戦いは終わったが
カイトたちは魔力を一つにまとめ、巨大化したラブアに向けて放った。この攻撃で、ラブアは空高く舞い上がった。この攻撃を受けた時に、ラブアが持っていたアップボディが落ちたガラスのように砕け散った。そのせいで、ラブアの体は元に戻った。ラブアは地面に落下し、気を失った。
一方、カイトたちはサマリオから回復してもらい、何とか動けるまでになった。サマリオと共にラブアが落ちた場所へ向かった。
「やっと倒したか……」
「そうだね」
サマリオとセアンは気を失っているラブアに近付いた。そんな中、空から人影が現れた。
「誰だ!」
突如現れた人影を見て、サマリオは武器を構えた。カイトたちも武器を構え、人影を睨んだ。
「すみません、そんな怖い顔で睨まないでくださいよ」
人影の言葉を聞き、カイトとセアンはすれ違った青年、ガーティブだと察した。
「あんたはあの時の人!」
「どうしてこんな所に?」
カイトとセアンの問いを聞き、ガーティブはため息を吐いた。
「すみませんが、あなたたちの質問に答えるつもりはありません。この人を殺さないといけないので」
と言って、ガーティブは素早く剣を手にし、倒れているラブアを斬り刻んだ。長年戦っていたサマリオだったが、この時のガーティブの動きに対応することはできなかった。
「なっ……何だこの技は……」
「教えたくないですね」
ガーティブはため息と共にこう言ったが、それと同時にカイトとセアンが武器を持って襲い掛かった。
「とにかくお前を倒す!」
「容赦はしないよ!」
飛んでくるカイトとセアンを見て、ガーティブは再びため息を吐いた。
「すみません……今のあなたたちじゃあ、僕には敵いませんよ」
と言って、ガーティブは剣を振り上げた。それと同時に、地面を深く切り裂かれた。見えず、威力が高い衝撃波が放たれたとサマリオは察したが、それより先に衝撃波はカイトとセアンに命中し、遠くへ吹き飛ばした。
「カイトさん! セアンさん! よくも!」
メリスはガーティブに殴りかかろうとしたが、ケアノスがメリスの腕を引っ張った。
「止まりなさい。あの人の言う通り……今の私たちじゃあ勝てない……絶対に」
この時のケアノスは、顔中に冷や汗をかいていた。メリスはそれに察し、ブチ切れたら強いケアノスも戦いを拒否するほど、ガーティブが強いと考えた。サマリオも、剣を鞘へ納めていた。
「捕まえる気がないなら僕は行きます。ま、捕まえようとしたら殺しますけどね。それじゃあ、二度と会わないことを祈ります」
と言って、ガーティブは魔力を解放した。その時、ガーティブの周囲に衝撃波のせいで砂煙が舞った。ケアノスたちが目をつぶっている間に、ガーティブの姿は消えていた。
こうして、トリガミヤワー海賊団の取引妨害と戦いは終わった。コスタたちは何とかジョンキーへ戻り、シーポリスの戦士たちに保護された。それから数時間が経ち、カイトたちが戻って来た。
「皆さん……無事……ですか?」
シーポリスの戦士は下を向いているケアノスとメリス、気を失っているカイトとセアンにこう言った。何も答えないケアノスたちに変わり、サマリオが返事をした。
「怪我は治療したが、まだ完全ではない。すぐに治療を続けてくれ」
「分かりました」
話が終わった後、カイトたちも保護された。
巨大化したラブアがジョンキー内で暴れたため、多数の建物が崩壊していた。ジョンキー内にあるシーポリスの施設も崩壊していたが、治療のための施設は奇跡的に無事であり、治療することができた。その施設内には、先に治療を受けていたコスタたちが寝ていた。
「今回の戦いはきつかったねー」
「そうね。普通の人間、悪党がでかくなったらこれだけ強くなるもんだと分かったわ」
「でかい奴は、大体モンスターか化け物だったしね」
三人が会話をしていると、ケアノスたちが入ってきた。三人はケアノスたちを見て歓喜の声を上げたが、無気力状態のケアノスとメリス、気を失ったカイトとセアンを見て声を止めた。
