現れる強敵
トリガミヤワー海賊団との船員と戦っていたカイトたちだったが、船の中から強い魔力を感じた。カイトはこの魔力を感じ、夜の町で戦ったガーネよりも強い相手がいると察した。セアンをこの魔力を感じ、武器を構えていた。
「強い奴がいるみたいだね。さっさと出てきなよ」
「ではお言葉通り」
扉の中から声が聞こえた直後、勢いよく扉が開き、七人の男女が現れた。カイトは身構えていたが、すぐに二丁のハンドガンを持った男に襲われた。
「グッ!」
カイトは分厚い氷の壁を発し、弾丸を防いだ。
「ほう。厚い氷の壁で俺の弾丸を防御したのか。すごい魔力の持ち主だな」
二丁のハンドガンを使う男はカイトに接近し、攻撃を仕掛けた。だが、カイトは氷を蹴り倒し、男を押し潰そうと考えた。
「盾にも使えるし、攻撃にも使えるのか。だが。俺の魔力は火。こんな氷すぐに蒸発させる!」
男は魔力を開放し、火で作られた弾丸を放ってカイトの氷を溶かした。
「クッ! なんつー強い魔力だ!」
カイトは後ろに下がり、刀を構えた。男はカイトを睨み、こう言った。
「俺はヤーソン。二丁のハンドガンを使う狙撃手だ。よろしくな」
「せいやァァァァァァ!」
セアンは大きな声を上げる女性に襲われていた。女性の拳や足には雷が発しており、防御したら感電するとセアンは察した。
「危ないなー。雷を使って攻撃するだなんて」
「これが私の戦い方なんでねぇ!」
女性は四つん這いのような体制となり、両足をサソリの尾のように動かして攻撃を仕掛けた。
「てあてあてあてあァァァァァァ!」
何度も襲い来る攻撃に対し、セアンはカトラスを使って攻撃を対処していたが、あることに気付いた。
「カトラスで防御しているのに、足で攻撃を受けて大丈夫なの? 斬れない?」
「変な所で心配してくれるのね。一応言っておくわ、ありがとうと。私の足は鍛えて硬いから、そんな剣じゃあ斬れないわよ!」
女性の言葉を聞き、少しイラッとしたセアンは飛び上がって斬りかかった。
「足が硬くて斬れないなら、その身で切れ味を味わいなさい!」
そう言ってセアンはカトラスを振り下ろしたが、女性は少し後ろに下がって攻撃をかわした。
「悪いけど、私の足は固いけど、体は固くないのよ。この一発を受けたら痛いじゃない」
「へー。いいこと聞いちゃった!」
セアンはハンドガンを持ち、女性に向けて発砲した。だが、女性は両手を円状に動かし、周囲に雷のバリアを張って弾丸を防御した。
「ふーん。意外と強いわね」
「そりゃどうも。私はトリガミヤワー海賊団の格闘家、コーロ。楽しい戦いになりそうだね」
と言って、コーロは不気味に笑い始めた。
メリスは目の前に現れた巨体の男の相手をしていた。剣を振るって攻撃を仕掛けていたが、男に斬撃は効いていなかった。
「それで終わりか?」
男はメリスを睨むような目でこう言うと、メリスは歯を食いしばりながら魔力を開放した。
「お望みなら、全力であなたを斬ります!」
と言って、メリスは剣を振り下ろした。剣は男の右肩に命中したのだが、途中で剣の動きが止まった。
「な……あ……」
「俺の体は固い。そんななまくらな剣じゃあ俺を斬ることは不可能だ!」
男は動揺するメリスに向かって拳を放とうとした。その際、拳の周囲に火が発しており、この一撃を受けたら瀕死になるとメリスは察した。
「ウワァッ!」
メリスは叫びながら横に飛んだ。すぐに男に刺さった剣を取りに行きたいが、男は右肩を後ろに下げた。
「こいつがなければ戦えないのか? 臆病者が」
男はメリスに向かってそう言ったが、その時発砲音と共に弾丸が飛んで来て、男の左肩に命中した。
「グウッ!」
弾丸を受けて怯んだ男を見て、メリスは急いで剣を奪い返した。一体誰が助けてくれたのだろうとメリスが思っていると、携帯端末が鳴り響いた。連絡してきた相手はコスタだった。
「もしもし、コスタさん?」
「メリス、私が援護するよ。接近戦は任せるね」
コスタが援護してくれる。そう思ったメリスは少し安心した。だが、男は荒く息を吐き、左肩に命中した弾丸を取り出した。
「一対二か。まぁいい。このゴマゴの拳の餌食にしてくれよう」
と、ゴマゴは拳を構えてこう言った。
ケアノスは目の前の敵を見て動揺していた。相手の女の武器はレイピア。ケアノスと同じ武器なのだ。
「面倒な敵ね。同じ武器としたら、同じ戦い方をする……まるで自分と戦っているみたい」
「それは私も同じよ」
ケアノスは相手にそう言葉を返すと、魔力を開放してレイピアを構えた。ケアノスが魔力を開放したと同時に、相手の女性はレイピアを構えてケアノスの動きに合わせ、反撃をしようと試みた。
「グッ!」
「ウッ!」
二つのレイピアが宙で交差した結果、ケアノスのレイピアは女性の右肩を貫き、女性のレイピアはケアノスの脇腹をかすっていた。二人は後ろに下がり、呼吸を整えていた。
「右肩をやられたけど……問題ない」
