激しい戦いのその後
真夜中のジョンキーでの戦いは終わった。だが、ラージュを除くピラータ姉妹は大きな怪我を負ってしまい、カイトもガーネによる毒手を受け、意識を失っていた。
ケアノスが目を覚ましたことを知ったライアは、急いでセアンたちがいる病室へ向かっていた。
「ケアノス、起きたのね!」
「ライア……」
ライアが来たことを察したケアノスは、ライアの方を向いた。
「傷は大丈夫なの?」
「何とか。今トイレ行って来たの」
ライアはケアノスの横のベッドに座り、意識を失っているカイトの方を見た。
「カイトのこと、今知ったのね」
「さっき起きたばかりなの。カイトがこんな状態になっていたなんて……」
ケアノスはため息を吐いてこう言った。コスタはうつむきながら、口を開いた。
「このまま目を覚まさなかったら……嫌だよ……」
「私だって嫌だよ。コスタ、あまり心配するようなことを考えちゃダメだよ」
と、セアンはコスタにこう言った。その時、ラージュが何かを持って病室に入ってきた。
「やっと完成したわ。解毒剤が!」
ラージュの言葉を聞いたセアンたちは、驚きの顔をしながらラージュを見た。ラージュは手にしているカプセルをセアンたちに見せながら話を始めた。
「カイトが戦ったババアの毒手の毒を調べて、何とか解毒剤を作ったの。これを使えばカイトの毒は消えるはず」
「よかった……ありがとうラージュ」
「苦労しただろうに」
セアンたちはラージュにお疲れと言った後、眠っているカイトに近付いた。カイトは呼吸器を使っているため、口が覆われた状態である。その状態で、どうやってカプセルを使うかセアンは考えた。
「うーん……どうやって飲ませるの? 呼吸器を外したら大変なことになるよ」
「これ飲み薬じゃないわよ。座薬よ」
この言葉を聞き、セアンたちの体は固まった。そんなセアンたちを見ながら、ラージュは話を続けた。
「下から入れた方が効き目は早いと思うわ。それに、今は呼吸器を外しちゃいけないし、だったら座薬タイプの解毒剤を作った方がいいって思ったのよ」
「でもそれって、お尻から……」
ケアノスが動揺している中、セアンとライアはカイトに近付いてズボンに手を伸ばしていた。
「ちょっと二人とも! 行動が早いわよ!」
「だって早くカイトを目覚めさせたいんだもん! ケアノスも同じ気持ちでしょ!」
「それはそうだけど……座薬よ、お尻にぶち込むタイプの薬なのよ!」
「お風呂でカイトのスッポンポンを何度も見たから慣れたんじゃないの?」
「それはそう……だけど、それはそれ」
その時、騒動を聞きつけたサマリオとメリスが入ってきた。
「騒がしいね。どうかしたかい?」
「サマリオ、カイトに座薬を入れるから手伝って」
セアンの言葉を聞いたメリスは、目を丸くして驚いた。
「座薬! そう言えばさっき、ラージュさんが解毒剤を作ったって言ってたけど……まさか!」
「呼吸器をつけた状態だからね。座薬の方がいいでしょ?」
「それはそうだけど……できれば他の所で……」
「時間がないの、それ!」
動揺するメリスを無視し、セアンとライアはカイトのズボンを下ろし、尻を丸出しにした。カイトの尻を見たメリスは悲鳴を上げ、カイトはその声を聞いて目を覚ました。
「ん……俺……生きて……いるのか?」
「え? カイト?」
座薬を入れようとしていたセアンは、カイトが目を覚ましたことに察したが、セアンは無意識のうちに座薬をカイトの尻の奥深くに入れた。その後、病室中にカイトの悲鳴が轟いた。
「凄い生命力だよ。腹を貫かれて、毒を入れられた翌日に目を覚ますなんて」
と、サマリオはカイトにこう言っていた。カイトは自分の尻をさすってサマリオに言葉を返した。
「腹を貫かれた時、傷を凍らせて塞いだんです。その時に体中の魔力を使っていたので、それがいい選択だったんだって思います」
「魔力を強く開放していたから、毒が体に回る速度が遅くなったみたいだね」
