げられていた。ウイークは顔を上げ、カイトと女戦士がいることを察した。


「おいおい、またあんたか? 肉を食べさせるときは素手じゃなくてフォークを使いな、非常識女」


「ふん」


 女戦士は鼻で笑った後、そっぽを向いた。カイトはウイークを見て、小声でこう言った。


「後で助ける。隙を見てまた来る」


「へ?」


 ウイークは一体何のことかと思ったが、カイトが女装して潜入したと理解した。




 それからカイトは女戦士たちの隙を見て、再び地下牢へ向かおうとした。だが、カイトを見守ると言った女戦士はずっとカイトの傍に降り、カイトのことが気になった別の女戦士や住人がカイトに近付いた。そのせいで、カイトは自由に動けなかった。


 数時間後、日が落ちて夜になった。女戦士や住人は夕食の支度や風呂の支度をするため、どこかへ向かった。カイトの護衛をしていた女戦士も夕食の支度をすると言って、去って行った。


 今がチャンスだ。


 そう思ったカイトは地下牢へ向かった。その時、住人がカイトに気付いてこう聞いた。


「あら? どこへ行くのですか?」


「えーっとその……お花を摘みに。オホホホホホ」


 と言って、足早に去って行った。何とか怪しまれずに地下牢がある小屋へ到着したカイトは、見張りがいないことを察し、急いで地下牢へ入った。そして、ウイークの元へ到着した。


「ウイーク、助けに来たぞ」


「ありがとうカイトォォォ! こんな恥ずかしい姿で俺を助けに来てくれたのか?」


「こんな姿にされたのはセアンの仕業だ。でもまぁ、このおかげで怪しまれずにここに来れたよ」


 と言って、カイトはウイークの魔力を使って拘束具を破壊した。


「今なら誰もいない。急いで逃げよう」


「ああ」


 その後、カイトとウイークは急いで小屋から出て行った。そして、近くの森の中へ入り、そこから島の外に出てセアンたちと合流しようと考えた。


「早く、早く! こんな状態じゃあ俺は戦えないし、女が相手だと戦う気がない!」


「俺もだ。早くしないと、いずれ奴らは俺たちが逃げたってことに気付く!」


 二人は慌てて森の中を走っていたが、後ろから矢が飛んで来た。カイトは飛んで来た矢の存在に驚いたが、逃げることに専念した。


「まずい、ばれた!」


「チクショウ! 早いぞ!」


 ウイークがこう言った直後、突如足元からネットのような物が現れた。それに気付いたカイトは逃げようとしたが、逃げるのは不可能だと判断し、魔力の塊を上に向けて放った。




 その頃、島の外で待機していたセアンたちは島を見ていた。すると、島から魔力の塊が撃ちあがるのを目撃した。


「あれはカイトの魔力。ウイークと合流したんだ!」


「早く行こう! それと、何かあったみたい!」


 コスタは望遠鏡を手にし、島の中を見ていた。島の外にいる女戦士が慌てて動くのを見ていたからだ。セアンはサディたちの方を見て、こう言った。


「今からカイトたちを助けに行ってくる。安全な所に船を動かしておいて!」


「うん、分かった。気を付けてね!」


 サディの返事を聞いた後、セアンたちは魔力を解放してランドレディースへ向かった。


 今、このあとがきを書いている時の状況の話なんですが、新作を考えています。ビューティフルパイレーツや異世界革命物語は三人称で書いていましたが、次の話は一人称で始めようと思っています。状況次第では、そっちをメインにするかもしれません。まだ準備段階なので、深くは語れませんが。


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします。もし、新作が始まったらそっちも応援をよろしくお願いします。え? 気が早いって? 気にするな。

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