病から解放される時
シーポリスがサンライト島に到着した翌日、サンライト島で流行っている病の正体はシャケベルトが秘密裏で作っていた毒ガス兵器であること、会長のイックラーはそれを作り出し、裏で武器商人に販売していたことがメディア経由で世間に公開された。SNSはすぐにサンライト島への同情のコメントで溢れかえり、原因となったシャケベルトへの批判、悪口、罵倒に溢れた。会長他重要役員の逮捕を受け、シャケベルトはあれこれ対策を練ったのだが、世間による冷たい風を耐えきることはできず、事件数日後にシャケベルトは倒産した。
しかし、病の原因が判明し、その黒幕の会社が倒産し、会長たち重役が逮捕されてもラージュはこの騒動が終わってはいないと考えていた。完全に騒動を終わらせるためには、毒ガス兵器によって汚染されたサンライト島を救わなければならないのだ。ラージュはシーポリスの協力の下、集めた素材を使って解毒剤を作るために必死だったのだ。
「ふぅ……疲れたわね……どれだけ時間が経ったのかな……」
疲れ切った表情で、ラージュは立ち上がって軽くストレッチをした。今、ラージュがいる部屋は完全に除菌した部屋の中。いつまでも防護服を着ているわけにはいかないので、気を落ち着かせるためにこの部屋を作ったのだ。
「お疲れ、ラージュ。長時間頑張るのはいいけど、少しは休みなよ」
「コーヒー持ってきたよー」
ストレッチをするラージュの方に、お菓子とコーヒーを持ったセアンとライアが近付いてきた。その後ろには、心配した表情のカイト、コスタ、ケアノスが立っていた。カイトたちの姿を見たラージュは安堵した表情を見せ、セアンとライアが持って来たお菓子とコーヒーを受け取った。
「ありがと……二人とも。もう少し頑張るわ」
そう言って、ラージュはコーヒーを飲み始めた。この時、ラージュの顔を見たケアノスは、驚いてこう言った。
「ちょっと、目が真っ赤じゃない。少しでもいいから休みなさいよ。もしかして、あれからずっと動いてたの?」
「休むわけにはいかないわ。どんな手段を使ってでも毒ガス兵器からこの島を救わないと……騒動が終わっても、犠牲者は出るわ」
と言って、ラージュはコーヒーを飲み干し、お菓子を食べてすぐに机に向かった。コスタと共にこの光景を見ていたカイトは、不安そうに呟いた。
「いつか倒れそうで怖いな……」
「無理しているね。シーポリスがいるっていうのに……」
「忙しそうだから、手伝うかどうか聞けないから。それに、素材回収が難しかったって言っていたし。その話を聞いて、手伝ってくれって言うのをためらっているのかも」
二人が話をしていると、サマリオが数名の部下を連れてやって来た。
「ラージュ、研究の手助けの部下を連れてきたぞ。彼らはシーポリスで薬に関する研究をしている科学者で、その中でもエキスパートだ。彼らの手助けがあれば、解毒剤を作るのも楽になるだろう」
「サマリオ。ありがとう……これで少し楽になったわ……」
立ち上がったラージュは礼を言おうとしたが、疲れがピークに達したのか、少しよろめいた。
「ラージュ!」
ラージュが倒れるといち早く気付いたカイトは、急いでラージュを助けた。
「ごめんね……カイト……心配させちゃって」
「いいってことだよ。それよりも、本当に休んだら? もう二日くらい寝てないぞ。そろそろ寝ないと、体も精神もボロボロになっちまうぞ」
「二日も寝てないのね……全然分からなかったわ……」
「休んだ方がいいよ。セアンもライアもかなり心配してるぞ。島を救いたいって気持ちは分かるけど、頑張りすぎて倒れたら余計時間がかかるだけだぞ」
カイトの言葉を聞き、ラージュはセアンとライアを見た。セアンとライアはカイトの言葉を聞き、自分たちもカイトと同じ気持ちだと言わんばかりに頷いていた。それを見たセアンは、深く息を吐いた。
「そうね……サマリオが呼んだシーポリスもいるし……少し休むわ……」
