深夜の取引
その日の深夜、カイトたちは動きやすく、周りの雰囲気に溶けやすい服装になっていた。
「すげー。このスーツ、結構自由に動く」
カイトは驚きながら、体を動かしていた。スーツは黒く、頭巾も用意されていたため、姿を隠すのに適していた。セアンはセクシーポーズをとり、カイトにこう言った。
「どう、カイト? 体のラインが結構くっきり出るからセクシーでしょ?」
「あ……ああ……」
カイトは少し照れながらこう言った。コスタはスーツを着た時の状況を見て、ため息を吐いていた。
「体のラインが結構見えてるけど、攻撃されたら大丈夫なの?」
「大丈夫です。このスーツの素材にはいろんなモンスターの皮が使われています。そのためか、かなりの防御力を持っています」
「メリスの言う通りね。簡単に破れない素材でできているわ」
ケアノスがレイピアでスーツを突き、こう言った。レイピアの刃は、スーツを貫くことはできなかったのだ。それを見たライアは安堵の息を吐いた。
「それじゃあ安心。さて、そろそろ行きますか」
「そうね。奴らの取引を邪魔しないと」
ラージュがこう言った後、カイトたちは外へ向かった。
取引現場に向かったのはカイト、ピラータ姉妹、メリスとツリーである。彼らは現場に向かう途中で、小さな声で話をしていた。
「ここから現場まではどのくらいかかる?」
「走って十分ほどです」
メリスの答えを聞いた後、カイトは少し考えた。
「十分か。奴らが現場に集まる前に到着できるかな?」
「この時間なら間に合います。ただ、奴らの見張りがいなければいいですが……」
カイトはメリスの答えを聞き、不安になった。トリガミヤワー海賊団は取引をスムーズに行うため、見張りを使うだろうと。だが、ツリーがこう言った。
「大丈夫だよ。雑魚はこの小さい魔女にまっかせーなさーい!」
どや顔でこう語るツリーを見て、カイトは更に不安になった。そんな中、カイトたちは取引現場に到着した。
「皆、身を隠せる場所に隠れて」
セアンがこう言うと、カイトたちは物陰に隠れた。周囲には見張りはおらず、取引で使われる場所には誰もいなかった。メリスは腕時計を見て、カイトたちにこう言った。
「取引が始まるのは今から三十分後です。少し待ちましょう」
この言葉を聞いたカイトたちは、頷いて返事を返した。
それからニ十分後、カイトは周囲に人の気配を感じた。コスタが気付かれないように周りを見て、状況をカイトたちに伝えた。
「トリガミヤワー海賊団の下っ端がいる。奴らが先に到着したようだね」
「さて、闇商人が来るのを待ちましょう」
メリスはそう言った。それから十分後、太った男がゆっくりと歩きながらやって来た。
「私だ。ゼニマーネだ。トリガミヤワー海賊団の皆さん、姿を見せてください」
太った男がゼニマーネと知ったカイトたちに、緊張が走った。ゼニマーネが言葉を発した後、マントとフードを羽織った人物が現れた。
「時間通りに来たな」
「へへへ。時間通りに行動するのが、私のポリシーでしてね。おっと、話よりも取引をしましょう」
ゼニマーネは指を鳴らすと、軽自動車が入ってきた。後部座席には、大量のアタッシュケースが入っていた。
「この中に改造ライフルがあるのか?」
「はい。もちろんですよ。確かめてください」
その後、部下らしき人物が集まり、ゼニマーネが呼んだ軽自動車を開け、アタッシュケースを取り出した。部下はアタッシュケースを開き、声を出した。
「おお! こいつは最新ライフルの改造品!」
「すげぇ、これさえあればシーポリスの連中を虐殺できるぜ!」
「おい、静かにしろ」
と、もう一人のフードの人物がこう言った。声を聞いた部下たちはすみませんと言い、静かになった。メリスは望遠鏡で彼らが持つ改造ライフルを見て、呟いた。
「見た目だけでは分かりませんが、奴の言う通り改造されて威力が上がっているとしたら、かなり脅威になります」
「まずいね。私の魔力でぶっ放す?」
セアンがこう言ったが、メリスは慌ててこう言った。
