カイトVSヤーソン その2
二丁のハンドガンを扱うはずだったヤーソンは、接近戦をカイトに挑み、左手に作った炎の刃をカイトの腹に突き刺した。勝利したとヤーソンは思ったが、カイトは左手でヤーソンの頭を掴んだ。
「な……どうして……死んだはずでは……」
「俺は何度も腹を貫かれたんだよ。こんなしょぼい魔力で作った刃で俺を突き刺して……くたばるかよ!」
カイトは左手に魔力を発し、ヤーソンの頭を包み込むほどの大きさの水玉を作った。突如水玉ができることをヤーソンは考えておらず、呼吸をすることができなかった。結果、水玉の中でヤーソンは大量の空気を失った。
このままじゃあ窒息する!
そう思ったヤーソンは急いで頭を動かそうとするが、カイトはヤーソンの動きに合わせて水玉を動かした。
まずい! どうにかしないと!
焦ったヤーソンは両手に魔力を発し、カイトが作った水玉に魔力を注いで破裂させた。水玉から解放されたヤーソンはその場に座り、何度も深呼吸をしていた。
「意外とあっさり抜け出しやがったな」
そう言いながら、カイトは治療を行っていた。それを見たヤーソンは、今までに与えたダメージが回復されたと知ったヤーソンは舌打ちをし、すぐに立ち上がった。
「クソ! 時間稼ぎをしやがったな!」
「して何が悪い!」
カイトは叫びながら刀を振り下ろし、巨大な氷の刃をヤーソンに向けて放った。ヤーソンは魔力を使って巨大な氷の刃を破壊しようとしたが、水玉を破裂する際に魔力を使ったせいで、弱い魔力しか出せなかった。
「しまった……」
ヤーソンは動揺した表情を見せた。その直後、巨大ない氷の刃はヤーソンに命中し、海へ吹き飛ばした。
「グッハァッ! クソッたれ!」
吹き飛んだヤーソンは近くの岩場に着地し、隠し持っていた小さなチョコバーを口にして数回噛んで飲み込み、接近してくるカイトを睨んだ。
「吹き飛ばしたのが運のツキだったな。これで魔力が回復したぜ!」
そう言って、ヤーソンはチョコバーの包み紙を丸めてカイトに向けて投げた。カイトは丸まった包み紙をかわしたが、その動きに合わせてヤーソンは二丁のハンドガンをカイトに向けていた。
「くたばれや!」
勝ったと思いながら、ヤーソンはハンドガンの引き金を何度も引いた。無数に飛んでくる弾丸はカイトに向かって飛んで行ったが、カイトは左手を前に出し、分厚い氷の盾を作って飛んでくる弾丸を防御した。
「そう来るだろうと思ったさ!」
ヤーソンは魔力を発し、火の弾丸を放った。これなら氷の盾を溶かしてカイトに攻撃が届くとヤーソンは考えた。しかし、カイトは氷の盾を火の弾丸に向けて投げた。
「なっ! 盾を投げ捨てただと!」
予想外のカイトの行動を目の当たりにし、ヤーソンは激しく動揺した。その隙にカイトは後ろに下がり、海の上に着地していた。
「クソッ! こっから俺に向かって走るつもりか!」
海の上に立つカイトを見て、ヤーソンはハンドガンを構えた。だが、引き金を引いても弾丸は出なかった。マガジンを見て、弾切れだとすぐに把握した。
「こんな時に弾切れかよ!」
急いでリロードをしようとしたのだが、腰に付けていた弾丸入りのポーチが付いたベルトがなくなっていた。その時、ヤーソンは思い出した。巨大な氷の刃を受けた時、その衝撃でベルトが切れたのだと。
「グッ……クソォ!」
こうなったらカイトが近付いたら攻撃するしかないと察したヤーソンは、体内に残った魔力を開放し、炎の剣を作り出した。一方、カイトは氷の道を作り出し、左右に動きながらヤーソンに向かって走っていた。
「おいビビり野郎! ちょこまか動くなら直接俺の所に来いよ!」
「挑発のつもりか? 強がるなよ、今のお前が俺に勝てるわけねーだろ!」
カイトの言葉を聞き、ヤーソンは腹が立った。今すぐにでも殺してやろうと思ったヤーソンは前に向かって歩いた。カイトはその瞬間を狙い、氷の道をヤーソンの背後に回るように作った。それを察したヤーソンは魔を置いて振り向いたが、その隙にカイトは素早くヤーソンの背後に移動していた。