女性はレイピアを左手に持ち替え、ケアノスを睨んだ。ケアノスは脇腹を治療し、女性を見て、次はどんな動きを取るか様子を見ていた。
「私の動きを待っているようだけど……そっちから来ないの?」
「無駄な動きをしたくないのよ。もし、私と戦って負けるって思ったら降参してくれない? その方が楽だわ」
「降参するのはそっちの方よ」
女性の言葉を聞き、ケアノスは魔力を開放してレイピアを振るった。レイピアの刃先から小さな風の刃が生まれ、女性に向かって飛んで行った。
「小さいわね」
女性はそう言って、飛んでくる風の刃を切り落とした。だが、その隙にケアノスは猛スピードで女性に接近し、右肩近くに向かって攻撃を仕掛けた。
「ふーん。そういうことをするのね」
ケアノスのレイピアは、女性の右肩を貫いていた。だが、女性はケアノスの顔を掴んだ。
「近付いてくれたのなら好都合。このまま殺してあげるわ」
と言って、女性はケアノスの口の中に水を流し込んだ。苦しむケアノスを見て、女性は笑った。
「私はクリース。あなたを殺した女の名前を憶えていてね」
「誰が覚えるか!」
ケアノスは魔力を開放し、無理矢理クリースの手から離れた。そして、口の中に流された水を吐き出していた。
ライアと相手の女性は周囲を素早く動きながら攻撃を仕掛けていた。
「テアッ!」
ライアは素早く魔力を開放し、ナイフに魔力を込めて振り下ろしたが、女性は左手の爪を振り下ろしてナイフの攻撃を弾いた。そして、右手の爪でライアの腹を貫こうとした。
「これで終わり!」
「終わりじゃないよ!」
ライアは右手のナイフで女性の爪の間に刃を突き刺し、床を蹴って足を上に移動させた。
「これでも喰らっとけ!」
そう言って、ライアは女性の頭の上に両足のかかとを落とした。攻撃を受けた女性はその場に倒れたが、すぐに立ち上がった。
「イッテーな! 両足のかかと落としだなんてひでーじゃねーか!」
「ケッ、敵の痛みなんて私は知ったことじゃーございませんね!」
ライアは頭を抑えて痛がる女性に近付き、ナイフを突き刺そうとした。だが、女性は両手の爪を左右に動かし、反撃を行った。この反撃を受けたライアは後ろに下がり、傷の手当てをした。
「あーあ、服が破れたよ」
「悪かったね、どうも!」
女性はそう言ってライアに接近し、攻撃を仕掛けた。それに対し、ライアは魔力を使って風を作り、女性を吹き飛ばした。吹き飛んだ女性は上手く着地し、ライアに向かってこう言った。
「強いねあんた。このケモンの相手にふさわしいよ。さぁ、どうやって殺すか楽しみになってきたよ!」
ラージュは大剣を振りながら、斧使いの男と戦っていた。ラージュは攻撃を仕掛けながら、男がどんな動きをするか、どんなことを言うのか気にしていたが、男は何も言わず、動じることもしなかった。
「一言もしゃべらないわね……息をしているのかしら?」
ラージュが小さく呟いた後、男は頭をかきながらこう言った。
「勝手に殺すな。俺はベーキュウ。無駄なことは言わない性格でな……」
「クールを気取っているのね。キザ野郎」
憎たらしくラージュはこう言ったが、ベーキュウは言葉を返さなかった。それからラージュはベーキュウに攻撃を仕掛けたが、ベーキュウは斧を盾にしたり、体を動かして攻撃を回避していた。
「ふぅ、しぶといわね」
ラージュは疲れたアピールをするようにこう言ったが、ベーキュウは何も言わなかった。
「はぁ……他の敵は苦戦するようなことを言ったら何か言うのに……あんたは何も言わないのね」
「無駄なことは言わないと言った。それと、お前の子供じみた演技に引っかかるような単細胞ではない」
ベーキュウの言葉を聞き、ラージュはあらまと呟いた。そして、ベーキュウがクールな性格で、かなり強い相手だと察した。
サマリオは目の前にいる剣と盾を持った男と睨んでいた。
「お前の顔は見覚えがある。トリガミヤワー海賊団の服船長、ノンスだな」
「その通りだ。サマリオ大佐」
ノンスは剣を構え、サマリオに斬りかかった。サマリオは横に体を右側に動かしてノンスの斬撃をかわし、反撃をしようとした。だが、ノンスは片足を軸にして体を回転するように動かし、左手の盾をサマリオに向けて攻撃を防御した。
「ほう。素晴らしい動きだな」
「言葉を返そう。防御しにくい右側に移動し、攻撃をするつもりだったんだな。それなりに頭は回るようだ」
「その通りだ。そうでなければ、大佐はやれないからな」
二人は話をした後、互いから離れて睨み合いを始めた。
次回から深夜の取引の時と同じように一人一人のバトル回が続きます。今回はコスタが援護するけどメリス、サマリオのバトルシーンも書きました。サマリオは前の話にバトルシーンを書いたけど、メリスが一体どんな風に戦うのか気になる方はチェックしてください。
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