「取引の邪魔をするのが仕事ですが、それからブラッディークローのことを聞きだす仕事があります。ボコボコにしても、口が利けるようにしてください。それと、ディスターソースにばれないように」
「そうだね」
セアンは冷静になってこう言った。
取引は続いており、部下らしき人物たちは改造ライフルを手にして喜んでいた。そんな中、ゼニマーネが不気味な笑みをしていた。
「今回は改造ライフルだけではございません」
「どういうことだ?」
「実は、裏のルートである道具が私の元に流れ着いたのです」
と言って、ゼニマーネは宝石のような物を見せた。
「それは?」
「古代からあると言われる不思議な道具、アップボディです。どんな効果があるのかは分かりませんが、持っていても損はありません」
「ふーむ……で、いくらだ?」
「貴重品で一品物なので、二千万ネカは貰わないと商売成立になりません」
「に……二千万……」
マントとフードの人物は値段を聞いて驚いたが、別の人物が冷静な態度でこう言った。
「上司と連絡を取りたい。時間をよこせ」
「いいですとも」
その後、マントとフードの人物は連絡を始めた。カイトはその様子を見て、メリスにこう言った。
「今のうちに奴らの邪魔をするか?」
「改造ライフルが奴らの手にあります。出てきたと同時に撃たれる可能性があります。こうなる可能性も考えておけばよかった……」
と、メリスは自分の考えのなさを呪った。そんな中、ライアはツリーの方を見た。ツリーは口と鼻を動かしていた。
「ツリーさん? ね……ねぇ……」
「皆……ごめん。耐えられない」
ツリーはそう言うと、大きな声でくしゃみをしてしまった。その声を聞いたカイトたちは驚き、取引をしていたゼニマーネとトリガミヤワー海賊団の連中も驚いた。
「誰だ!」
「猫にしては大きいくしゃみだ。と言うか、人のくしゃみじゃねーか!」
「不審者だ、撃ち殺せ!」
部下の声を聞いたカイトは魔力を開放し、氷のバリアを張った。それからすぐに弾丸がいくつも飛んで来た。改造されたライフルから発砲される弾丸は威力が高く、カイトの分厚い氷を穴だらけにしてしまったが、弾丸は途中で止まっていた。
「グッ……皆、弾切れを狙って動いてくれ!」
バリアを張っているカイトはセアンたちにこう言った。セアンたちは頷いた後、発砲音が収まったタイミングで飛び上がった。
「覚悟!」
「あなたたち、全員その場で大人しくしなさい!」
セアンたちは取引現場に乗り込み、たった数秒で部下たちを倒してしまった。セアンたちの攻撃から逃れた部下は、セアンたちの姿を見て驚いていた。
「ぴ……ピラータ姉妹だ!」
「逃げろ! 奴らに勝てる自信はない!」
「バカ野郎! 改造ライフルがあるじゃねーか! それでハチの巣にしてやれ!」
「そうか、俺たちにはこいつがあるんだった! これを喰らえ!」
部下たちは改造ライフルをセアンたちに向けて発砲しようとした。だが、その前にライアが風を発して改造ライフルを破壊した。
「ああっ! せっかく買った改造ライフルが!」
「チクショウ! 買って間もないのに!」
「この野郎! 直接叩け!」
部下たちは剣やカトラス、ハンマーなどの武器を持ってセアンたちに襲い掛かった。だが、上から分厚い氷が降って来て部下を押しつぶした。
「ギャアッ! こ……氷が……」
「痛い……誰だ、こんなことをする奴は……」
「お……重い。けど、ひんやりして気持ちいい」
部下たちが声を上げる中、カイトが氷の上に着地した。その後、周りを見てセアンたちにこう言った。
「皆、中に強い奴がいるぞ。気を付けてくれ」
「うん」
セアンはカイトの言葉に返事をし、武器を構えた。
ツリーは今回のようにシーポリスの戦士だけど、トラブルメーカーと言う位置づけでキャラを作りました。見た目は子供みたいですが、それなりに強いです。一応、シーポリスの戦士だからね。
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