「終わりだ!」
「しまっ……」
カイトは魔力を刀に込めて、ヤーソンに向かって振り下ろした。強烈な一閃がヤーソンを襲った。深い切れ傷がヤーソンの体にできたが、刀を振り下ろした時に発した強い風圧がヤーソンをトリガミヤワー海賊団の海賊船に向かって吹き飛ばした。
「グワアアアアアアアアア!」
ヤーソンは悲鳴を上げながら吹き飛んでいた。しばらくして、ヤーソンは船に激突した。
望遠鏡でカイトの戦いを見ていたコスタは、思わずガッツポーズをしていた。それを見たシーポリスはカイトが勝利したと確信した。
「カイトさんがやりましたね! 敵の強そうな奴を一人倒しましたよ!」
「よっしゃ! これでさらに有利になったぞ!」
シーポリスたちは喜びの声を上げていた。コスタも怪我が回復した直後のカイトが勝利したと察し、安堵の息を吐いていた。その後、すぐにセアンやメリスの方を望遠鏡で見た。
「喜んでばかりじゃいられないわ。まだ戦いは終わったわけじゃない」
「そうだ。そうだな」
「メリスさんはどうなっている? 他の皆さんは?」
シーポリスたちはすぐに自分がすべきことを思い出し、狙撃の準備をしたり、魔力の補充をしていた。コスタはカイトが無事なことを確認した後、トリガミヤワー海賊団の海賊船を見た。
セアンはコーロの棒をカトラスで弾いた後、にやりと笑ってこう言った。
「あんたの仲間の一人、やられちゃったね」
「あんたを倒して仇討ちに行く!」
コーロはそう言って棒を回転させ、構えを取ってこう言った。セアンはコーロから少し離れてハンドガンを発砲したが、コーロは棒を回して弾丸を弾いた。その際、セアンは棒が不自然な動きをすることに気付いた。
「変な棒だね。あんた、手で持ってないでしょ」
「察しの通り。私は棒術の他にも雷の魔力を使う。こんなこともできるんだよ!」
と言って、コーロは雷を纏った棒を操り、セアンに向けて放った。セアンは攻撃をかわし、コーロに向かって走り出そうとした。だがその前に、セアンの後ろから棒が迫ってきた。
「やっぱり追尾もできるってわけか!」
「そういうこと! さぁ、追い詰めてあんたを倒すよ!」
「私を倒す? そんなことできないって!」
セアンはそう言って、帆の上に飛び上がった。コーロはセアンの方に向かって棒を動かしたが、帆の先端にいるセアンは飛んで来た棒に向けてハンドガンを発砲した。
「無駄だよ! さっき弾丸を弾いたの、忘れたのかい!」
コーロはそう言って弾丸を弾いたが、その隙にセアンは帆から飛び、コーロの背後に着地した。
「隙ありィ!」
セアンは叫びながらコーロの背中に向かってカトラスを振り下ろした。声を聞いたコーロは攻撃をかわしたが、セアンのカトラスはコーロの背中をかすった。
「いったぁぁぁ! 酷いことをするなー!」
「外道だろうが何だろうが言われてもこっちは悔しくもないし、腹も立たないもんねー! 悔しかったらかかって来いや!」
攻撃後、セアンは笑いながら挑発をした。コーロは棒を手元に戻し、セアンの方に向けた。
「むっかついた! あんたは私がぶっ殺す!」
「へーへーそーですかい。やれるもんならやってみなよ」
セアンはカトラスをコーロの方に向けてこう言った。コーロはセアンがカトラスで戦うと考えていたが、次の瞬間にセアンは左手のハンドガンを発砲した。
「おわっ! ここは普通接近戦で戦わない? 卑怯とか言われない?」
「卑怯上等! これが私流の戦い方!」
そう言葉を返し、セアンはコーロに向かって飛びかかった。
ビューティフルパイレーツ。今回で200話です! 一年以内に200話到達したのは嬉しいです。カイトたちの活躍はまだまだ続きます。時には苦しい展開や壁にぶち当たる時もありますが、カイトたちはそれらを乗り越え戦っていくと思います。これからもカイトたちの活躍を刮目してください!
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