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シーポリスに入った理由


 メリスの父親は、地元のシーポリスの中では上の立場の人間だった。権力に甘えず、自分に厳しく、他人にも厳しいが少し甘い所があるそんな人間である。そんな父を、メリスは誇りに思っていた。そして、いつしか自分も父のような人間になりたいと考えた。


 そんなある日、メリスは自宅であるニュースを見ていた。


「酷い……こんなことをする海賊がいるなんて……」


 ニュースで映されている映像は、ブラッディークローに襲われたサビナの映像だった。隣にいた父は、メリスにこう言った。


「お父さんはね、ああいう奴らを相手に戦っている。世の中には、殺人や略奪などの汚いことを平気で行う海賊がいる。お父さんは、ああいう奴は許さない」


 そう語る父の拳は、震えていた。その拳を見て、父はブラッディークローに対して激しい怒りを感じているとメリスは思い、自身もブラッディークローや悪名高い海賊に対し、怒りを覚えていた。




「私は父のような立派な人間、シーポリスになりたい。父のように、活躍したいの」


 メリスの話を聞き終えたセアンは、シャワーを止めた。いきなりシャワーの音が止まったため、メリスは驚いた。


「もうシャワーを浴び終えたの?」


「私も海賊になった理由があるの。話を聞いて」


 と言って、セアンは話を始めた。


「私の故郷が悪い海賊に襲われたの。そのせいで、お父さんとお母さんが殺された。住んでいた地域も崩壊した。今は創造の力で何とかなったけど、経済的にはまだ復旧してないの」


 セアンたちの故郷が襲われたことを知り、メリスは言葉を失った。しばらく間を開け、セアンは話を続けた。


「私たち姉妹の故郷はサビナ。そして、サビナを襲ったのはブラッディークロー」


「ま……まさかあの事件の……」


「そう。私たちはあの事件の生き残り。あの騒動の後、私たちは島にやって来たサマリオに救われ、その後で私たちはサマリオに鍛えてもらった」


「そう……なのね……」


 メリスはセアンの話を聞き、茫然とした。しばらく茫然としていたメリスだったが、我に戻ってこう聞いた。


「どうしてシーポリスに入らなかったの?」


「シーポリスに入るより、海賊になって暴れた方が、情報が入りやすいって思ったの。それと、賞金首の海賊を狩りやすいし、自由に宝探しができて、サビナに送金できるから」


「海賊になったのは、ブラッディークローへの復讐と、サビナの復興……だったのね」


 メリスのブラッディークローへの復讐と言う言葉を聞き、セアンは笑いながらこう言った。


「復讐だなんて。まぁ、復讐したいって気持ちもあるけど、大部分がブラッディークローによる被害者を減らすために、奴らを倒したいの。私たち以外にも、ゴイチ王国も奴らの仲間に襲われたし」


「そう……」


 メリスが返事をした後、セアンはくしゃみをした。


「ちょっと寒くなっちゃった。ねぇ、一緒にシャワーを浴びる?」


「大丈夫です」


 と、メリスは顔を少し赤くしてこう答えた。




 シャワーを浴び終えたカイトたちがキッチンへ向かうと、中はすでに兵士たちで賑わっていた。


「あ、シャワーを浴び終えたの?」


 近くにいたケアノスがカイトたちに近寄った。左手で、タコ焼きが盛られた皿を掴んでいた。


「やっぱりタコ焼きか、俺の予想通りだ。誰が配ってるの?」


「ライアがキッチンの人と一緒に配ってるわ」


「サンキュ。よし、行くか二人とも」


 カイトはセアンとメリスと共に、ライアの元へ向かった。タコ焼きを焼いているライアはすごい速さで手を動かし、タコ焼きを焼いていた。その動きを見て、キッチンを担当しているシーポリスは目を丸くして驚いていた。


