ラージュVSベーキュウ
ラージュとベーキュウ、サマリオとノンスが激闘を繰り広げる中、ケアノスはクリースとの戦いを終えたライアの元へ向かっていた。
「ライア! 意識はある?」
ケアノスの声を聞き、その場で立っていたライアはゆっくりとケアノスの方を向いた。
「ケアノス……何とか意識はあるよ」
そう答えるライアだったが、ケアノスはライアの怪我を見て驚いていた。
「酷い怪我……意識はあるみたいだけど、今にも倒れそうじゃない」
「そうだね……何度もお腹を貫かれたし、その相手は足を踏み外して海に落ちて、餌になってね……ショッキングな光景を見ちゃったよ」
「そうだったのね……ライア、私に捕まって。カイトたちの元へ飛ぶわよ」
ケアノスの言葉を聞いたライアは目を開いて驚いた。まだラージュとサマリオが戦っている中、自分たちが逃げてもいいのかと思っていたのだ。
「まだラージュとサマリオが戦ってるよ。私たちが援護に行かないと」
「この状態で援護できるわけがないじゃない。私も魔力を使いすぎて、へとへとよ。この場から逃げられる量の魔力はあるけど」
「そう……だね」
小さな声でライアは答えた。ケアノスはライアの頭を撫でた後、小さくこう言った。
「コスタにも言ったけど、敵の悲惨な死は忘れて。戦ったのは私たちだけど、直接の死因は私たちのせいじゃないから。そのことを頭に置いておいて」
「うん……ありがとね、ちょっとそのことで心を締め付けてたよ」
「あまり苦しまないでね。それじゃあ、行くわよ」
ライアとの会話を終えた後、ケアノスは魔力を解放してセアンたちの元へ戻った。
激しい衝撃波を放った後、ラージュとベーキュウは何度も武器を振り回して攻撃を行っていた。しばらくし、ラージュは魔力を解放して風の塊を発し、ベーキュウに攻撃を仕掛けた。
「グウッ!」
ベーキュウは後ろに下がって風の塊をかわしたため、ラージュとの距離が開いた。そんな中、ラージュはケアノスがライアを連れて船から離れたことを察した。
「ケアノスとライアは無事に戻ったわね。サマリオがいるけど……そう簡単に死なないから……これで安心して暴れられるわ」
ラージュはそう言って、魔力を解放した。ベーキュウは深呼吸し、斧を構えた。
「本気を出すのか。なら……俺も本気を出さないと危険のようだな!」
と言って、ベーキュウは魔力を発し、周囲に炎を発した。それを見たラージュは、汗をかき始めた。
「熱い炎ね。汗をかくからもう少し威力を落としてくれない?」
「誰が敵の言うことを聞くか!」
ベーキュウはラージュに向かってそう言うと、斧を振り上げて襲い掛かった。ラージュは接近した際に斧を振り下ろすと察して身構えた。だが、ラージュの予想は大きく外れた。ベーキュウはラージュとの距離がある状態で斧を床に向かって振り下ろした。わざと攻撃を外したわけではないと考えたラージュは、横に移動して様子を見た。その直後、斧の刃に当たって地面が割れ、そこから火の柱が発した。
「あらまぁ。床を割って、そこに魔力を込めて火を発する。どこかで見たことがある技ねぇ」
「文句を言うな。それと、攻撃は終わってない」
ベーキュウの言葉を聞き、ラージュは上を見た。空から火が付いた大きめの砂利と小石がラージュに向かって振り出した。
「これは……まずい」
この攻撃を受けたら酷い傷を負う。そう思ったラージュはバリアを張ったが、ベーキュウの魔力で作られた火のせいか、砂利や小石は途中で勢いをつけ、ラージュに襲い掛かった。勢いを付けて落下するため、ラージュが張ったバリアは徐々に削れて行った。
「グゥゥゥゥゥゥ!」
バリアが壊れないように魔力を込めるラージュだったが、その隙にベーキュウはラージュに接近し、斧を大きく振り下ろしてラージュのバリアを破壊した。その後、火を纏った砂利や小石がラージュを襲った。
ケアノスとライアはカイトたちの元へ戻って来ていた。コスタとメリスは戻って来た二人を見て、急いで近付いた。
「ケアノス! ライア! 戻って来たのね」