ラージュはそう言った後、コスタが用意した布団へ向かい、すぐに横になって眠った。セアンは寝息を立てて眠るラージュを見て、不安そうにこう言った。
「すぐ回復すればいいけど……」
「だけど、起きてまた無茶しそうだな……」
カイトの言葉を聞いたライアは、そうだねと呟き、ラージュの身を案じた。
数時間後、ラージュは起き上がってすぐに研究を始めた。ラージュのメモを使って研究を引き継いでいたサマリオの部下は、寝起きのラージュを見て驚いた。
「ラージュさん。起きてすぐ研究して大丈夫ですか? もう少し休んだ方がいいのでは?」
「頭の方は大分スッキリしたわ。大丈夫よ。で、研究の続きはどうなっているの?」
その後、サマリオの部下は研究の続きをラージュに話した。起きてすぐ研究をするラージュを見て、カイトはもう少し休んでくれと言おうとした。だが、熱心に研究を続けるラージュを見て、口を塞いだ。
「あと少しなの、皆……頑張って。少し頑張れば、サンライト島を救えるわ」
「分かりました。もう少し踏ん張りましょう!」
「何が何でもこの島を救いましょう」
「よし、もう一貯踏ん張ってみっか!」
ラージュの言葉を聞き、サマリオの部下もやる気が上がった。それから島を救うべく研究を彼女らは続けた。カイトたちは邪魔にならないよう、隣の部屋で待機していた。それから数時間後、夜も更けた頃。簡易的な布団で寝ていたカイトたちだったが、ラージュが思いっきり強く扉を開けたため、その音で飛び起きた。
「ど……どうしたの? ラージュ? 何かあったの?」
「もしかして、研究が終わったの?」
セアンの言葉を聞き、ラージュは疲れで苦しそうだが、笑顔でピースサインを作った。そして、その場に倒れて眠ってしまった。サマリオの部下は、ふらつきながらこう言った。
「研究……終了です……」
「後は……お願いします。疲れた……」
と言って、倒れて眠ってしまった。サマリオは机の上にある機械と、その下に置いてあるラージュが書いた説明書を見てにやりと笑った。
「皆、私はこれから病解放のための支度をする。時間がかかりそうだから、皆は寝ていてくれ」
「分かった。後は頼んでもいい、サマリオ?」
「ああ、任しておけ。ここからは私たちの仕事だ」
セアンにこう答えた後、サマリオは足早に去って行った。
翌朝、カイトたちは毒ガスを作り出して発生させる機械の前にいた。だが、材料を注入する場所に、ラージュが作った機械が取り付けてあった。
「皆にこいつのことを教えておくわね。こいつは解毒剤と言うか、解毒作用が入った煙を発する気かい。奴らが作った毒ガスの成分を研究し、解毒剤を作ったのはいいけれど、毒ガスに汚染された人が多すぎて、錠剤を一人一人に配布するのは時間がかかる。だから私は考えて答えを出したの。毒ガスをまき散らしたように解毒作用のあるガスを発すれば、島全体に解毒作用のガスが蔓延し、解毒されるってね」
「毒ガスの発生を逆に利用するのか。考えたね、ラージュ」
「褒めるのは後にしてと……それじゃ、行くわよ!」
と言って、ラージュは機械の操作を始めた。うねるような音が周囲に響き、白と青が混ざった煙が現れた。
「これで解毒されると思うけど……うまくいってほしいわ」
発生する煙を見て、ラージュは不安そうに呟いた。カイトはラージュに近付き、こう言った。
「大丈夫だよ、必ず病は消える。寝ないで考えたんだ。絶対にうまくいくって」
「カイト……ありがと」
ラージュはカイトの方を振り返り、笑顔を作った。
ラージュはピラータ姉妹では医者の立場です。なので、医学や治療などの場面では彼女が活躍しています。キャラを考えるのにぱっと思いついたのがラージュで、医者だけど武器は大剣と言う効果力な武器を使い、性格はサディスト。そんなことを考えた結果、ラージュと言うキャラが生まれました。
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