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ラージュVSベーキュウ その2


 ベーキュウはラージュに悟られないように小さく呼吸をしていた。ダメージの回復はできないが、精神的に楽になるとベーキュウは考えた。だが、ラージュは大剣を構えつつ、ベーキュウのあごに蹴りを入れた。蹴りを受けたベーキュウは後ろに倒れ、その時にラージュは大剣を振り下ろした。


「グッ! 鬼畜な真似をする!」


 ベーキュウは体を横に回転させて、大剣の一撃をかわした。大剣が地面に当たったと同時に、周囲に砂が舞った。その時、舞った砂がベーキュウの目に入った。


「うげぇ! 目が!」


「隙あり!」


 目を抑えながらもだえるベーキュウに向かって、ラージュは魔力を解放し、大剣の刃に風を発生させた。目をつぶっているせいでベーキュウは周りを確認できないが、ラージュが魔力を使って一撃を放とうとしていると察した。


「クソッ!」


 攻撃を受けないように、ベーキュウは魔力を使って後ろへ吹き飛んだ。飛んで行くベーキュウを見て、ラージュはにやりと笑った。


「逃げるつもりね。無理なのにねぇ」


 と言って、ラージュは立ち上がろうとするベーキュウに攻撃を仕掛けた。振り下ろされようとしている大剣を見て、ベーキュウは急いで斧を構えた。


「クソッたれがァァァァァァ!」


 斧を構えた後、ベーキュウは魔力を解放した。斧の刃の周りには火が発し、それを見たラージュは大剣がその火に少しでも触れると破裂するだろうと考えた。だが、それでもラージュは攻撃の手を止めなかった。それを見たベーキュウは驚きながらこう言った。


「おい! 攻撃を止めないのか? このままだと火が破裂してお前もダメージを受けるぞ!」


「慌てたから思考回路が鈍くなったんじゃないの? 確かに破裂した時に私はダメージを負うけど、斧の近くにいるあんたも私と同じダメージも受けることになるのよ! 今の状況でダメージを負うと、あんたもやばいんじゃない?」


 ラージュの言葉を聞き、ベーキュウは焦りのせいで、自分が受けるダメージのことを考えていなかった。すぐに魔力を収め、斧に纏っていた火は消滅したが、ラージュの大剣は魔力解放によって威力を高めていた。その結果、防御で使っていたベーキュウの斧はラージュの一撃を受け止めることはできず、簡単に壊れてしまった。


「しまった! 俺の斧が!」


「残念。これで詰みね。あんたが勝てる手段はもうない」


 と、ラージュは勝利を確信したような口調でこう言った。だが、ベーキュウはラージュを睨み、魔力を解放した。


「あら、何か手があるのかしら?」


「ある。一つだけこの状況を覆せる道具を持っている」


 そう言うベーキュウだったが、その顔は暗く、態度もかなり落ち着いていた。様子が変わったベーキュウを見て、ラージュは嫌な予感がした。


「何をするか分からないけど、命を無駄にするようなことは止めなさい」


「このままお前に倒されたら、ディスターソースに処分される! だったら……お前を道連れにしてくたばってやる!」


 そう言って、ベーキュウは小さなカプセルを取り出し、口に入れて噛み砕いた。ラージュはすぐに接近してベーキュウからカプセルの中身を吐きだそうとしたが、その前にベーキュウの魔力が急激に上がった。


「ぐ……まさか……」


 ラージュは後ろに下がって様子を見た。ベーキュウの体は急激に赤くなり、筋肉がいきなり肥大化した。ベーキュウの髪は急激に散り、手足の爪も筋肉肥大化の際に破裂した。


「ブファァァァァ……お前を……殺す! コロスコロスブッコロス!」


 狂ったように叫びながら、ベーキュウはラージュに襲い掛かった。




 治療中のライアは、望遠鏡でラージュの戦いの様子を見ていた。筋肉が肥大化したベーキュウを見て、思わず悲鳴を上げながら後ろに下がった。


「どうかしたか、ライア?」


 心配したカイトがライアに近付いたが、ライアは望遠鏡を渡してラージュのいる方を指差した。カイトは望遠鏡を使って見てと伝えていると考え、望遠鏡で見た。そして、ライアと同じ反応をした。