「す……すごい速さだ」


「サマリオさんがライアさんの料理の腕はすごいと言っていたが……まさか、ここまでとは」


「喋ってないでタコ焼きを配ってー」


 ライアにこう言われた後、キッチン担当のシーポリスは返事をして皿にタコ焼きを盛り始めた。その後、カイトたちがやって来た。


「大変だね、ライア」


「シャワー浴び終えたのね。はい。タコ焼き」


 と言って、ライアはカイトたちにタコ焼きを渡した。カイトたちはライアの近くでタコ焼きを食べ始めた。


「結構な人数のシーポリスがいるから、タコ焼きを焼くの大変でしょ?」


「そうでもないよ。慣れれば秒で作れるって。あ、そろそろ生地がなくなる。急いで作って!」


「はっ!」


 ライアの声を聞いたシーポリスは、急いでライアが作った生地の作り方を見て、生地を作り始めた。その時、コスタとラージュがやって来た。


「久しぶりに賑やかな晩御飯ね」


「まるでパーティーみたい。あ、これタコパか」


 と言って、コスタはタコ焼きを一口で食べた。ラージュはメリスの方を見て、ニコッと笑った。


「何だか、この空気に慣れないみたいね」


「ええ……いつもは早めに食べて、剣の訓練や本を読んで勉強をしているので……時間を取って食事をするのはあまりしないのです」


「どれどれ」


 ラージュはメリスの腹を触り、さすり始めた。いきなり腹を触られたので、メリスは驚いたが、ラージュは手を放してこう言った。


「もう少しご飯を食べたほうがいいわよ。エネルギーの元だから、ちゃんと食べないと倒れるわよ」


「え? お腹を触っただけで分かるのですか?」


「ええ。医学には詳しいのよ。もちろん、ダイエット方法もいろいろと学んでいるわ」


 この言葉を聞いたシーポリスの女性隊員が、一斉にラージュに接近した。


「その方法を教えてください!」


「最近、ダイエットを始めたんですが、なかなか体重が落ちません!」


「食事制限しないで楽にできるダイエットはありますか?」


 などと、ラージュに聞いて来た。ラージュはあららと言って笑いだし、カイトたちにこう言った。


「ちょっとダイエットに関しての話をしてくるわ。また後で」


 去っていくラージュを見て、セアンはタコ焼きを食べてこう呟いた。


「ラージュも大変だなー」


 それから、賑やかな中でのタコパは続いた。少し戸惑っていたメリスも、次第に場の雰囲気に慣れてきた。


 数時間後、セクハラオクトパスの足を二つ分使ったところでタコパは終わった。


「うへー。もう生地の材料がないよ」


 ライアはタコ焼きの生地がないことを知り、茫然とした。周りでは、タコ焼きを食べすぎたシーポリスの隊員が苦しそうながらも、満足した表情で座っていた。


「ま、皆が満足したならそれでいいか」


 そう呟いた後、ライアは背伸びをして周囲を見回した。


「さーてと、シャワー浴びるかー」


 と言って、ライアはキッチンから去った。そんな中、サマリオがライアの姿を見て近付いた。


「お疲れライア。タコ焼き、おいしかったよ」


「あざーっす。そうだ、シャワールームってある?」


「あるけど、小さいけど風呂場もあるぞ」


「そっちの方がいいな。どこにあるか教えてー」


 その後、サマリオから風呂場の場所を聞き、ライアは風呂場へ向かった。風呂場の前には、風呂に入ろうとしているセアンたちとメリスがいた。


「おっ。メリスもいるのね」


「シャワーを浴びている時に、昔のことでいろいろと話をしてたの」


「驚いたわ。まさか、メリスがサビナの事件を見て、シーポリスを志しただなんて」


 ケアノスの言葉を聞き、ライアは驚きの声を発した。


「本当に? それじゃあ、いろいろと話すよ。一緒にお風呂に入ろー」


「今誘っている途中なの。本当はカイトも連れて来ようとしたけど」


「皆さんとお風呂に入るのは賛成ですが、異性と一緒なのは反対ですっ!」


 と、メリスは大声でこう言った。そんなメリスに、セアンはこう言った。


「本当はカイトの裸に興味津々なんでしょ~?」


「ありません」


 茶化すように言葉を発したセアンに対し、メリスは呆れてこう言った。


 久しぶりにサビナの話が出ました。ピラータ姉妹の両親や、メリスの父親の名前ですが、考えていません。この先出るかどうか分からないので、名前を考えるのが面倒だからです。設定しろって言われたら考えると思うけどね。


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