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ミッドナイトタウンバトル ラージュVSティンパ その2


 ラージュの奇策により、ティンパは身動きが取れなくなった。麻痺の毒はいつか効果が切れると考えたティンパだったが、ラージュは大剣をティンパの右腕に突き刺した。


「イギャアアアアア!」


 ティンパの右腕から体全体に伝わるかのように、とんでもない激痛が走った。ティンパは痛みをごまかすために体を左右に動かそうとしたが、麻痺で体が動かない。


「痛そうな声を上げるわねぇ。さっきの薬、麻酔の成分もちょっとあったと思ったんだけど」


「痛い! 痛い痛い! もう止めてくれ!」


 激痛に耐え切れないティンパは、泣きそうな声でラージュにこう言った。しかし、ラージュはティンパの顔を踏みつけ、ティンパの右腕に突き刺さった大剣を引き抜いた。


「あらあら。大量の血が流れているわねぇ。痛そう」


「お前がやったんだろうが……」


 と、ティンパは小さな声でこう言うと、再びラージュに顔面を強く踏まれた。


「大変ねぇ。治療してあげるわ」


 ラージュは素早くティンパの右腕を治療すると、大剣を持ってティンパの左腕を突き刺した。


「アッギャァァァァァァ!」


「メンゴー。体が勝手に動いちゃったのー。あー、また体が勝手にー」


 わざとらしい演技をしながら、ラージュは大剣をティンパの右足の太ももに突き刺した。


「あああああ! あああああ!」


「うるさい声ねぇ。今の時期、虫がいい声で鳴くのよ。あんたの声で夜の風情が台無しじゃない」


「じ……自分で言うか……」


 苦しそうにティンパはそう言った。その声を聞き流しながら、ラージュはティンパの治療を始めた。そして、治療を終えてティンパの首を掴んで高く飛び上がり、近くの高台に移動した。


「お……おい! 何をするつもりだ!」


「何って? ここから無抵抗の人を落としたらどうなるかなーって実験をするためよ。協力しなさい」


 と言って、ラージュはティンパの首を離した。身動きが取れないティンパは何が何でもこの状況を打破するため、あらゆることを考えた。すると、体は動けないが魔力は使えることを察した。


「ま……魔力は使えるのか。よかった、助かった……」


 魔力を使ったティンパは、無傷で地面に落下した。しかし、魔力は使えても体の麻痺は解けていなかった。だが、ティンパは魔力が使えればラージュに反撃できると思った。


 ラージュは大剣を構えて高台から飛び降り、地面に落ちたティンパに向かって落下した。その時、ラージュはティンパが魔力を開放していることに気が付いていなかった。


 そのまま来い。返り討ちにしてやるぜ!


 ティンパは心の中でそう思うと、自身に向かって落下してくるラージュを見て、巨大な風の刃を放った。


「かかったな! このまま僕ちゃんの風の刃で真っ二つになっちまえ!」


「残念。ならないわよ」


 落下するラージュはそう言って、そのまま飛んでくる巨大な風の刃に向かって手を振って、かき消した。それを見たティンパは目と口を大きく開けて驚いた。


「そ……そんな……今の風はかなり強い魔力を込めたのに」


「残念だったわね。わざと魔力を使えるようにしてあげたのよ。ま、薬の力で普段の九割程度落ちているけどね」


 ラージュはそう言って、ティンパの腹に大剣を突き刺した。攻撃を受けたティンパは悲鳴を上げながら吐血した。


「ガッ……がぁぁ……」


「苦しそうね。さっきの元気はどこに行ったのかしら?」


 ラージュは不気味な笑みを浮かべ、大剣を引き抜いてティンパの腹を治療した。何度も攻撃を受け続けたティンパは、もう勘弁してくれと思っていた。その時だった。左手が動くことを察したのだ。まだ完全ではないが、麻痺が解けつつあるとティンパは考えたのだ。完全に麻痺が解けた後、仕返ししてやるとティンパは思い、ラージュの隙を伺った。


「さーてと、次はどうやって遊ぼうかしら」


 子供の用にこう言うラージュは、後ろを振り向いて何かの用意をし始めた。ティンパは手足を動かし、どのくらい動かせるか確かめた。そして、完全に体が動くことをティンパは察した。