「多分な」
カイトはセアンにこう言うと、辛そうな顔をした。その顔を見たケアノスは不安そうに尋ねた。
「辛そうね。まだ、傷が痛むの?」
「ああ……凍らせて感覚を麻痺させたけど……かなり痛いな。体もだるいし」
「解毒剤はすぐに効かないわ。もう少ししたら効果が現れると思うから、それまで安静にしてね」
「でも……カイトが無事でよかった」
と、コスタはカイトを抱きしめながらこう言った。そんな中、ラージュは背伸びをしてカイトたちにこう言った。
「私、ちょっと休むわ。徹夜で薬を作ったから、眠くてたまらない……」
「そうね。ラージュ、ゆっくり休んでよ」
「それじゃあお休み……」
そう言いながら、ラージュはカイトの布団に入って横になった。セアンは止めようとしたのだが、その前にラージュは眠ってしまった。
「あーあ、カイトの横で寝ちゃったよ」
「仕方ないわね。ラージュもカイトのこと、かなり心配してたし……今日ぐらいいいか」
ケアノスは欠伸をしてこう言った。欠伸をするケアノスを見ながら、ライアが茶化すような笑みを浮かべた。
「長時間眠っていたのにまだ眠いの~?」
「疲れているのよ。久しぶりに感情を爆発させたから、かなり魔力と体力を使ったから……もう一回私も寝る……わ……」
話をしている途中で、ケアノスは意識を失ったかのようにカイトの方に倒れた。慌てたセアンはケアノスを受け止め、様子を見た。
「寝ちゃった。ケアノスも本当に疲れてるみたいだね」
「コスタ……ケアノスのことを見ている場合じゃないよ。私、怪我をしているから支えてるだけで体中が痛い……支えるの手伝ってよ」
と、セアンは苦しそうな声でコスタにこう言った。その後、ケアノスもカイトの横に寝かせ、セアンとコスタとライア、カイトは話を始めた。
「しばらくはここで休むことになりそうだが……ゼニマーネは逃げたみたいだな」
「あいつ、多分もう一度トリガミヤワー海賊団と取引するのかな?」
「その可能性があるわ。私たちがここにいるって奴らも知った以上、何か対策を練るわね」
「まだこの町にいるのかな? いるとしたら、また戦いになるよ」
「そうだな……でも、今後どうするか考えるのは、シーポリスだからな。俺たちは手伝ってるだけだし」
「カイトの言う通りだね。とにかく、今は休もう」
セアンがこう言った後、カイトたちは同時に欠伸をした。
会議室。サマリオやメリス、ツリーと多数の部下が今後のことで話をしていた。
「昨晩の取引妨害は失敗してしまったが、セアンたちのおかげでトリガミヤワー海賊団の一部を捕らえることができ、ラージュの薬を打たれた男によって今後の情報を得ることができた」
サマリオがこう言うと、メリスはパソコンを操作して画面をホワイトボードに映した。
「奴らは取引に邪魔が入った場合のことを予測し、二回目の取引をしようと考えている。だが、その前にゼニマーネを捕らえ、取引の物を押収しようと考えている。それと、奴からもいろいろと話を聞かせてもらうつもりだ」
「その前に、ゼニマーネの居場所がどこか分かっていますでしょうか?」
と、部下の一人が手を上げてこう言った。サマリオはメリスにパソコンを操作するように命じ、ホワイトボードに映る画面が切り替わった。そこには、ゼニマーネが使っていた車が映っていた。
「町の防犯カメラから、奴が使っていたと思われる車を発見した。部下の一部にその周辺を調べさせたが、ゼニマーネの姿はなかった。しかし、この周辺にゼニマーネはいると思われる。二回目の取引まで、その周辺を調べて奴を探す。以上!」
サマリオの言葉を聞いた後、部下たちは一斉に立ち上がってサマリオに敬礼をした。
今回の章の一つの大きな戦いの話は終わりました。ですが、まだまだまだ戦いは続きます。一体どんな敵がカイトたちの前に現れるのだろうか?
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