「何だよあのバケモン! さっきまであんなのいなかったよな?」


「だよね? あんなのいなかったよね? 何あれ?」


「何かあったの?」


 気になったメリスが二人に近付き、こう聞いた。ライアは望遠鏡を渡してこう答えた。


「望遠鏡を使ってラージュがいる方を見て。変なバケモンがいる!」


「バケモン?」


 メリスは望遠鏡でラージュがいる島を見て、バケモンことベーキュウの存在を察した。


「いつの間に……ん?」


 落ち着きながらメリスはベーキュウの様子を見た。筋肉が肥大化し、赤く染まっている。そして、上記のような煙が上がっていた。


「あれはまさか……オーバーコストを使ったのでは……」


 オーバーコストと言う単語を聞き、カイトは何のことだと聞こうとしたが、その前にライアがこう聞いた。


「聞いたことがある。かなり危険な薬だよね? 飲めば力が倍以上に強くなるけど、その代償で命を失うって……」


 この話を聞き、カイトは目を丸くして驚いた。




 ラージュは狼のような声を上げるベーキュウを見て、呆れてため息を吐いていた。


「オーバーコストを使ったのかしら……あれを使った奴は筋肉肥大化するけど、熱を持ったかのように皮膚は赤くなり、蒸気が発する。そして……命を奪う」


 ラージュがこう呟くと、ベーキュウは肥大化した右腕でラージュに襲い掛かった。ラージュは攻撃をかわし、後ろの地面に着地した。後ろに移動したラージュを見て、ベーキュウは叫びながら、ラージュに向かって突進した。


「これ以上暴れたら、更に寿命を縮めるのに」


 そう言って、ラージュは突進をかわした。ベーキュウはすぐに避けたラージュの方に向き直し、もう一度突進を放った。


「もう。あの薬を使えば脳みそも筋肉まみれになるのかしら?」


 溜息を吐きつつ、ラージュは高く飛び上がった。ラージュは島に生えていたヤシの木の上に着地し、ベーキュウの様子を確認した。ベーキュウはラージュを見失ったのか、荒い動きでラージュを探していた。


「ヤシの木の上にいるのに……分からないのかしら?」


 ラージュはそう呟き、様子を見続けた。しばらくすると、ベーキュウは口から血を出した。それを見たラージュは反射的にベーキュウの方へ駆け寄ったが、ラージュの存在に気付いたベーキュウはラージュの首を掴んだ。


「あぐっ!」


 首を掴まれた際、ラージュは魔力を解放しようとした。だが、ベーキュウの力は強く、すぐに呼吸ができない状態になってしまった。


 これはまずい。


 そう思いながら、ラージュはベーキュウの体を蹴り始めた。だが、筋肉が肥大化したためか、防御力が上がっているベーキュウにダメージはなかった。


 そんな……このままじゃ死ぬ!


 苦しそうな声を上げながら、ラージュは心の中で叫んだ。その時、ラージュはベーキュウの顔を見た。口からは血が混じった泡を吐いていて、目は真っ赤に染まっていた。その時、ラージュの首を掴んでいるベーキュウの右手の力が、徐々に落ちていることを察した。


 今なら脱出できる!


 ベーキュウから逃れるため、ラージュは体の周りに魔力を発し、強風を放った。その結果、ラージュはベーキュウから逃れることができた。だが、ラージュは反撃をすることはしなかった。


「はぁ……そんな薬を使わなかったら……生き残る可能性があったのに……」


 ラージュはそう言って、風を発した際に倒れたベーキュウの様子を調べた。皮膚を触り、目を見て、呼吸や脈の有無を確認し、心音を確認した。その後、血の臭いを察した鮫がベーキュウに向かって飛び上がり、噛みついた。そして、暴れながら体を動かして海へ戻って行った。


「薬で汚れた上、鮫の餌になる。悪人ながら、最悪な最期ね……」


 ラージュはそう呟いた後、カイトたちの元へ戻った。


 そろそろトリガミヤワー海賊団との戦いも幕を下ろします。だけど、船長であるラブアとのバトルは結構長いです。多分、今までの話の中で一番長いと思います。下手したら、前書いていた幼なじみと一緒に異世界転生の大ボスとのバトルよりも長い。ラブアはラスボスじゃないのにね。


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