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二回目の取引


 カイトたちから逃げきったゼニマーネは、隠れ家で酒を飲んでいた。手にしている酒瓶を空にした後、床の上に乱雑に置いてある取引材料を見てため息を吐いた。


「一発でうまくいかなかったな……」


 そう呟き、再びため息を吐いた。ゼニマーネは裏社会での自分の立場を理解していた。それは、自分がどれだけこの裏社会で嫌われているということである。同業者の誰かがシーポリスに取引のことを話し、こんな結果になってしまったのだと。


 ゼニマーネは欠伸をした後、新しい酒瓶を取りに行こうと立ち上がった。その時、近くにある電話が鳴り響いた。


「はいもしもし。こちらゼニマーネ」


「俺だ、トリガミヤワー海賊団の船長、ラブアだ」


 相手の声を聞き、ゼニマーネは驚いた。


「ラブア船長。昨日のことは……」


「あれは仕方がない。こちらとしても、それなりのリスクを負っての取引だった。捕まった仲間はディスターソースに処分される可能性があるが……仕方がない」


「すみません……」


「お前が謝ることではない。お前は裏社会では嫌われているが、仕事の腕は天下一品だ。だから、お前に仕事を頼んだ。大きなリスクを背負ってな」


 ラブアは一息ついた後、再び話し始めた。


「昨日の取引は失敗してしまったが、部下の奮闘でシーポリスに手を貸しているピラータ姉妹が負傷したようだ。今なら、確実に取引を行うことができる」


「分かりました。では、次の取引先はどこで行いましょうか?」


「明日だ。ジョンキーには裏の市場がある。裏のルートで流れて来た物品を売り買いする非公式の場だ。明日の正午には裏市場の入口付近にいろ。人もいるから、そこで取引をしよう。奴らも人がいる中で取引をするとは考えないだろうし、戦いになっても他の奴を巻き込む」


「いい作戦ですね。分かりました。明日の正午、裏市場の入口付近ですね」


「そうだ。警戒しろよ、奴らはお前を狙っている可能性が高いからな」


 と言って、ラブアからの電話は終わった。ゼニマーネはソファーに座り、息を吐いた。


「明日か……何事もなければいいな」




 翌日、シーポリスは朝からジョンキーの見回りを行っていた。見回りチームの中には、サマリオとメリスが入っていた。二人がいないため、カイトたちの世話はシーポリスの一般兵が行っていた。


「調子はどうですか?」


 カイトの近くにいるシーポリスの看護師がこう聞いた。カイトは手足を少しだけ動かし、こう答えた。


「痺れがまだ残っています。動くには動きますが……」


「毒がまだ体内にあるようですね。それと、お腹の傷も完全には治っていませんね」


「カイト大丈夫?」


 と、セアンがカイトのベッドの近くにやって来た。カイトはセアンの方を向き、声を出した。


「まだ動けないな……体も痛いし、だるさもあって大変だ」


「昨日の戦いで、一番大きい傷を負ったのはカイトかもしれないね」


 病院の売店で買い物を終えたコスタがやって来た。コスタは小さなパンケーキをカイトに渡し、自分のベッドへ戻った。ケアノスは本を読みながら、カイトの方を見た。


「しばらく私たちは動けないわね。それにしても、昨日戦った連中は強かったわね」


「そうだねー。私たちを殺しにかかってたし、下手したら私たち全滅してたよ」


 ライアは昨日の戦いを思い出しながらこう言った。コスタはため息を吐き、小さく呟いた。


「私が戦ったバーさんは力尽きて死んだけど」


「気負わないのコスタ。コスタが戦ったバーさんは今まで悪いことをたくさんしてたから、その報いを受けたのよ」


 と、ケアノスはライアを励ますつもりでこう言った。そんな中、何かに気付いたカイトがセアンに尋ねた。


「なぁ、ラージュはどこに行ったんだ?」


「昨日の戦いで傷がなかったから、ゼニマーネ捜索の手伝いをするって言って出かけたわ」


「そうか……」


 カイトが答えた後、セアンはカイトの布団の中に潜り込んだ。


「毒を受けたって聞いたけど、私の体温感じる?」


 そう言いながら、セアンはカイトの体を触った。


「体温は感じるけどくすぐったい。毒を受けたせいか感覚が強くなってる。悪い、あまり触らないでくれ」


「そんなこと言わないでよ~」


 セアンは甘えた声を出しながらカイトに抱きしめた。くすぐったい感覚と痛みの感覚が同時に襲い掛かってきたため、カイトは悲鳴を上げた。ケアノスはコスタに近付き、拳骨を放った後、セアンをカイトのベッドから引きずり下ろした。