「ケアノス……一体どうしたの? セアンとカイト、誰にやられたの?」
「後で追って話すわ。今は眠らせて」
と言って、ケアノスはベッドの上で横になった。メリスもため息を吐きながら、ケアノスの隣で横になった。
「すぐに話を聞きたいけど……」
「あんな調子じゃあすぐに話を聞くことはできないね」
ラージュとライアがこう話した後、コスタはカイトとセアンを見た。
「二人が気を失うほど、強い相手と出くわしたかもね」
「えー? それじゃあでかくなったラブアより強い奴がいるってこと?」
嫌そうな顔でライアがこう言うと、ラージュはライアの頬を触りながらこう言った。
「世界は広いのよ。私たちより強い奴はたくさんいるわ」
「むー。そうだけどさー」
「とにかく今は休みましょう。疲れたし、めんどい話は明日にしましょう」
ラージュはそう言って、用意されたベッドの上で横になった。ライアはラージュを見て、自分も寝ようと思い、ベッドへ向かった。
翌日、コスタは食器が鳴る音と野菜や肉を焼く匂いで目を覚ました。
「何なのもう? うるさいし匂いも充満するから眠れないわ……」
「むぐ! むぐぐーぐ!」
そう答えたのはセアンだった。セアンは口の中に食べ物を詰め込みながら食事をしていたのだ。コスタはため息を吐き、セアンに近付いた。
「目が覚めたのね」
「んぐ! むぐぐっぐ!」
「何言ってるか分からないから、口の中の物飲み込んで」
セアンは急いで口を動かした後、中の物を飲み込んだ。その後、息を吐きながらコスタの方を見た。
「いやー。昨日は参ったよ。ラブアの奴を捕まえようと思ったら、変な奴が現れてラブアを斬り刻んで殺してさー。私とカイトがそいつを倒そうとしたけど、返り討ちにされてねー」
「重要なことをさらっと言うわねカイトとセアンを倒すだなんて、相当強い奴ね」
コスタはこう言った後、セアンにこう尋ねた。
「カイトは?」
「うわっ! どうして焼肉の匂いが!」
コスタが聞いたと同時に、肉の匂いに驚いたカイトが飛び起きた。セアンの横で。
「あー! やっと目が覚めたねカイト! 全然起きないから心配したよー!」
「悪いな、心配させて。と言うか、どうして俺の横にセアンが?」
カイトは周囲を見回しながらこう言った。そんな中、欠伸をしながらラージュがこう言った。
「夜中、皆が寝ている隙にセアンがこっそりとカイトが寝ているベッドに侵入したのよ」
ラージュの言葉を聞き、コスタはセアンを睨んだ。
「あはは……そんな目で睨まないでよ」
「朝からうるさいなー」
「もう……眠れないじゃない。疲れているのに」
セアンたちの話声を聞いたためか、ケアノスとメリス、ライアが目を覚ました。目を覚ました三人はカイトとセアンが目を覚ましたことを知って安堵したが、騒動の元になっていたことを知って呆れた。
「目が覚めたのはよかったけど、朝から匂いが強い食べ物を食べないでよねー」
「ごめんごめん。疲れたせいか、無性にお肉が食べたくてねー」
「私も分かるけど」
ライアがこう言った直後、サマリオと部下が入ってきた。
「失礼するよ。皆、目を覚ましたみたいだね」
「サマリオ」
セアンがサマリオの方を見ると、サマリオも体の一部分に包帯を巻いていた。
「サマリオも結構ダメージを受けたんだね」
「まぁな。私も人間だ。油断すれば傷を受ける。それよりも、襲撃の際に生き延びた戦士からいろいろと情報を得た。私たちがいない間に、ここで何が起きたかと、ブラッディークローに関する情報だ。ラージュとメリスは事件の映像は見たと思うが、もう一度見てくれ」
と言って、サマリオはディスクを取り出した。そのディスクを部屋に置いてあったレコーダーに入れ、電源を入れた。
かなり長かったジョンキーでの物語もそろそろ終わりです。ブラッディークローの新たな敵キャラ、彼らの目的が一体何なのかは徐々に明らかになる予定です。この時点で次の話ももう考えていますので、どんな展開になるかお楽しみに! 高評価とブクマ、よろしくぅ!