「何とか。それより早くライアの治療をお願い。私はあまり怪我をしてないから後でいいわ」
と言って、気を失ったライアをコスタとメリスに託した。その時、ラージュの魔力が急に弱くなったことを把握した。
「ラージュ……まさか……」
「ラージュはやられないよ」
不安になったケアノスの横から、セアンが現れてこう言った。ケアノスは手当てを行ったのか、包帯を巻いたセアンの姿を見て驚いた。
「セアン。酷い傷ね、苦戦したの?」
「それなりにね。それと……重要かもしれない話があるの。聞いて」
真剣な目のセアンを見て、ケアノスはとんでもない状況になったのだと察した。
「分かったわ。くだらないことだったら怪我が増えることを肝に銘じて」
「こんな状況でそんなこと言わないよ。休んでいると、あいつらの船からゴムボートのような物が現れた。私の可能性の話だけど、あいつらの船長が逃げたかもしれない」
「そう……船長を逃がしたのはあれだけど……戦いが終わったら奴を追いましょう。奴も自分の海賊団が崩壊したら、派手に動かないと思うし」
ケアノスはセアンにこう言った後、少し休むことにした。話を聞いていたカイトは深く呼吸をしていた。
「とんでもないことになったが……何故か冷静な俺がいるな……」
そう呟き、何かあった時にすぐに動けるように、治療を始めた。
ベーキュウの攻撃を受けたラージュは、血を流しながらその場に倒れていた。ベーキュウは斧を構え、倒れたラージュを睨んでいた。
「おい。やられたふりをするのはもう止めろ」
「あら。ばれた」
と言って、ラージュは立ち上がった。傷は負って血が流れているが、倒れた時にラージュは魔力を解放し、治癒速度を高めて受けた傷を素早く治していたのだ。
「倒れた隙に治癒をしたのか。抜け目がない奴だ」
「おほほ。一応誉め言葉としてもらっておくわ、その言葉」
ラージュはそう言って周囲を見回した。その様子が気になったベーキュウは、ラージュにこう聞いた。
「周りを見始めたが、何かあるのか? 何もないように見えるが」
「何かを頼るために見回したわけじゃないわ。周りに何かあったら、本気を出せないからね!」
と言って、ラージュは魔力を解放した。解放した際、発した衝撃波で砂利が舞い、ベーキュウを襲った。
「グッ……砂煙のつもりか?」
「そんなチンケなことをするために、魔力を解放したわけじゃあないわ!」
ラージュは片手で大剣を振るい、ベーキュウに攻撃を仕掛けた。急に攻撃を仕掛けてきたため、ベーキュウは驚いたが、斧を使って防御をすることに成功した。しかし、ラージュは開いている左手に魔力を溜め、ベーキュウに向けて風の刃を放った。
「隙だらけよ!」
「何!」
ベーキュウはラージュが放った風の刃を受けてしまった。そのせいで腹に大きな傷を受けてしまった。
「グフッ!」
攻撃を受け、吐血したベーキュウの力が少し緩んだ。その隙にラージュは大剣を持つ右手に力を込めた。
「なっ……しまった!」
ベーキュウは急いで体中に魔力を込め、力を戻そうとした。しかし、力が緩んだ瞬間にラージュが力を込めたため、大剣の刃を戻すことはできなかった。ベーキュウはそのまま大剣の一撃を受けた。
「ガッハァァァァァァァ!」
「あら。クールな奴かと思ったけど、いい声で泣くわね」
血を流して倒れるベーキュウを見て、ラージュは小さな声で笑い始めた。ベーキュウは自分を見下すように笑いだしたラージュを見て、怒りと同時に恐怖を感じた。
「何だお前は……傷を受けた敵を見て笑うとは……危ない女だな」
「よく言われるわ。これも誉め言葉として、貰っておくわね」
と、ラージュは言葉を返した。
やーっと涼しくなってきて、過ごしやすい時期になったけど、これからまた寒くなるかもしれないんだよな。でもま、暑いよりましかと俺は思う。だって、汗をかくとおしゃれな服を着ることを考えるんだもん。俺もいい歳だし、ちったーおしゃれにも気を使うよ。
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