 ラージュはサマリオとメリスと共にジョンキーの裏市場の近くにいた。


「こちら裏市場班のサマリオ。今現在怪しい奴はいない。引き続き警戒せよ」


 サマリオはそう言ってトランシーバーの電源を落とした。ラージュとメリスは周りを見て、怪しい人物がいないか確認していた。そんな中、ラージュはメリスにこう聞いた。


「そう言えばツリーさんは? 姿が見えないけど」


「まだ寝てるわ。あの人、不規則な生活をしてるからいつ起きるかどうか分からないのよ……」


「まぁ、何となくそんなことをすると思ってたわ」


 ツリーの行動を思い出しながら、ラージュは苦笑した。メリスは少し困惑しながら、ラージュにこう聞いた。


「カイトさんたちは大丈夫ですか? 今日、外に出る前に一度会ったんですが、その時は元気そうでした」


「大丈夫よ。カイトやセアンたちがそう簡単にくたばるわけがないわ。カイトの毒も昨日、解毒剤を注入したからいずれ毒は消えるわ」


 ラージュの言葉を聞き、メリスは安堵の息を吐いた。


 それから数時間後、怪しい人物はいなかった。しかし、いつ、どのタイミングでゼニマーネが現れるかラージュたちは分からないため、きちんと見張りをしていた。そんな中、一台の大きな車が裏市場から少し離れた所に停車した。


「大きな車ね」


「あそこ、駐車禁止なのに……一体誰が……」


 呆れたようにため息を吐きながら、メリスが車に向かった。もしかしてと思い、ラージュとサマリオもメリスの後に続いた。


「すみません。シーポリスのメリス・クレアナイトと申します。そこは駐車禁止の区域です。速やかに移動しなければ、違反として違反金を払ってもらいます」


 メリスはそう言って車の運転席に近付いた。運転席に座る運転手を見て、メリスは目を丸くして驚いた。そこにいたのはゼニマーネだったからだ。


「ゼニマーネ!」


「ゲェッ! クソッ!」


 ゼニマーネは助手席の方に移動して扉を開け、その場から逃げようとした。しかし、ラージュとサマリオがゼニマーネの前に立った。


「逃げられないわよ」


「さぁ、大人しくしてもらおうか」


 二人はにやりと笑いつつ、魔力を開放してゼニマーネを追い詰めようとした。しかし、丁度近くに自転車を使う人が通り過ぎた。その時、ゼニマーネは自転車を使う人を殴り飛ばし、自転車を奪い取って逃げ始めた。


「あ! 逃げた!」


「メリス、応援を呼べ! 私とラージュは奴を追う!」


「分かりました、気を付けてください!」


 メリスの声を聞いた後、ラージュとサマリオは逃げたゼニマーネの後を追いかけた。




 裏市場の入口付近にある喫茶店で、マントとローブを羽織った人物がその様子を見ていた。筋肉質の男はその人物が気になり、近付いて声をかけた。


「なぁあんた。こんな暑い日によく暑苦しい服を着ていられるなぁ。俺だったら汗だくになっちまうよ」


「日差しが強いからな。それと、このファッションは俺のお気に入りだ」


「好きでこのファッションをしているのか。野暮なことを聞いちまったな。悪いな、裏市場の買い物を楽しんでくれよ」


 そう言って、筋肉質の男は去って行った。マントとローブを羽織った人物はアイスティーを飲み、一言呟いた。


「ゼニマーネの奴、しくじったな」


 シリアスなバトルや、敵や名無しの脇役たちがやたらと死にまくるこの作品ですが、たまにギャグ回みたいな話を作ります。元々、俺はでんぢゃらすじーさんやボーボボにあこがれてギャグ系の作品を作ろうと考えてやったんですが、ギャグを考えるのが難しいので諦めてバトル展開が多い作品を作ることになりました。いやー、ギャグを考える人は天才だわ。


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