「残念だったな! 麻痺の効果は終わったようだぜ!」


「そうね。なら、新しい毒を使うわ」


 と言って、ラージュは注射器を手にしてティンパの左腕に突き刺し、液体を注入した。


「こ……今度は何をした!」


「少しすれば分かるわよ。麻痺もあるけど、今回は別の毒もあるわよ」


 ラージュの言葉の後、ティンパの体は固まってその場に倒れた。ラージュはティンパに近付き、こう言った。


「私のことを可愛いって思っているでしょ?」


「そうだ、可愛い!」


 この答えを言った後、ティンパは驚きの表情をした。ティンパはラージュに対してこの性悪ブサイクホルスタイン女と答えようとしたが、反射的にこう言ってしまったのだ。


「な……何で反対のことを……」


「今の薬にはね、言ったことに対して逆のことを答えてしまう薬があるのよ。まぁ、簡単に言うと脳を軽く混乱させる毒薬よ。これでブラッディークローのことやあなたたちのことをきっちりと話してもらうから」


 その言葉を聞いたティンパは、涙目になっていた。しばらくすると、サマリオと数名の部下がやって来た。


「戦いは終わったようだが……今、こいつに何を注射したのだ?」


「このチャラ男に質問したことに対して、思っていることと反対のことを答える薬を打ちました。これを利用してブラッディークローやトリガミヤワー海賊団のことを聞きだしてください」


「相変わらず恐ろしい薬を作るな、ラージュは」


「今度作り方を教えますわ」


 ラージュはウインクをしながら、サマリオにこう言った。その後、ティンパはサマリオの部下によって連れられて行った。その様子を見届けた後、ラージュはサマリオにこう聞いた。


「あと戦っているのはカイトだけかしら?」


「ああ。セアンたちの戦いは終わったみたいだな」


 サマリオの言葉を聞いた後、ラージュは何かを考え、サマリオに再びこう言った。


「私、セアンたちの様子を見てきます。すみませんが、カイトの様子を見て来てもらってもよろしいでしょうか?」


「分かった。任せてくれ」


 と言って、サマリオはカイトの魔力を探知し、急いでカイトの方へ向かって行った。




 マジでやばい。


 カイトは心の中でこう思っていた。毒手を使うガーネの力はカイトの予想よりも恐ろしかった。


「どこに行ったんだい坊主? 私の毒手で殺してやるわ!」


 ガーネは不気味な笑い声を発しながらカイトを探していた。このまま姿を現すと返り討ちにされる。そう考えたカイトは息を殺しつつ、ガーネから離れてどうやって戦おうか考えることにした。


 建物の上に移動したカイトは、深く呼吸してガーネの攻撃について考えた。ガーネは毒手を使う。一撃でもガーネの毒手が肌に命中すれば、毒が体中に回ってそのうち死ぬ。カイトはガーネの毒手の脅威を消すため、ガーネの両手を切り落とさなければならないのかと思った。その時だった。


「みぃつけたぁ!」


 ガーネは天井を突き破り、カイトの前に現れた。カイトはすぐに刀を抜いて構えた。


「さっさと死ね!」


 叫びながらガーネは両手の毒手を何度も動かした。カイトは攻撃をかわし、隙を見て居合を放った。ガーネは居合斬りに対し、両手を構えた。


「居合斬りかい? やってみな!」


「両手を失っても後悔するなよ、バーさん!」


 カイトは居合斬りを放ったが、ガーネは刀を受け止めてしまった。


「ざーんねん! お前みたいな未熟でケツの青い剣士は何人もあの世へ葬った! 珍しい剣を使うようだけど、私には敵わなかったね!」


 ガーネは勝ち誇ったかのようにこう言うと、魔力を開放した。その直後、カイトの腕から全身に電撃が走った。


「ヒェッヒェッ! 私は毒手以外にも雷の魔力を使う! 感電しながら毒手を受けて死んじまいなぁ!」


 ガーネはそう言って感電して苦しんでいるカイトに近付いた。だが、接近したと同時にカイトは右手を地面に触れ、ガーネの足元から水柱を発した。


「アッギャァァァァ! 小僧、動けないはずだけど!」


「多少魔力を開放していたから、完全に感電していなかったんだよ」


 カイトはそう言って刀を取り、宙にいるガーネを一閃しようとした。しかし、ガーネは魔力を使って宙で態勢を整え、接近してくるカイトに向けて毒手を向けた。


 今回は裏話をちょっと話します。セアンたちの名前の由来は話した記憶があるのでウイークたちのことでも語ります。分かる人はいると思いますが、ウイークは週の英訳。仲間たちは曜日の英訳をいじりました。


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